カラフルパレード

pino

文字の大きさ
上 下
30 / 44
一章

30.主人と人造人間

しおりを挟む

 夜、今日の夕飯はフューボット達にとびきりのご馳走を頼んで俺達が寝泊まりする仮眠室で豪勢に取っていた。
 もちろんスズの為だ。
 
 期待通り俺が用意する物質を次々と破壊してくれたからな。ただ、やはり硬化させられるのは筋肉だけみたいで、あの後のスズの手の皮膚は破けてボロボロになっていた。だから今はスズの両手には包帯がグルグルと巻かれていた。
 それでもどんどん運ばれてくるご馳走に、スズは嬉しそうに笑っていた。


「うま~♡やっぱここのご飯は美味しいなぁ♡」

「約束したからな。好きなだけ食え」

「ほんと、僕が住んでたところでは食べられない物ばかりだよ」

「そんなに酷い場所なのか?」

「うん。ほぼ自給自足だからね。店なんて汚い爺さんとかがいつのか分からない物売ってるだけだし、それがまた高い!」

「それは酷いな」

「でもね、一つ言わせてもらうなら、味がいつも同じだなって思う。どれも美味しいんだけど、やっぱり人の手で作るものとは違うよね~」


 俺は今まで特に気にせずに食っていたけど、スズはそんな事を感じていたのか。
 俺は試しに一番近くにあったステーキを一切れ食べてみる。うん。いつも通りの味だ。


「今ウルが食べたステーキも、人間が焼けばその時によって味が変わるよ~。仕込みの仕方や焼き加減、味付け。ここはフューボットが作ってるからかな?いつも同じ硬さで同じ味の物しか出て来ないよね。美味しいけど」

「そうか、何も気にしてなかったけど、同じ料理でも違う味の物が出来るのか!」

「そう言う事~♪味を語れる程美味しい物食べ尽くして来た訳じゃないけど、食べ物に関しては誰よりもうるさいよ僕。尊いって意味でね!だから出された物は残さず食べましょー♡」


 その小さい体のどこに入っていくんだと思う程スズはたくさん食べた。
 俺とアースは驚きながらも笑顔になれた。

 スズは明るくてとても前向きだ。
 ただ出会いが敵だった事と表現などがストレートなだけ。
 ここにいる超人達もここに馴染むまでは時間が掛かったけど、スズの性格ならすぐに馴染めると思う。
 そう思うのはどこかレオと似ているからか。


「その食欲、レオと同じぐらいあるよ」

「アングリーライオン?ああ、あの人もいっぱい食べそうだよね~。ねぇ、明日アングリーライオンに会いたい!」

「レオか……どう思う?アース」

「うーん、90%喧嘩になると思う」

「だよな~」


 なんせスズはレオの人造人間のウィルを壊した相手だ。レオ自身はすぐにケロッとする性格だけど、ウィルの事になったらどうだろう?


「なら平気じゃん♪アースの計算だと10%は喧嘩しないんだろ?もし喧嘩になってもいいけどね~♪」

「ポジティブだな」

「スズ、どうしてレオに会いたいんだ?」


 アースが食べ終わった食器を片付けながらスズに聞いた。アースも大分スズと仲良くなっている。俺はそれが嬉しかった。


「んー、単純にやり合った相手だから気になるってのと、謝りたい。許してもらえなくてもな」

「……そっか」


 これは会わせるしかないだろ。
 俺とアースは目を見合わせて頷いた。


「俺からウィルに連絡取って予定合わせてみるよ。俺はスズのそう言うところ好きだ」

「アース!えっ人造人間って口説いたりもすんの!?」

「あはは、人造人間は人間に限りなく似せて作られているんだ。フューボットとは違う知能だから、こうやって素直に感情を伝えたりもする。アースの場合は俺、ウィルならレオ。その主人に合わせようとするから、ずっと側にいる事よって性格や行動言動などは変わっていくんだ。基本的には設定通りだけどな」

「すげー!て事はウルも僕の事をそう思ってるって事ぉ?♡」

「まぁそうなるな。俺がやりたい事や言いたい事とかを一番近くで聞いてるからな。それが間違っていれば否定する事もあるけどな。それは俺が一番多い。アキトの監視カメラでもあるからな」


 俺はアースをじーっと見ると苦笑いされた。
 そしてアースは空いている椅子に座ってスズに言った。


「俺達人造人間は、主人に付き従い、導きサポートするのが役目だ。それを疎く思ったり道具のように扱う超人もいるけど、俺はウルに従える事が出来て幸せだ」

「アースやめろ。恥ずかしいだろ」

「へー、本当に仲良いんだな~!僕も二人の事大好きだぜ♪いろいろ教えてくれるし、一緒にいて楽しい!」


 俺もスズの事は嫌じゃ無い。
 明日はレオに会わせる予定だけど、きっとレオなら分かってくれる。
 俺は不安もありながら少しだけ良い期待もしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【SF短編】エリオの方舟

ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~

こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。 人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。 それに対抗する術は、今は無い。 平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。 しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。 さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。 普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。 そして、やがて一つの真実に辿り着く。 それは大きな選択を迫られるものだった。 bio defence ※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

処理中です...