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1章 異色のメンバー
茜にはそう呼ばれるのがしっくり来るわ
しおりを挟む七海と二人で茜を待ってると、しばらくしてから慌てた様子の茜がやって来た。
ブルーのワイシャツに、白のセーター。何の変哲のない普通のジーンズにスニーカー。何が入ってるのか大きめのショルダーバッグを肩に掛けてやって来た。うん。茜だ。
「待たせて悪かったな」
「いや、思ったよりも早かったじゃん」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
走って来たのか、息を整えてる茜。
茜はいつでもどんな時でも真面目だよな~。
俺なんか遅れて来る事なんてしょっちゅうだ。
「二之宮、今日も凄いな……」
「えっ!変、かな!?」
「いや、似合ってるよ。可愛い」
「かわっ!?ふん、当たり前だろっ!二之宮に言われなくても分かってるんだからっ」
ん?七海どうした?
さっきまでぶりぶりぶりっ子だった癖に、急にツンツンし始めたな。
茜は気にしてないみたいだけど。
「二人は何をしていたんだ?俺が来て良かったのか?」
「飯食ってブラブラしてただけ。むしろ茜来なきゃ始まらねぇって感じ?」
「俺が?何で俺なんだ?」
「とりあえずどっか座って話そうぜ~。お前に聞きたい事たくさんあるからよ~」
「ああ。俺も秋山に話したい事があるんだ」
ここで少し落ち込んだように下を向く茜。
ありゃ、良い話じゃなさそうじゃん。
犬飼とは上手くいかなかったか~。
俺達は駅前のカフェで話す事にした。
それにしても七海の奴、急に大人しくなりやがったな。茜がいるから緊張してるのか?
恥ずかしそうに俺の後ろを付いて来ていた。
「お前どうした?さっきまで堂々と歩いてたじゃん」
「どうもしないよ!貴哉が服選ぶの嫌がったからじゃん!?」
「あ?んな事気にしてんのかよっ!てか俺は男だ!女装は趣味じゃねぇ!」
「……お前ら仲良くなったんだな」
「仲良くってか普通じゃね?相変わらずこいつの甲高い声は嫌いだぜ」
「だって、小平が貴哉って名前で呼んでるから」
茜はニッコリ笑って言った。
そう言う事か。ずっと秋山って呼んでたのにおかしいもんな。確かに名前呼びは仲良い感じするよな。
「茜も呼んでいいんだぞー♪」
「いや、もう秋山は秋山だよ」
「はは、確かに!茜にはそう呼ばれるのがしっくり来るわ」
俺と茜がいつものように話してると、七海は自分が頼んだなんたらかんたらラテって言う生クリームがたっぷり乗った飲み物を写メってた。
こいつ、ここでもか……
「お前、何でも写メるのな。それも趣味?」
「趣味ってか普通じゃない?可愛いものとか撮りたくなるでしょ♪」
「なるか?」
「いや、ならないだろ」
「うるさいな!それよりも二之宮の話って何!?」
男二人に否定されて少し機嫌を悪くする七海。
話を振られた茜はまた表情を曇らせていた。
「犬飼と何かあったのか?」
「犬飼ぃ?もしかして襲われた!?」
「犬飼と言えば犬飼なんだが……」
茜は言いにくそうにチラッと七海を見た。
あー、他の奴には話したくねぇのか。
それなら話誤魔化すか。
「言いにくいなら無理に話す事ねぇよ。言える時になったら話してくれ」
「えっ!俺気になる!犬飼と何があったの!?」
「黙れよ七海。今日はお前と茜が過ごす日だろ。犬飼の話なんかどうでもいいじゃねぇか」
「どうでも良くないだろっ!犬飼が何かしたなら大問題だ!てか桃山に殺されるよあいつ」
ここで桃山の名前が出て茜がピクッと反応した。
え、もしかして桃山とも何かあったのか?
「茜?大丈夫か?」
「平気だ。すまないな。昨日あまり眠れてなくて」
「そうなの?二之宮、体調良くないのか?」
「体調は大丈夫だ。少し寝不足なだけだ」
ニコッと笑う茜にうっとりする七海。
茜が寝不足とか俺じゃねぇんだからよっぽどの事だろ。
話は気になるけど、七海がいたら聞き出せねぇしなぁ。
俺が悩んでると、スマホからメッセージを受信した音がした。確認すると、空からだった。空からはこうやってちょくちょく連絡は来てた。俺は返したり返さなかったり。内容は大した事なかった。
「そう言えば秋山は今日は桐原とは一緒じゃないのか?」
「ん。あいつも来る筈だったけど、連絡無し」
「いーくん!そう言えば別れたとか言ってなかった!?」
「は?そうなのか?」
七海が思い出したかのように言うと、茜も驚いていた。
よし、上手く話逸らせたな!
このまま俺の話にしてしまおう。
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