カラフルパレード

pino

文字の大きさ
上 下
42 / 44
一章

42.地上進出決定

しおりを挟む

 会食が始まってライアンの話が始まった。
 気さくなライアンは食べなら聞いて構わないと言った。それを間に受けるのはレオとゼロとスズ。そして俺も。腹が減ってはと言うし、俺はお構いなしに目の前のご馳走に手を付けていた。
 

「Liveの皆、今日は一緒に食事が出来るという事でとても楽しみにしていたよ。早速だけど、まずは新入りくん!挨拶がしたいんだ。すまないが立ってもらえるかな?」

「スズー、ちょっと食べるのやめて起立ー」

「え?僕ぅ?」


 指名されたスズは一生懸命に分厚いステーキにかぶりついていた。おー、恒例のやつかー。
 ここに新しい超人が来ると何かしらの形でライアンが訪れて新人に対して挨拶をするんだ。最後にしてたのは半年前のゼロの時だ。

 スズが口元を服の裾で拭きながらその場に立つと、ライアンも立ち上がり、ニッコリ笑った。


「やあ、俺はこのグレビリア国の代表を務めさせて貰ってるライアン・アンダーソンだ。みんなも呼ぶからライアンって呼んでくれ♪名前と能力を教えてくれるか?」

「ライアンね~♪ちょー有名人だから名前なら知ってたよ。僕はスズ。能力は怪力!筋肉を操ってどんなに重い物でも持てるし、硬い物でも壊せるよーん♪」


 スズのライアンへの接し方に俺の隣にいた蒼司から舌打ちが聞こえたが、聞こえなかった事にしておこう。


「ほう!それは凄い能力だな~。アキト、これは凄い戦力になりそうだな」

「そうなんだよねー♪スズには最前線で活躍してもらいたいと思ってるよ」

「スズ!これからの活躍、期待してるぞ!では座って食事を続けてくれ」

「はーい♪」


 挨拶を終えたスズは再びステーキにかぶりついていた。ただ今までの挨拶と違う所はスズはまだアキトに強化してもらっていないと言う点だ。
 つまりスズは正式な仲間ではない。それはライアンは知ってるのか?もちろん元奴らの仲間だった事は知ってるだろうけど。


「では次の話題へ行こう。明日から旅行があるのはみんなも知ってるな?いいよな~!社員旅行!そこでだ!俺も参加させてもらう事になった!」

「!?」

「はぁ!?」

「嘘……」


 蒼司は珍しく驚いた顔をして、俺はさも嫌そうな声が出てしまう。少し離れた席でルカもビックリして呟いていた。
 突然のライアンの報告に、それぞれが驚きの声を上げた。こりゃまた面倒な事になりそうだな……


「みんな悪いね!旅行に行くって話したら俺も連れて行けってうるさくてね!でも旅費とか交通手段とか全部持ってくれるみたいだから、この際とびきり豪勢な旅行にしちゃおうと思っているよ♪だから許しておくれ~♡」


 赤ワインを飲みながらアキトが言った。
 ライアンも一緒とか、嫌な予感しかしない。
 だってライアンはグレビリア国のトップだ。そんな人間と行動を共にするなんて、護衛の任務をしているようでとても旅行なんて気分にはなれないだろうな。ただでさえ目立つ見た目してるのに。


「アキトってば俺にも昨日言うんだもんな~。ビックリして昨日は眠れなかったよ」

「だってー!ずっと断っていたんだけど、どうしても行きたいって毎日のように電話してくるのだよ?私も昨日の朝折れたのだよ」


 野々山がぶつぶつ言うと、アキトはプウっと膨れて答えた。ライアンは「あはは」と笑っていた。
 みんなからこんな言われ方をしても、気にしないで社員旅行について来ようとするこの男の図太さはレオといい勝負だろう。


「安心してくれ!俺直属の英雄団も何名か連れて行くから、君達に迷惑は掛けないようにするさ!だから気にせず旅行を楽しむんだ!」

「まぁライアンは悪い人間じゃないから、みんないないものと思って楽しもうじゃないか♪」

「いや、それはちと寂しいな!」


 場も和んだ所で他のみんなも話を聞きながら食事に手を付け始めた。
 そしてメイン、デザートと続いて最後に各々好きな飲み物を貰って残りの時間を楽しんでいた。てかそろそろ部屋に帰りたい。明日の旅行の荷物の確認をしたいんだ。

