23 / 44
一章
23.スズとの交渉
しおりを挟む斧男、スズとの面会後、アースがいる研究室へ移動中にアキトに気になる事を聞いてみた。
「なぁ、アイツどうするんだ?」
「それはこれから考えるよ。まだ聞き出せる情報があるかもしれないし、今は様子見だね」
「それと、随分仲良くなったんだな」
そう、二人のやり取りを見ていて感じたのは、まるで友達と話すような間柄に見えたんだ。
スズがそんな風な話し方だからなのか分からないけど、アキトもアイツの事をスズって名前で呼んでいた。奴らの仲間なのは間違いない筈なのに、そこに違和感を感じたんだ。
俺がそう言うと、アキトは俺を見てニッコリ笑った。
「ウルってばやきもちかい?本当に可愛いなぁ♡」
「真面目に答えろ」
「そうだなー、彼と交渉したんだ」
「交渉?」
「スズは奴らの仲間だけど、今回捨て駒にされたらしい。それは彼自身が言っている事で実際は分からない。だから奴らの情報を渡す代わりに彼にもウル達と同じ施術をして仲間に入れてくれと言われてね」
「俺は反対です!」
ここでずっと黙っていた蒼司がすかさず異議を唱えた。そりゃそうだろ。その奴らの情報だってデマかもしれないし、易々とアキトの技術を敵である超人に施したりしたら悪用されかねない。
俺も今の所は蒼司側の意見だ。
「今回ここに無理矢理侵入して来て、兄さんを危険に晒した犯人ですよ!そんな虫の良い話許せません!」
「そう言うよね。でも私も彼を上手く利用出来ないかと思ってね。スズが本当の事を言っているのかどうかは分からない。信じるのも信じないのも私達次第だ。ただ、彼の超人としての能力は使えるだろう?もし、裏切りでもしたらその時は然るべき処分をするつもりだよ」
「スズの能力って何なんだ?」
「怪力だよ。通常の人間よりも桁違いの力の持ち主だ。あの武器を見た時そっち系かとは思っていたけど、これは使えるなぁって思ってね」
「怪力……」
確かに、パワー系の能力を持つ超人は俺らの中にはいない。一見レオがそうなんじゃって思うけど、レオの力自体は大きく育った体と、元々持っていた才能で、トレーニングなどで培った物だ。ここに来たばかりのレオは俺よりも小さくて、それはそれは貧弱な体をしていたものだ。
ちなみにレオの能力は「生命力」だ。通常の人間よりも生命力が高く、ちょっとやそっとの事では倒れたりしないんだ。さっきみたいに故意に気絶させられたりはしても、生命に関わる程ではない。アキトの施術を受けてからは更に力を増して、ほぼ無敵状態だ。だからレオは強いんだ。
「パワーならレオで十分でしょう。彼は見るからに打たれ弱い。いくら力が強くてもそんなの諸刃の剣です」
「蒼司は相変わらず厳しいね~。レオと組ませたら面白いコンビになると思うんだけどね~。もう少し力をつけたらルカとも相性いいかもね♪」
「俺は組みませんよ絶対に」
「やれやれ。ウルは組んでみたいと思う?実際彼の戦う所見たよね?」
「見たけど……確かに、アキトが力を貸してやったらもっと強くなるとは思うし、一緒に組んだら心強いとは思う。でも蒼司の言う通り研究所をぶっ壊して侵入して来た訳だし、奴らの仲間ってのも気にする奴も多いんじゃねぇか?」
「そこは彼に頑張ってもらうよ。本当に仲間になりたいのならそれなりに働いて貰って信頼を得るしかないからね」
嫌がる蒼司に苦笑いのアキト。
アキトは周りに厳しいようで結構考えていたりもする。だから俺は何か考えがあるのかと思って蒼司程は反対はしなかった。
それに、もしスズが俺達と同じように動くようになったらもっと接する機会が増える筈だ。その時に奴らの事を聞けるかもしれないからな。
アキトがスズの記憶を消さなければの話だけど。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる