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一章
33.劣悪な環境と今
しおりを挟む夜。何となく眠れなくて体を起こす。
俺の隣にはスズが大の字になり、布団からはみ出て寝ている。
アースはスリープモードにし、充電をしながら壁にもたれ掛かって座っていた。
そして、この部屋唯一のベッドで寝ている筈のアキトの姿が無かった。
また研究か、緊急で何かあったのか。アキトはここのトップで忙しそうにしているから特に気にはならなかった。
俺は水を飲みたくなって、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してゴクゴク飲んだ。
明日はスズをゼロに会わせよう。
俺はスズの事をここにいる超人全員に会わせるつもりでいる。
蒼司は俺と一緒にこの部屋で会っている。その時の反応を見る限りあまり良くは思ってないみたいだったな。まぁ蒼司の場合はアキトと俺以外にはみんなにああだから分かりにくいんだけどな。
ルカにはたまたま訓練室で会う事が出来た。ルカの反応もイマイチだったな。敵だった奴がいきなり仲間になりました何て言われても、はいそうですか、なんて笑顔作れる訳もないよな。
レオはまぁまぁだな。元々敵味方とか気にしないタイプだけど、さすがにウィルの件で怒ってたからな。心配だったけど、ウィルのおかげで丸く収まって良かった。
そして残るはゼロだ。ゼロの存在はスズも知らなかったみたいだからどうなるか未知数だ。ゼロ自体はレオと同じで敵味方とか気にしなそうだけど、絶対スズと戦おうとすると思う。あいつは戦闘狂だからな。
「どうしたー?眠れないのかぁ?」
ミネラルウォーターを閉まって布団へ戻る途中でスズがむくりと起き上がり目を擦りながら聞いて来た。
「そんなとこだ。起こしたか?悪かったな」
「別にいいよ~。眠れないなら話そうぜ。そうだなー、ここにいる超人の話が聞きたいなぁ」
「それなら俺よりスズの方が詳しそうだけど」
スズは俺達の通り名や能力、更には顔なども知っていたみたいだからな。
「詳しくはないよ~。うちのボス、必要無い事とかは教えてくれなかったし。なんつーかさ、Liveの超人達って思ってたよりのびのびしてていいなーって思ったよ」
「スズがいた所は違うのか?」
「全然違うね!大きく違うところはトップとの関係かな~」
「トップって、うちだとアキトの事か?」
「そ!Liveの超人達ってアキトからすごーく大事にされてるじゃん?家族みたいな感じー。それがさ、凄く羨ましいなぁって思ったな~」
「……それって、普通じゃねぇの?」
「まさかぁ!アキトみたいな人は珍しいと思うよ~?実を言うとさ、僕って研究所を二箇所も経験してるんだよね~。一個目はマジで最悪だった。毎日全身をいじられて、化け物みたいなのと戦わされたり、ご飯なんてまともに貰えなかったんだ」
「ひでぇな」
俺は驚き過ぎてそれしか言葉が出て来なかった。
超人達を実験体にして人間以下の扱いをする研究所があるって噂には聞いていたけど、こうして実際経験した超人から聞くと、何て言ったら良いのか分からなかった。
でも、興味はあった。他の研究所の事。俺の知らない世界だ。
「だろぉ?そこで瀕死状態になってた僕を拾ってくれたのが二個目の研究所なんだけど、そこもここに比べれば酷い方だなって思うよ。超人の事を道具としか思ってないんだ。でも、ちゃんと働けばご飯は食べられたからね~。僕頑張ってたよ~」
「スズ……なぁ、Liveに入りたいのって本心なのか?」
「本心だよ。何度も言うように、ご飯が美味しい!そして好きな時に好きなだけ食べられる!それと、アキトの技術狙いかな?ぶっちゃけ他の研究所の研究員達って下手くそばかりなんだよ。だから超人達が無駄に死んで行くんだ。みんなアキトみたいに上手で、超人想いならいいのに」
薄暗い灯りで薄っすらとしか見えないけど、スズの顔が悲しいものに見えた。
そうか、他の研究所はこことは全然違うのか。
「スズ、お前もここにいられるように絶対認められような!」
「うん♪ウル、君に会えて良かった。本当にありがとう。それと、ごめんね?」
「何で謝るんだ?」
「ボスからの命令とは言え、ウルの事を拉致ようとしてたからだよ。ボスはウルに対して凄い執着心があったよ。だから拉致して研究所に帰ってたらウルがどんな目にあっていたか……」
「おやおやー?二人共まだ起きていたのか?」
スズが喋ってる途中でアキトが部屋に入って来て間に入って来た。
そこでスズは「あ」と小さく声を洩らしていた。きっとアキトに口止めされていた話だったのだろう。俺もこれ以上は聞かずに、寝る準備をした。
「アキトこそこんな遅くまで仕事か?」
「そうだよ~。スズの為に徹夜しようと思ってたんだけど、ちゃんと睡眠は取ろうと思ってね」
いや、きっとスズが口止めした事を話そうとしている事に首輪を通して気付き、止める役目のアースはスリープモードだから、自ら入って来て止めたんだろう。
「僕の為って~?何してくれてたのー?」
「ふふ♪それは完成してからのお楽しみ~♪さぁ寝るよ~」
何をしていたのかは俺も気になった。スズの為って、新しい武器作りとか?
スズはその後もアキトに聞き出そうとしていたが、軽く怒られて渋々布団に潜り込んだ。
まぁ完成したら分かるし、とりあえず俺はスズをみんなに会わせて認めてもらう事に集中しよう。
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