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一章
31.不慣れな謝罪
しおりを挟む次の日、仮眠室で朝食を取っていると、騒がしいのが入って来た。
俺とスズはポカンとしてそちらを見ると、寝癖を付けたままのレオが寝巻きのままの姿で息を切らして入り口に立っていた。
そしてスズと食事を取る俺に向かって大きな声で言った。
「ウルー!どう言う事だよぉ!何で斧男と一緒にいるんだよぉ!!」
「とりあえず叫ぶな。お前起きたばかりだろ?顔は洗ったのか?まだならこの部屋で済ませて席に着け」
「うっ……すぐにやって来る!」
俺がいつものようにレオに言うと、何かを言いたいのを堪えて言われた通り洗面所がある方へ走って行った。
後から入って来たウィルは俺に一礼して挨拶をして来た。
「ウルさん、おはようございます。突然失礼して申し訳ありません。レオに伝えたら私の言う事も聞かずに飛び出したもので……アースから話は聞いてあります。朝食、ご一緒してもよろしいですか?」
「もちろんだ。アース、レオの分も用意してくれ」
相変わらず物腰の柔らかいウィル。レオの世話するのも大変だろうな。
そしてスズを見ると、珍しく大人しくしていた。
「ウィル、先に紹介しとく。こちらが斧男のスズって言うんだ。思う所はいろいろあると思うけど、まずは話を聞いてやって欲しいんだ。スズ、こっちはレオの付き人のウィリアム。俺達はウィルって呼んでる。見ての通りレオと違って有能だ」
「スズさん、せっかくの食事の場を荒らしてしまい申し訳ありません。ウルさんの紹介でありましたが、私はレオの付き人のウィリアムと申します。改めてよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げて挨拶をするウィルにスズは慌てて立ち上がり、自分も腰を折ってお辞儀をしていた。
え、スズってばどうしたんだ?
「ウ、ウィルさん!この間はっ……す、すみませんでした!僕のせいで……あの、体、大丈夫?」
「ええ。アキトに直してもらいこの通りピンピンしています。私も戦闘など出来ない癖に出しゃばったのが悪かったのです。それと、レオを守るのも私の役目です。あの時の貴方もあれが役目だったのでしょう?どうかお気になさらずに」
たどたどしく喋るスズにニッコリ笑って返すウィル。スズは困ったような顔をして俺に近寄って来た。
「ウルー!ウィル怒ってない?なぁ、僕なんて言ったらいい!?」
「何だよ、いつもの勢いはどうした?お前らしくねぇ」
「だって、僕、謝るの慣れてないから……なんて言ったらいいのか不安で……」
そう言う事か。
だからスズはいつもの様子が変なのか。
これを見ていたウィルは笑顔のままスズに近付いて手を出した。
「スズさん、私は貴方を歓迎します。事情はどうであれ、ウルさんが信頼して私やレオに紹介してくれたのです。良ければ私も貴方を信頼させて下さい」
「ええー!ウィルさんってめちゃくちゃ良い人かよー!僕、本当に酷い事しちゃったじゃんー!」
「ウィルはいつもこうだよ。なぁ?アース」
「そうそう。こうじゃなきゃレオの面倒は見切れねぇもんな」
「はは、レオがこれからたくさん迷惑を掛けるかと思いますが、彼は根は良い子です。是非仲良くしてあげて下さい」
「ぼ、僕の方こそ……よろしくお願いします……」
ウィルに優しく言われて俯くスズ。照れてるなこいつ。
可愛いとこあんじゃねぇかと茶化してやろうかと思ってると、顔を洗って来たレオがまた騒がしく戻って来た。
「コラーーー!斧男ぉ!今度は俺がお前を真っ二つにしてやるーーー!」
レオの叫ぶ声に俺達は呆れたように笑った。
いつもの事だから放っておく事も出来たけど、今日はスズとの蟠りを解消させる為に時間を取ってもらったんだ。
俺はアースに指示してレオを着席させた。
「レオ、朝飯まだだろ?とりあえず食え」
「お?アースが作ったのか?美味そうじゃねぇか。あ、牛乳がねぇじゃん!ウィルー!牛乳~」
「はいはい。今用意しますから」
ウィルが部屋の隅にいたいたフューボットに指示を出す。
そして普通に食べ出すレオ。こいつも食べる時は本当に美味しそうに食べるんだ。
「うまー♡でもこれじゃ足りねぇな。おいお前食わないならソーセージよこせ♪」
「あっ!僕のソーセージ!」
レオはスズの食べかけの食器の上を見てヒョイっとソーセージを奪った。
全く、レオは……
俺が叱ろうとしたけど、先にウィルが近寄って対処した。
「レオ!ここはレオの部屋ではないんです!行儀良くして下さい!スズさん、失礼いたしました。すぐに新しい物を用意いたします」
「へっいや、そんなのいいけど……」
「スズさんだぁ?あ!てめぇ斧男!これ食ったら真っ二つにするからな!」
「それとレオ、私は真っ二つにはなってません。かろうじて繋がってました。こちらはスズさんです。てめぇなんて言葉使わないで下さい」
「だってよー!ウィルの事を壊した奴じゃんかー!」
「レオ。その壊されたウィルはスズの謝罪をちゃんと受け入れたぜ?むしろスズをボコボコにしたのはお前だろ。スズに謝れ」
「はぁ!?何で俺がぁ!?俺はウルを守ってやっただけだぞー!」
「あのさ!アングリー……いや、レオ!あの時は本当にごめんなさいっ!」
「お?」
「あの時は上からの指示とは言え、悪い事をしたよ。でも今の僕はここでやって行きたいと思ってるんだ。本当に反省している。だから、仲良く……してくれないか?」
スズが恐る恐るレオを見て言った。
さて、レオはどうする?
「んー、ウルはこいつの事どう思ってるんだ?」
「スズの事か?別に仲間になってもいいと思ってるよ」
「むむむ。アースはー?」
「もちろん、ウルと同じ意見」
「……ウィルは?」
「私はレオと仲良くして下さるのであれば大歓迎です♪」
「はぁぁ、それなら許してやるよ~。スズだっけか?これからよろしくな!それと、俺も殴ったの悪かったよ……ごめん……」
最後はボソボソとレオにしては小さい声で謝っていた。
やっぱりこの二人は似ている。
たくさん笑う所も、たくさん食べる所も、謝る事に慣れていない所も。
だからきっと二人は仲良くなれると思う。
俺とアースとウィルは二人が仲直りした事にホッとしていた。
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