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一章
34.クレイジードラゴン
しおりを挟む次の日、三人でゼロの部屋へ行った。
ゼロは紫の髪をハーフアップに縛っていて、黒のTシャツに緩いジーンズ姿だった。
そしてスズの事を説明して中に入れてもらう。スズの部屋はいろいろな物で溢れ返っていた。汚いとかじゃなくて、おもちゃや本、ぬいぐるみなんかが店かってぐらい大量にあるんだ。
「ふーん。それで最後が俺って訳?あのデブ猫の次ってのが気に入らないけど……いいんじゃん?」
ゼロはスナック菓子を食べながらそう言った。
俺達もゼロが座ってるテーブルに着くと、ゼロの人造人間の凪がお茶とお菓子を出してくれた。相変わらず黒のスーツで見た目は厳ついけど、一生懸命に俺達をもてなそうとしてくれていた。
「あ、凪~?ウルはミックスジュースが好きなんだよ。お茶なんか飲むかよ」
「これは失礼!」
「お茶も飲むわ」
「でもミックスジュースなんて置いてないしな~」
「買って来いよ。それと俺の菓子もなー」
「もー!ゼロくんはお菓子食べ過ぎ!レオくんの事デブ猫とか言えなくなっちゃうんだからな!」
「うるせぇ。俺は太らねぇ体質なんだ」
「あのー、凪?レオのアレは筋肉であって贅肉とかじゃないからな?」
「はっ!これは失礼!」
てへへとおどけて見せる凪。アースがクスクス笑っていた。
「で、話戻すけど、いいんじゃん?って言うのは、スズが俺達の仲間になる事に対して不満は無いって事か?」
「そう言う事。別に俺はスズに恨みとかねぇし。ウィルをやっちまったのも、ここをぶっ壊したのも俺には関係ねぇ」
これにはスズもホッとしたようで、凪に出されたお菓子に手を伸ばしていた。
「なら良かった。あ、改めて紹介するな。斧男ことスズ。能力がとても強い超人だ」
「僕の能力は怪力だよ♪力仕事なら任せて~♪」
「へー、かっけぇ能力だな」
「そんでこっちが五人目の超人のゼロだ。スズはゼロの事は何も知らないって言ってたな」
「うん!五人目の情報はおろかいるなんて聞いてないよ~。通り名はあるの?」
「クレイジードラゴンって呼ばれてるよ」
「なぁ、その通り名って誰が付けてんの?俺の通り名って失礼じゃね?」
「さぁ、野々山辺りじゃないか?俺はゼロの通り名はピッタリだと思うけどな」
「うわっウルも失礼ー。俺泣いちゃう」
「えっとー、狂ってるって事で良いのかな?どこら辺が狂ってるの?」
「見て分からないか?この通り狂ってるんだ」
「だからウル失礼だってば」
まぁゼロの通り名は戦闘中の事を言っているんだろう。戦闘狂なだけあってあの手この手を使った戦い方をするからな。とにかくゼロはレオと同じで戦いを楽しむタイプだ。どんなに劣勢でも、その状況さえ楽しんでしまう正に狂った奴。
「スズくん、ゼロくんはバトルになると今以上にクレイジーになるんだよ。そしてドラゴンは首の刺青だね」
「そりゃお手合わせ願いたいね♪」
「なぁスズ、お前のそのタトゥーってさ、灰刻のじゃね?」
「え」
灰刻?ゼロからの聞き慣れない言葉にアースを見る。すると、検索してくれたのか答えてくれた。
「灰刻研究所の事で、研究所の中でも最もブラックな所だ。行政当局でも厳しく取り締ってはいるけど、立入検査とかある時に上手くやり過ごしていてなかなか捕まえられないでいるんだ」
「そうそう。ロックタウンって言うスラム街にあって、お上もあまり立ち入れないから灰刻に捕まった超人は絶対助からないって恐れられてるとこだよ」
「ゼロ、詳しいんだね」
