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一章
41.問題児の二人
しおりを挟む大きな音にみんな大広間の入り口付近に注目した。案の定、馬鹿な会話が聞こえて来て席に着く者達はやれやれと言った顔をしている。
レオとゼロが来たんだ。
また二人で言い争いながら。
二人の後から遅れて入って来たウィルと凪は泣きそうな顔をしながら二人の前に立って、大広間にいる俺達に向かってペコペコと頭を下げていた。
「お、遅くなり、大変申し訳ありませんでしたぁ!!ゼロ、並びに凪!ただいま到着致しましたぁ!」
「レオとウィリアムも遅刻してしまい申し訳ありません……」
凪とウィルがそれぞれ謝罪をしていた。二人が悪くない事はここにいるみんなが分かっている。
二人はゼロとレオに付き従う従者だ。アース同様、必ず決められた時間には到着出来るように主人を誘導する筈だ。
二人の場合、問題は主人の方だ。謝罪している従者を他所にまだ言い合ってる二人にはみんな呆れていた。
すると入口付近にいたフューボットがゼロの前に立ち、行く手を塞いでいた。
「あ?んだよ?」
「お持ちの刃物を預かります」
「……チッ」
一応黒のスーツを着ているが、ワイシャツの胸元はガッツリ空いていて、ネクタイもだらし無く結んでいるゼロは行手を阻むフューボットを睨んでから渋々隠し持っていたナイフを数本出した。
ライアンがいる席では刃物や凶器になり得る物は持ち込めないようになっている。勿論俺達が入って来た時もフューボットによってチェックされただろう。蒼司もいつも持ってる刀は預けたと思う。
「あいよ。これで全部だ」
「いいえ。足に隠しているナイフもお願いします」
「コラー!ゼロー!さっさと全部出しなさい!」
痺れを切らしたアキトが怒って言うと、ゼロはベーッとベロを出して残りのナイフもフューボットに預けた。
そんなやり取りを見てたら、今度は金髪オールバックのデカいのが騒ぎ始めた。レオだ。
レオは白いワイシャツを着ているが、ジャケットは無かった。ワイシャツのボタンも真ん中ぐらいまで外れていて、ネクタイなんて締めていなかった。一年中薄着のレオでも、大事な客がいる席でこれは無いなと俺でも思うような格好をしていた。
「なぁなんでいつも蒼司がウルの隣なんだよー?たまには俺が座りたい!」
「黙れ馬鹿猫。大人しく自分の席に座れ」
蒼司はレオを見る事なく冷たく言い放つ。俺もいい加減大人しく座って欲しかった。
だけどあのレオだ。ムッとした顔をして隣にいる蒼司に言い返した。
「お前はどうしていつも悪口ばっか言うんだ!たまには譲ってくれてもいいだろって言ってんの!」
「レオ、その辺にしておけ。もう決まった事なんだから」
「ウル……やだ!俺もウルの隣がいい!」
「レオ、頼みますから大人しくして下さい。ほら、ライアン代表が見てますよ」
後ろにいたウィルがレオにスーツの上着を着せようとしながらそう言った。レオの視線がライアンの方を向く。
そしてパァッと笑顔になった。
「おおー!ライアン!久しぶりだなぁ!今日は何かお土産ねぇのっぐ!!」
「貴様ッ!誰に向かって口を聞いているんだ!切り刻むぞ!!」
「ちょ、蒼司、落ち着いて……刀持ってないだろ今
ライアンに手を振って馴れ馴れしく話し掛けるレオの頭を殴って黙らせて、腰に手を当てて抜刀する素振りを見せてた。
気持ちは分かるけど、このままでは会食も始まらない。
そしてアキトが二人に笑顔で言った。
「レオにゼロ。君達は明日からの旅行に行きたくないみたいだね。それならそれでいいんだよ。二人にはこの研究所に残って全エリアの掃除をお願いしよう。隅から隅までね。やり残しがあった場合は終わるまでやってもらうからね」
これには二人も黙った。旅行に行けない事ではなく、研究所の掃除にゾッとしたんだろう。俺だって全てのエリアに行った事がないんだ。終わるまで何年掛かるか分からないぐらいに広いぞここは。
そしてやっと静かになった所で改めてアキトが乾杯の音頭を取り、予定の時間を30分も過ぎてから会食が始まった。
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