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一章
42.地上進出決定
しおりを挟む会食が始まってライアンの話が始まった。
気さくなライアンは食べなら聞いて構わないと言った。それを間に受けるのはレオとゼロとスズ。そして俺も。腹が減ってはと言うし、俺はお構いなしに目の前のご馳走に手を付けていた。
「Liveの皆、今日は一緒に食事が出来るという事でとても楽しみにしていたよ。早速だけど、まずは新入りくん!挨拶がしたいんだ。すまないが立ってもらえるかな?」
「スズー、ちょっと食べるのやめて起立ー」
「え?僕ぅ?」
指名されたスズは一生懸命に分厚いステーキにかぶりついていた。おー、恒例のやつかー。
ここに新しい超人が来ると何かしらの形でライアンが訪れて新人に対して挨拶をするんだ。最後にしてたのは半年前のゼロの時だ。
スズが口元を服の裾で拭きながらその場に立つと、ライアンも立ち上がり、ニッコリ笑った。
「やあ、俺はこのグレビリア国の代表を務めさせて貰ってるライアン・アンダーソンだ。みんなも呼ぶからライアンって呼んでくれ♪名前と能力を教えてくれるか?」
「ライアンね~♪ちょー有名人だから名前なら知ってたよ。僕はスズ。能力は怪力!筋肉を操ってどんなに重い物でも持てるし、硬い物でも壊せるよーん♪」
スズのライアンへの接し方に俺の隣にいた蒼司から舌打ちが聞こえたが、聞こえなかった事にしておこう。
「ほう!それは凄い能力だな~。アキト、これは凄い戦力になりそうだな」
「そうなんだよねー♪スズには最前線で活躍してもらいたいと思ってるよ」
「スズ!これからの活躍、期待してるぞ!では座って食事を続けてくれ」
「はーい♪」
挨拶を終えたスズは再びステーキにかぶりついていた。ただ今までの挨拶と違う所はスズはまだアキトに強化してもらっていないと言う点だ。
つまりスズは正式な仲間ではない。それはライアンは知ってるのか?もちろん元奴らの仲間だった事は知ってるだろうけど。
「では次の話題へ行こう。明日から旅行があるのはみんなも知ってるな?いいよな~!社員旅行!そこでだ!俺も参加させてもらう事になった!」
「!?」
「はぁ!?」
「嘘……」
蒼司は珍しく驚いた顔をして、俺はさも嫌そうな声が出てしまう。少し離れた席でルカもビックリして呟いていた。
突然のライアンの報告に、それぞれが驚きの声を上げた。こりゃまた面倒な事になりそうだな……
「みんな悪いね!旅行に行くって話したら俺も連れて行けってうるさくてね!でも旅費とか交通手段とか全部持ってくれるみたいだから、この際とびきり豪勢な旅行にしちゃおうと思っているよ♪だから許しておくれ~♡」
赤ワインを飲みながらアキトが言った。
ライアンも一緒とか、嫌な予感しかしない。
だってライアンはグレビリア国のトップだ。そんな人間と行動を共にするなんて、護衛の任務をしているようでとても旅行なんて気分にはなれないだろうな。ただでさえ目立つ見た目してるのに。
「アキトってば俺にも昨日言うんだもんな~。ビックリして昨日は眠れなかったよ」
「だってー!ずっと断っていたんだけど、どうしても行きたいって毎日のように電話してくるのだよ?私も昨日の朝折れたのだよ」
野々山がぶつぶつ言うと、アキトはプウっと膨れて答えた。ライアンは「あはは」と笑っていた。
みんなからこんな言われ方をしても、気にしないで社員旅行について来ようとするこの男の図太さはレオといい勝負だろう。
「安心してくれ!俺直属の英雄団も何名か連れて行くから、君達に迷惑は掛けないようにするさ!だから気にせず旅行を楽しむんだ!」
「まぁライアンは悪い人間じゃないから、みんないないものと思って楽しもうじゃないか♪」
「いや、それはちと寂しいな!」