 そしてアキトが思い出したかのように喋り始めた。


「おっといけない!まだ大事な発表があるんだった!」

「ああ、あれか。それなら俺から話そう」


 何の事だかライアンは察したようで、持っていたティーカップを置いて話始めた。


「明日から一週間の旅行が始まる。そして、それが終わった後、この研究所Liveは俺の傘下の元、地上へ進出する事が決まった!前から準備はしていたから施設や寮などは準備は出来てるぞ♪」


 これには会場中が騒めいた。
 そしてライアンは俺を見てウインクしていた。
 あ、アキトが前に言っていた話だ。とうとう決まったんだ。
 パッと隣にいるアキトを見ると、困ったように笑っていた。


「言うのが遅くなってごめんよ。私自身、本当にいいのか迷っている部分もあってね。でもやってみなければ分からない事もあるし、ウルが喜ぶならって思ってね」

「アキト……ありがとう!」

「ウルー♡もー可愛い過ぎるんだよ♡」


 俺は嬉しくて素直にお礼を言った。
 とうとう地上で暮らせるんだ。夢見たいな話だ。
 嬉しくて後ろを振り向きアースを見ると、指でピースして笑ってくれた。


「それとー、これはまだアキトには許可貰ってないんだが、俺はLiveのみんなに俺直属の精鋭部隊になってもらいたいと思っているんだ」

「せいえーぶたい?なんだよそれ?」


 既にこの場に飽きていたレオがテーブルに項垂れながら聞いていた。俺も気になった。言葉の意味自体なら分かるけど、ライアン直属のならさっきも話に出て来た英雄団がいるだろ。
 俺達が精鋭部隊ってどういう事だ?


「難しい事は無いさ!やる事も今までと変わらないからな。今まで通り任務や訓練をしてもらう。ただ形態が変わるんだ。今はこの地下を基盤として秘密裏に活動しているだろ?それが地上へ出て堂々と働いてもらう事になるだけだ」

「あの、ライアン代表。一つお聞きしたいのですが」

「蒼司、何でも聞いてくれ」

「似たような部隊なら英雄団が既に存在します。彼らとはどのように違うのですか?」

「いい質問だ。英雄団はあくまでも一般の人間達を集めて作った団体だ。街の治安を維持する為に活動している。君達精鋭部隊にはもっとハードで彼らには出来ない事を頼みたいと思っているんだ」

「そうですか。お答え頂きありがとうございました」

「言っておくけど、ライアンも言うようにこの件に関しては私は承諾してないよ。むしろ反対している。だから地上には進出はするけれど、精鋭部隊になる話はまた別だと思っておくれ」


 最後にアキトが少し強張った口調で言った。
 これにはライアンは苦笑いをして、ティーカップに入った紅茶を飲み干していた。

 精鋭部隊か。俺達がってなるとピンと来ないけど、聞こえは良いよな。本とかで読んだ事があるけど、凄いエリート達でいい事をする集団だろ?
 まぁアキトは良く思ってないみてぇだから実現しなそうだけどな。

 そして会食は終わり、俺はアースを連れて大広間を出ようとした時、アキトに呼び止められた。


「ウル、今日は私達の部屋で過ごそう。もう少ししたら戻るから先に帰っていておくれ」

「分かった。飲み過ぎるなよー」


 きっとこの後もライアンや野々山達と酒を飲み続ける気だな。アキトはワインが好きで部屋でも良く飲んでいる。酒には強い方だけど、酔うといつも以上に親バカになるし、面倒くさいから程々にして欲しい。

 俺が言った所で聞かないんだろうけどな。
 俺はそのまま部屋に帰った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【SF短編】エリオの方舟

ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~

こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。 人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。 それに対抗する術は、今は無い。 平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。 しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。 さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。 普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。 そして、やがて一つの真実に辿り着く。 それは大きな選択を迫られるものだった。 bio defence ※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

処理中です...