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一章
23.スズとの交渉
しおりを挟む斧男、スズとの面会後、アースがいる研究室へ移動中にアキトに気になる事を聞いてみた。
「なぁ、アイツどうするんだ?」
「それはこれから考えるよ。まだ聞き出せる情報があるかもしれないし、今は様子見だね」
「それと、随分仲良くなったんだな」
そう、二人のやり取りを見ていて感じたのは、まるで友達と話すような間柄に見えたんだ。
スズがそんな風な話し方だからなのか分からないけど、アキトもアイツの事をスズって名前で呼んでいた。奴らの仲間なのは間違いない筈なのに、そこに違和感を感じたんだ。
俺がそう言うと、アキトは俺を見てニッコリ笑った。
「ウルってばやきもちかい?本当に可愛いなぁ♡」
「真面目に答えろ」
「そうだなー、彼と交渉したんだ」
「交渉?」
「スズは奴らの仲間だけど、今回捨て駒にされたらしい。それは彼自身が言っている事で実際は分からない。だから奴らの情報を渡す代わりに彼にもウル達と同じ施術をして仲間に入れてくれと言われてね」
「俺は反対です!」
ここでずっと黙っていた蒼司がすかさず異議を唱えた。そりゃそうだろ。その奴らの情報だってデマかもしれないし、易々とアキトの技術を敵である超人に施したりしたら悪用されかねない。
俺も今の所は蒼司側の意見だ。
「今回ここに無理矢理侵入して来て、兄さんを危険に晒した犯人ですよ!そんな虫の良い話許せません!」
「そう言うよね。でも私も彼を上手く利用出来ないかと思ってね。スズが本当の事を言っているのかどうかは分からない。信じるのも信じないのも私達次第だ。ただ、彼の超人としての能力は使えるだろう?もし、裏切りでもしたらその時は然るべき処分をするつもりだよ」
「スズの能力って何なんだ?」
「怪力だよ。通常の人間よりも桁違いの力の持ち主だ。あの武器を見た時そっち系かとは思っていたけど、これは使えるなぁって思ってね」
「怪力……」
確かに、パワー系の能力を持つ超人は俺らの中にはいない。一見レオがそうなんじゃって思うけど、レオの力自体は大きく育った体と、元々持っていた才能で、トレーニングなどで培った物だ。ここに来たばかりのレオは俺よりも小さくて、それはそれは貧弱な体をしていたものだ。
ちなみにレオの能力は「生命力」だ。通常の人間よりも生命力が高く、ちょっとやそっとの事では倒れたりしないんだ。さっきみたいに故意に気絶させられたりはしても、生命に関わる程ではない。アキトの施術を受けてからは更に力を増して、ほぼ無敵状態だ。だからレオは強いんだ。
「パワーならレオで十分でしょう。彼は見るからに打たれ弱い。いくら力が強くてもそんなの諸刃の剣です」
「蒼司は相変わらず厳しいね~。レオと組ませたら面白いコンビになると思うんだけどね~。もう少し力をつけたらルカとも相性いいかもね♪」
「俺は組みませんよ絶対に」
「やれやれ。ウルは組んでみたいと思う?実際彼の戦う所見たよね?」
「見たけど……確かに、アキトが力を貸してやったらもっと強くなるとは思うし、一緒に組んだら心強いとは思う。でも蒼司の言う通り研究所をぶっ壊して侵入して来た訳だし、奴らの仲間ってのも気にする奴も多いんじゃねぇか?」
「そこは彼に頑張ってもらうよ。本当に仲間になりたいのならそれなりに働いて貰って信頼を得るしかないからね」
嫌がる蒼司に苦笑いのアキト。
アキトは周りに厳しいようで結構考えていたりもする。だから俺は何か考えがあるのかと思って蒼司程は反対はしなかった。
それに、もしスズが俺達と同じように動くようになったらもっと接する機会が増える筈だ。その時に奴らの事を聞けるかもしれないからな。
アキトがスズの記憶を消さなければの話だけど。
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