カラフルパレード

pino

文字の大きさ
上 下
34 / 44
一章

34.クレイジードラゴン

しおりを挟む

 次の日、三人でゼロの部屋へ行った。
 ゼロは紫の髪をハーフアップに縛っていて、黒のTシャツに緩いジーンズ姿だった。
 そしてスズの事を説明して中に入れてもらう。スズの部屋はいろいろな物で溢れ返っていた。汚いとかじゃなくて、おもちゃや本、ぬいぐるみなんかが店かってぐらい大量にあるんだ。


「ふーん。それで最後が俺って訳?あのデブ猫の次ってのが気に入らないけど……いいんじゃん?」


 ゼロはスナック菓子を食べながらそう言った。
 俺達もゼロが座ってるテーブルに着くと、ゼロの人造人間の凪がお茶とお菓子を出してくれた。相変わらず黒のスーツで見た目は厳ついけど、一生懸命に俺達をもてなそうとしてくれていた。


「あ、凪~?ウルはミックスジュースが好きなんだよ。お茶なんか飲むかよ」

「これは失礼!」

「お茶も飲むわ」

「でもミックスジュースなんて置いてないしな~」

「買って来いよ。それと俺の菓子もなー」

「もー!ゼロくんはお菓子食べ過ぎ!レオくんの事デブ猫とか言えなくなっちゃうんだからな!」

「うるせぇ。俺は太らねぇ体質なんだ」

「あのー、凪?レオのアレは筋肉であって贅肉とかじゃないからな?」

「はっ!これは失礼!」


 てへへとおどけて見せる凪。アースがクスクス笑っていた。


「で、話戻すけど、いいんじゃん?って言うのは、スズが俺達の仲間になる事に対して不満は無いって事か?」

「そう言う事。別に俺はスズに恨みとかねぇし。ウィルをやっちまったのも、ここをぶっ壊したのも俺には関係ねぇ」


 これにはスズもホッとしたようで、凪に出されたお菓子に手を伸ばしていた。


「なら良かった。あ、改めて紹介するな。斧男ことスズ。能力がとても強い超人だ」

「僕の能力は怪力だよ♪力仕事なら任せて~♪」

「へー、かっけぇ能力だな」

「そんでこっちが五人目の超人のゼロだ。スズはゼロの事は何も知らないって言ってたな」

「うん!五人目の情報はおろかいるなんて聞いてないよ~。通り名はあるの?」

「クレイジードラゴンって呼ばれてるよ」

「なぁ、その通り名って誰が付けてんの?俺の通り名って失礼じゃね?」

「さぁ、野々山辺りじゃないか?俺はゼロの通り名はピッタリだと思うけどな」

「うわっウルも失礼ー。俺泣いちゃう」

「えっとー、狂ってるって事で良いのかな?どこら辺が狂ってるの?」

「見て分からないか?この通り狂ってるんだ」

「だからウル失礼だってば」


 まぁゼロの通り名は戦闘中の事を言っているんだろう。戦闘狂なだけあってあの手この手を使った戦い方をするからな。とにかくゼロはレオと同じで戦いを楽しむタイプだ。どんなに劣勢でも、その状況さえ楽しんでしまう正に狂った奴。


「スズくん、ゼロくんはバトルになると今以上にクレイジーになるんだよ。そしてドラゴンは首の刺青だね」

「そりゃお手合わせ願いたいね♪」

「なぁスズ、お前のそのタトゥーってさ、灰刻はいこくのじゃね?」

「え」


 灰刻?ゼロからの聞き慣れない言葉にアースを見る。すると、検索してくれたのか答えてくれた。


「灰刻研究所の事で、研究所の中でも最もブラックな所だ。行政当局でも厳しく取り締ってはいるけど、立入検査とかある時に上手くやり過ごしていてなかなか捕まえられないでいるんだ」

