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一章
37.俺様は黒豆
しおりを挟む旅行の前日。とうとう明日、地上に行くんだ。
そして今日は俺達超人達の事前身体検査と、人造人間達のメンテナンスをやる予定になっていた。そしてその後、珍しくみんなで集まって夕飯を食うらしい。アキトの指示だからみんな来るだろうけど、こういうのをやるのは稀だ。
俺とアースの番は午後からだから、医務室の近くの休憩室でスズと共に時間を潰していた。
「黒豆~♡見てよ僕の左手大分良くなったから~♡」
「うむ。それもこれもゼロ殿のお陰にゃ」
目の前でそんな会話をするスズと黒猫の人造猫をアースと一緒に見ていた。
「そうなんだよな~!あの後ゼロがアキトの目を盗んで特訓だとか言って僕の左手を少しずつ治癒してくれてたんだよ~。僕からしたらありがたい事だけど、ゼロは何度も気絶してたよー」
「スズの左手が治れば俺様は何でもいいにゃー」
二人は楽しそうに話し続けてるけど、そろそろ突っ込んでもいいよな?
アースを見ると頷いていた。
「スズ!ちょっと聞いてもいいか!?」
「どうしたのウル、珍しく大きな声出して~」
スズはキョトンとした顔をして俺を見た。
そしてスズの付き猫も俺を見る。スズが付けたのか、オレンジ色の首輪を付けていた。
そうだ。このスズの付き猫である、人造猫はあの後スズがカスタムをして名前も付けたらしいけど、日に日に性格や喋り方などが変わっていた。
確かにカスタムとかはいつでも変更出来るけど、段々おかしな猫になっていってるからそろそろ止めるべきかと思っていたんだ。
「いや、その、黒豆?なんだけどさ」
「俺様がどうかしたかにゃ?」
「まず何で黒豆って名前にしたんだ?」
「黒くて小さいからだよ。初めはクロにしようと思ったんだけど、もっと可愛いのがいいなぁって思って黒豆にした!」
「俺様は気に入ってるぞ!スズはセンスの塊にゃー♪」
「イエイ黒豆~♪もっと褒めて~♪」
「まだ聞きたい事がある!」
「なぁに?」
「一人称の俺様はまぁ良しとしよう。その誰かを呼ぶ時に付ける殿ってなんだ殿って」
「ウル殿にゃ」
「それ!意味が分からねぇんだよ」
「うーん、アース教えてあげてよー」
「大昔の人間が使ってた自分と対等かそれ以下の人間に対して使う敬称だな」
「本当にそんな言葉があったのか」
「アースは物知りだな~♪黒豆の設定をいろいろやってたらこうなったんだよ♪面白くていいだろー?可愛いし♪」
「そうにゃ♪スズが喜ぶならそれでいいのにゃ♪」
「スズがいいならいいけどよ」
その後もスズと黒豆は楽しそうに仲良くお喋りをしていた。スズの身体検査の番は俺の次で一番最後だ。
身体検査やメンテナンスは常にやっている事で、診察台の上で寝ていれば30分程度で終わる。
この前俺が暴走した時にトキがやったレーザーで上から下まで見るやつだ。身体の他にもメンタル面にも異変は無いかも分かるらしい。
ちなみに今検査してるのはルカとリリーだ。
午前中には蒼司、レオ、ゼロのそれぞれのペアがやったと思うから、午後は俺達三人の番だった。
アースは思い出したように俺に話しかけて来た。
「そう言えば今日の会食にライアンが来るらしいぞ。ウィルがみんな正装で来るようにって言われたって」
「ライアンが?あー……」
もしかして前にアキトが言ってた地上進出計画の話でもする気か?だからみんなを集めて食事会なんてするのか。
そういう事なら大歓迎だな。いつも面倒な任務しか持って来ない人だと思ってたけど、まさかアキトにそんな話を持ち出していたなんて、味方が増えたようで俺は少しだけライアンに好印象を抱いていた。
「そんじゃ今日はご馳走が食えるって訳か♪」
「みたいだな」
「僕からしたら毎日がご馳走だけどな♪」
「スズ、お前話聞いてたのか」
「聞こえて来たんだよ。ライアンって国のトップだろ?僕会うの初めて~」
「アキトとライアンは昔馴染みらしくて仲がいいんだ」
「アキトもこの世では有名人だからライアン並の大物と繋がっててもおかしくはないけどな。でも超人研究所の敵と会食するなんて不思議~」
「てか僕正装なんて持ってないや~。なぁウル、この後一緒に買い物行こうぜ?黒豆にもかっこいいの買ってやるからな♪」
「それは有難いにゃ♪」
「それなら黒豆に頼めば用意してくれるぞ。俺は自分で選ぶ時以外はいつもアースに頼んで手配してもらってる」
「そうなの?黒豆ぇ」
「出来なくはにゃい。そこらにいるフューボットに頼むから好きなデザインのが来るとは限らにゃいぞ?」
「え、じゃあ自分で買いに行くー。ウル付き合って~」
「分かったよ」
「ウルもこの機会に新調するもの有りじゃね?いつも同じスーツだし」
「服は着れれば何でもいいんだ」
「おっしゃー!僕がウルの選んであげるよ~♪」
全然人の話聞いてないな。
まぁそろそろ買い換えようと思ってたしちょうどいいか。
身体検査とメンテナンスが終わったらスズと買い物に行く事になった。
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