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一章
30.主人と人造人間
しおりを挟む夜、今日の夕飯はフューボット達にとびきりのご馳走を頼んで俺達が寝泊まりする仮眠室で豪勢に取っていた。
もちろんスズの為だ。
期待通り俺が用意する物質を次々と破壊してくれたからな。ただ、やはり硬化させられるのは筋肉だけみたいで、あの後のスズの手の皮膚は破けてボロボロになっていた。だから今はスズの両手には包帯がグルグルと巻かれていた。
それでもどんどん運ばれてくるご馳走に、スズは嬉しそうに笑っていた。
「うま~♡やっぱここのご飯は美味しいなぁ♡」
「約束したからな。好きなだけ食え」
「ほんと、僕が住んでたところでは食べられない物ばかりだよ」
「そんなに酷い場所なのか?」
「うん。ほぼ自給自足だからね。店なんて汚い爺さんとかがいつのか分からない物売ってるだけだし、それがまた高い!」
「それは酷いな」
「でもね、一つ言わせてもらうなら、味がいつも同じだなって思う。どれも美味しいんだけど、やっぱり人の手で作るものとは違うよね~」
俺は今まで特に気にせずに食っていたけど、スズはそんな事を感じていたのか。
俺は試しに一番近くにあったステーキを一切れ食べてみる。うん。いつも通りの味だ。
「今ウルが食べたステーキも、人間が焼けばその時によって味が変わるよ~。仕込みの仕方や焼き加減、味付け。ここはフューボットが作ってるからかな?いつも同じ硬さで同じ味の物しか出て来ないよね。美味しいけど」
「そうか、何も気にしてなかったけど、同じ料理でも違う味の物が出来るのか!」
「そう言う事~♪味を語れる程美味しい物食べ尽くして来た訳じゃないけど、食べ物に関しては誰よりもうるさいよ僕。尊いって意味でね!だから出された物は残さず食べましょー♡」
その小さい体のどこに入っていくんだと思う程スズはたくさん食べた。
俺とアースは驚きながらも笑顔になれた。
スズは明るくてとても前向きだ。
ただ出会いが敵だった事と表現などがストレートなだけ。
ここにいる超人達もここに馴染むまでは時間が掛かったけど、スズの性格ならすぐに馴染めると思う。
そう思うのはどこかレオと似ているからか。
「その食欲、レオと同じぐらいあるよ」
「アングリーライオン?ああ、あの人もいっぱい食べそうだよね~。ねぇ、明日アングリーライオンに会いたい!」
「レオか……どう思う?アース」
「うーん、90%喧嘩になると思う」
「だよな~」
なんせスズはレオの人造人間のウィルを壊した相手だ。レオ自身はすぐにケロッとする性格だけど、ウィルの事になったらどうだろう?
「なら平気じゃん♪アースの計算だと10%は喧嘩しないんだろ?もし喧嘩になってもいいけどね~♪」
「ポジティブだな」
「スズ、どうしてレオに会いたいんだ?」
アースが食べ終わった食器を片付けながらスズに聞いた。アースも大分スズと仲良くなっている。俺はそれが嬉しかった。
「んー、単純にやり合った相手だから気になるってのと、謝りたい。許してもらえなくてもな」
「……そっか」
これは会わせるしかないだろ。
俺とアースは目を見合わせて頷いた。
「俺からウィルに連絡取って予定合わせてみるよ。俺はスズのそう言うところ好きだ」
「アース!えっ人造人間って口説いたりもすんの!?」
「あはは、人造人間は人間に限りなく似せて作られているんだ。フューボットとは違う知能だから、こうやって素直に感情を伝えたりもする。アースの場合は俺、ウィルならレオ。その主人に合わせようとするから、ずっと側にいる事よって性格や行動言動などは変わっていくんだ。基本的には設定通りだけどな」
「すげー!て事はウルも僕の事をそう思ってるって事ぉ?♡」
「まぁそうなるな。俺がやりたい事や言いたい事とかを一番近くで聞いてるからな。それが間違っていれば否定する事もあるけどな。それは俺が一番多い。アキトの監視カメラでもあるからな」
俺はアースをじーっと見ると苦笑いされた。
そしてアースは空いている椅子に座ってスズに言った。
「俺達人造人間は、主人に付き従い、導きサポートするのが役目だ。それを疎く思ったり道具のように扱う超人もいるけど、俺はウルに従える事が出来て幸せだ」
「アースやめろ。恥ずかしいだろ」
「へー、本当に仲良いんだな~!僕も二人の事大好きだぜ♪いろいろ教えてくれるし、一緒にいて楽しい!」
俺もスズの事は嫌じゃ無い。
明日はレオに会わせる予定だけど、きっとレオなら分かってくれる。
俺は不安もありながら少しだけ良い期待もしていた。
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