場も和んだ所で他のみんなも話を聞きながら食事に手を付け始めた。
そしてメイン、デザートと続いて最後に各々好きな飲み物を貰って残りの時間を楽しんでいた。てかそろそろ部屋に帰りたい。明日の旅行の荷物の確認をしたいんだ。
そしてアキトが思い出したかのように喋り始めた。
「おっといけない!まだ大事な発表があるんだった!」
「ああ、あれか。それなら俺から話そう」
何の事だかライアンは察したようで、持っていたティーカップを置いて話始めた。
「明日から一週間の旅行が始まる。そして、それが終わった後、この研究所Liveは俺の傘下の元、地上へ進出する事が決まった!前から準備はしていたから施設や寮などは準備は出来てるぞ♪」
これには会場中が騒めいた。
そしてライアンは俺を見てウインクしていた。
あ、アキトが前に言っていた話だ。とうとう決まったんだ。
パッと隣にいるアキトを見ると、困ったように笑っていた。
「言うのが遅くなってごめんよ。私自身、本当にいいのか迷っている部分もあってね。でもやってみなければ分からない事もあるし、ウルが喜ぶならって思ってね」
「アキト……ありがとう!」
「ウルー♡もー可愛い過ぎるんだよ♡」
俺は嬉しくて素直にお礼を言った。
とうとう地上で暮らせるんだ。夢見たいな話だ。
嬉しくて後ろを振り向きアースを見ると、指でピースして笑ってくれた。
「それとー、これはまだアキトには許可貰ってないんだが、俺はLiveのみんなに俺直属の精鋭部隊になってもらいたいと思っているんだ」
「せいえーぶたい?なんだよそれ?」
既にこの場に飽きていたレオがテーブルに項垂れながら聞いていた。俺も気になった。言葉の意味自体なら分かるけど、ライアン直属のならさっきも話に出て来た英雄団がいるだろ。
俺達が精鋭部隊ってどういう事だ?
「難しい事は無いさ!やる事も今までと変わらないからな。今まで通り任務や訓練をしてもらう。ただ形態が変わるんだ。今はこの地下を基盤として秘密裏に活動しているだろ?それが地上へ出て堂々と働いてもらう事になるだけだ」
「あの、ライアン代表。一つお聞きしたいのですが」
「蒼司、何でも聞いてくれ」
「似たような部隊なら英雄団が既に存在します。彼らとはどのように違うのですか?」
「いい質問だ。英雄団はあくまでも一般の人間達を集めて作った団体だ。街の治安を維持する為に活動している。君達精鋭部隊にはもっとハードで彼らには出来ない事を頼みたいと思っているんだ」
「そうですか。お答え頂きありがとうございました」
「言っておくけど、ライアンも言うようにこの件に関しては私は承諾してないよ。むしろ反対している。だから地上には進出はするけれど、精鋭部隊になる話はまた別だと思っておくれ」
最後にアキトが少し強張った口調で言った。
これにはライアンは苦笑いをして、ティーカップに入った紅茶を飲み干していた。
精鋭部隊か。俺達がってなるとピンと来ないけど、聞こえは良いよな。本とかで読んだ事があるけど、凄いエリート達でいい事をする集団だろ?
まぁアキトは良く思ってないみてぇだから実現しなそうだけどな。
そして会食は終わり、俺はアースを連れて大広間を出ようとした時、アキトに呼び止められた。
「ウル、今日は私達の部屋で過ごそう。もう少ししたら戻るから先に帰っていておくれ」
「分かった。飲み過ぎるなよー」
きっとこの後もライアンや野々山達と酒を飲み続ける気だな。アキトはワインが好きで部屋でも良く飲んでいる。酒には強い方だけど、酔うといつも以上に親バカになるし、面倒くさいから程々にして欲しい。
俺が言った所で聞かないんだろうけどな。
俺はそのまま部屋に帰った。
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