「まぁな。俺ここ来る前ロックタウンに住んでたし?まさかスズ、灰刻の超人か!?」
「灰刻は初めの研究所。俺が最後にいた研究所は別の所だよ」
「へー、良く生きてられたな!すげぇじゃん」
話しながらスズが首を触っているのに気付いた。やっぱり消したいんだろうな。
「スズ。やっぱり俺からアキトに消してもらうように頼むよ」
「えっ!いいってば!僕、周りの視線も気にしてないし!」
「もうそこの研究所とは無関係なんだろ?それに、今のスズはこのLiveの超人だ。それぐらいしてもらえる権利はある」
「ウル……」
「さすがウルだね~。やっぱ好きだわ♪スズ、ウルはクールに見えて優しくて漢気ある奴なんだ。だから俺はウルが認める奴は信用する。これからよろしくな~♪」
「うん!こちらこそよろしく……ありがとう二人共!」
「じゃあゼロとも会えたし、早速アキトの所へ行こう」
「俺も行く~♪アキトに会う用事が終わったら俺とバトルしてくれよ♪俺の能力もそこで教えてやんよ~」
「あ、その事だけど、スズはしばらく安静にしてなきゃいけないんだ」
「へ?何でよ?」
「スズの両手の包帯を見ろ。大怪我してるんだよ。これはアキトの命令だから絶対守れよ」
「それってファッションでしてたんじゃねぇの?大怪我って何?ここ侵入して来た時のやつ?」
「アングリーライオンにやられた傷は治ったよ。この手はウルにやられたんだ」
「ウルとやり合ったのか!?」
「勘違いするな。岩などを使ってスズの能力を見させてもらったんだ。少し無理させ過ぎて今手が使えないんだ」
「なーんだ!ウルとやったんなら俺もーって言おうとしたのに。そんじゃスズの手が治ったらバトルしよーぜ♪」
「いいよ♪僕もゼロとやってみたいなーって思ってたんだ♪ちなみに能力は何?」
「言うよりやった方が早ぇ。スズ、どっちかの手出してみろ」
「手?」
ゼロが言うと、スズは右手をゼロに向けて出す。そしてゼロが包帯を外してガーゼも取った。
やっぱりスズの傷は酷かった。右手の半分の皮膚はまだ再生してなくて、見てるだけで痛々しかった。
「こりゃひでぇな。ちょっと動くなよ?」
「うん」
ゼロはスズの右手を自分の両手で包み、集中し始める。すると、ゼロの瞳が紫色に光り、俺で言う戦闘モードに入ろうとしていた。次第に全身に紫色のオーラが纏い、完全に戦闘モードだ。
ゼロの能力は俺も知っている。が、こうして誰かに使っているのは初めて見る。
だから他人にも使えるのかと少し興味があった。
そう、ゼロの能力は治癒能力。
俺が知る限りでは自分自身の負った傷を瞬時に回復させる事だった。スズの手を触ってるって事は自分以外にも使えるようになったって言うことか?
興味深かったので大人しく見ていると、その内スズの右手が光り出して、白いモヤに包まれた。
そして一瞬で見るも無惨だった手の傷が癒えた。
さっきまでの酷かった手がどこへやら、すっかり皮膚も元通りになり、スズは驚いて手をぐっぱーぐっぱーしていた。
「すげぇ!痛みも無くなった!」
「ゼロ、お前自分以外にも使えたのか」
俺がゼロに向かって言うと、ゼロは見るからに辛そうにして息を切らしていた。
「はぁはぁ……俺も誰かに使うのは……初めてだ……出来る気がして、やっ……た……」
「ゼロくん!」
目を閉じて倒れそうになったゼロを凪がすぐに支えてそのまま担いで部屋を飛び出した。
能力を使い過ぎたのか、気を失ったようだ。
きっと凪はアキトの所へ連れて行ったんだろう。俺達もすぐに後を追った。
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