「そうそう。ロックタウンって言うスラム街にあって、お上もあまり立ち入れないから灰刻に捕まった超人は絶対助からないって恐れられてるとこだよ」

「ゼロ、詳しいんだね」

「まぁな。俺ここ来る前ロックタウンに住んでたし?まさかスズ、灰刻の超人か!?」

「灰刻は初めの研究所。俺が最後にいた研究所は別の所だよ」

「へー、良く生きてられたな!すげぇじゃん」


 話しながらスズが首を触っているのに気付いた。やっぱり消したいんだろうな。


「スズ。やっぱり俺からアキトに消してもらうように頼むよ」

「えっ!いいってば!僕、周りの視線も気にしてないし!」

「もうそこの研究所とは無関係なんだろ?それに、今のスズはこのLiveの超人だ。それぐらいしてもらえる権利はある」

「ウル……」

「さすがウルだね~。やっぱ好きだわ♪スズ、ウルはクールに見えて優しくて漢気ある奴なんだ。だから俺はウルが認める奴は信用する。これからよろしくな~♪」

「うん!こちらこそよろしく……ありがとう二人共!」

「じゃあゼロとも会えたし、早速アキトの所へ行こう」

「俺も行く~♪アキトに会う用事が終わったら俺とバトルしてくれよ♪俺の能力もそこで教えてやんよ~」

「あ、その事だけど、スズはしばらく安静にしてなきゃいけないんだ」

「へ?何でよ?」

「スズの両手の包帯を見ろ。大怪我してるんだよ。これはアキトの命令だから絶対守れよ」

「それってファッションでしてたんじゃねぇの?大怪我って何?ここ侵入して来た時のやつ?」

「アングリーライオンにやられた傷は治ったよ。この手はウルにやられたんだ」

「ウルとやり合ったのか!?」

「勘違いするな。岩などを使ってスズの能力を見させてもらったんだ。少し無理させ過ぎて今手が使えないんだ」

「なーんだ!ウルとやったんなら俺もーって言おうとしたのに。そんじゃスズの手が治ったらバトルしよーぜ♪」

「いいよ♪僕もゼロとやってみたいなーって思ってたんだ♪ちなみに能力は何?」

「言うよりやった方が早ぇ。スズ、どっちかの手出してみろ」

「手?」


 ゼロが言うと、スズは右手をゼロに向けて出す。そしてゼロが包帯を外してガーゼも取った。
 やっぱりスズの傷は酷かった。右手の半分の皮膚はまだ再生してなくて、見てるだけで痛々しかった。
 

「こりゃひでぇな。ちょっと動くなよ?」

「うん」


 ゼロはスズの右手を自分の両手で包み、集中し始める。すると、ゼロの瞳が紫色に光り、俺で言う戦闘モードに入ろうとしていた。次第に全身に紫色のオーラが纏い、完全に戦闘モードだ。

 ゼロの能力は俺も知っている。が、こうして誰かに使っているのは初めて見る。
 だから他人にも使えるのかと少し興味があった。
 そう、ゼロの能力は治癒能力。
 俺が知る限りでは自分自身の負った傷を瞬時に回復させる事だった。スズの手を触ってるって事は自分以外にも使えるようになったって言うことか?

 興味深かったので大人しく見ていると、その内スズの右手が光り出して、白いモヤに包まれた。
 そして一瞬で見るも無惨だった手の傷が癒えた。
 さっきまでの酷かった手がどこへやら、すっかり皮膚も元通りになり、スズは驚いて手をぐっぱーぐっぱーしていた。


「すげぇ!痛みも無くなった!」

「ゼロ、お前自分以外にも使えたのか」


 俺がゼロに向かって言うと、ゼロは見るからに辛そうにして息を切らしていた。


「はぁはぁ……俺も誰かに使うのは……初めてだ……出来る気がして、やっ……た……」

「ゼロくん!」


 目を閉じて倒れそうになったゼロを凪がすぐに支えてそのまま担いで部屋を飛び出した。
 能力を使い過ぎたのか、気を失ったようだ。

 きっと凪はアキトの所へ連れて行ったんだろう。俺達もすぐに後を追った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...