上 下
8 / 100
1章 異色のメンバー

茜にはそう呼ばれるのがしっくり来るわ

しおりを挟む

 七海と二人で茜を待ってると、しばらくしてから慌てた様子の茜がやって来た。
 ブルーのワイシャツに、白のセーター。何の変哲のない普通のジーンズにスニーカー。何が入ってるのか大きめのショルダーバッグを肩に掛けてやって来た。うん。茜だ。


「待たせて悪かったな」

「いや、思ったよりも早かったじゃん」

「そう言ってもらえると嬉しいな」


 走って来たのか、息を整えてる茜。
 茜はいつでもどんな時でも真面目だよな~。
 俺なんか遅れて来る事なんてしょっちゅうだ。


「二之宮、今日も凄いな……」

「えっ!変、かな!?」

「いや、似合ってるよ。可愛い」

「かわっ!?ふん、当たり前だろっ!二之宮に言われなくても分かってるんだからっ」


 ん?七海どうした?
 さっきまでぶりぶりぶりっ子だった癖に、急にツンツンし始めたな。
 茜は気にしてないみたいだけど。


「二人は何をしていたんだ?俺が来て良かったのか?」

「飯食ってブラブラしてただけ。むしろ茜来なきゃ始まらねぇって感じ?」

「俺が?何で俺なんだ?」

「とりあえずどっか座って話そうぜ~。お前に聞きたい事たくさんあるからよ~」

「ああ。俺も秋山に話したい事があるんだ」


 ここで少し落ち込んだように下を向く茜。
 ありゃ、良い話じゃなさそうじゃん。
 犬飼とは上手くいかなかったか~。

 俺達は駅前のカフェで話す事にした。
 それにしても七海の奴、急に大人しくなりやがったな。茜がいるから緊張してるのか?
 恥ずかしそうに俺の後ろを付いて来ていた。


「お前どうした?さっきまで堂々と歩いてたじゃん」

「どうもしないよ!貴哉が服選ぶの嫌がったからじゃん!?」

「あ?んな事気にしてんのかよっ!てか俺は男だ!女装は趣味じゃねぇ!」

「……お前ら仲良くなったんだな」

「仲良くってか普通じゃね?相変わらずこいつの甲高い声は嫌いだぜ」

「だって、小平が貴哉って名前で呼んでるから」


 茜はニッコリ笑って言った。
 そう言う事か。ずっと秋山って呼んでたのにおかしいもんな。確かに名前呼びは仲良い感じするよな。


「茜も呼んでいいんだぞー♪」

「いや、もう秋山は秋山だよ」

「はは、確かに!茜にはそう呼ばれるのがしっくり来るわ」


 俺と茜がいつものように話してると、七海は自分が頼んだなんたらかんたらラテって言う生クリームがたっぷり乗った飲み物を写メってた。
 こいつ、ここでもか……


「お前、何でも写メるのな。それも趣味?」

「趣味ってか普通じゃない?可愛いものとか撮りたくなるでしょ♪」

「なるか?」

「いや、ならないだろ」

「うるさいな!それよりも二之宮の話って何!?」


 男二人に否定されて少し機嫌を悪くする七海。
 話を振られた茜はまた表情を曇らせていた。


「犬飼と何かあったのか?」

「犬飼ぃ?もしかして襲われた!?」

「犬飼と言えば犬飼なんだが……」


 茜は言いにくそうにチラッと七海を見た。
 あー、他の奴には話したくねぇのか。
 それなら話誤魔化すか。


「言いにくいなら無理に話す事ねぇよ。言える時になったら話してくれ」

「えっ!俺気になる!犬飼と何があったの!?」

「黙れよ七海。今日はお前と茜が過ごす日だろ。犬飼の話なんかどうでもいいじゃねぇか」

「どうでも良くないだろっ!犬飼が何かしたなら大問題だ!てか桃山に殺されるよあいつ」


 ここで桃山の名前が出て茜がピクッと反応した。
 え、もしかして桃山とも何かあったのか?


「茜?大丈夫か?」

「平気だ。すまないな。昨日あまり眠れてなくて」

「そうなの?二之宮、体調良くないのか?」

「体調は大丈夫だ。少し寝不足なだけだ」


 ニコッと笑う茜にうっとりする七海。
 茜が寝不足とか俺じゃねぇんだからよっぽどの事だろ。
 話は気になるけど、七海がいたら聞き出せねぇしなぁ。
 
 俺が悩んでると、スマホからメッセージを受信した音がした。確認すると、空からだった。空からはこうやってちょくちょく連絡は来てた。俺は返したり返さなかったり。内容は大した事なかった。


「そう言えば秋山は今日は桐原とは一緒じゃないのか?」

「ん。あいつも来る筈だったけど、連絡無し」

「いーくん!そう言えば別れたとか言ってなかった!?」

「は?そうなのか?」


 七海が思い出したかのように言うと、茜も驚いていた。
 よし、上手く話逸らせたな!
 このまま俺の話にしてしまおう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...