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一章
18.三日振りの運動
しおりを挟む次の日、俺はアースに朝早くに起こしてもらってレオとの試合の準備をした。
レオとの約束は9時だったけど、6時に起こしてもらった。
まず、朝食を取って、それから第一訓練場へ行き準備運動を始める。二日間も何もしていなかったから体力も大分落ちてるだろう。
訓練場はいくつかあって、ここはその一つだ。
中でも一番広くて、良く使われる場所だ。研究室の奥にあった訓練場よりはるかに広い。
名前の通り、訓練の名の付くものなら何でも出来る場所で、俺とアースはここを良く使っている。
コンクリートの床に広い天井。もちろん防音になっているからどんなに暴れて騒いでも大丈夫。
それと、ここの訓練場には二階部分に見学出来るギャラリー席があり、アキトとか野々山とかいろんな研究員達がそこで見てる事がある。
「アース、俺体が重いんだけど」
「二日間食べてばかりいたのか?」
「いや、普通に食べてただけ。まぁいいか。今日は感覚取り戻すだけでも」
手始めに、軽く地面を蹴って壁まで跳んで、その壁を走ってみる。
これはかなりのスピードがないと出来ないんだけど、数メートル進んだだけで限界だった。
え、俺こんなだったっけ?もしかして太った?
「あはは!ウルどうしたんだよ~!らしくねぇな」
「ヤバい。ダイエット必要かも」
「それじゃレオに勝てねぇぞ」
アースは楽しそうに笑っていた。
そして俺を真似するかのようにシュッと跳んで、俺と同じように壁を走り出した。
うん。いつものアースだ。どこまでも綺麗に走って行くアース。スピードが落ちたとか言ってたけど、さっきの俺からしたら十分速いだろ。
訓練場の壁を一周して戻って来たアースは当然の事だが、息を切らす事なく綺麗に着地してドヤ顔して見せた。
「いやー、俺も体重いわ!遅過ぎて驚いたわ!」
「嫌味かよ」
「まぁまぁ、ウルはまだ若いんだし、すぐに出来るようになるって」
「だといいけどっ!」
今度は二階のギャラリー席までジャンプして行こうと高く跳ぶけど、あと少しの所で体が重力に負けて床に戻されてしまった。
三日前だったらこんなの余裕だったのに、少し悔しかった。
その後もアースと準備運動をしていると、アキトが訓練場に入って来た。俺達の様子を見に来たんだろう。
「おはようウルー♡少しこっちへおいでー♡」
大きな声で呼ばれたから俺は中断して入り口の所にいるアキトに近寄る。
昨日と格好が変わっていた。今日はグレーのロンTに、黒のスキニーと言うアキトにしては珍しいラフな格好をしていた。
この研究所には至る所に仮眠室がある。仮眠室と言ってもアキトが使うのは自分専用の仮眠室だ。つまり自分の部屋って事。
「はよ、アキト。何の用?」
「今日3人で模擬戦やるんだろ?私のウルが活躍するんだもん見に来たに決まってるだろー♡」
「残念だけど、俺活躍出来なそう」
「どうしてだい?久しぶりに好きに動いていいんだよ?」
「何か鈍っちまったみてぇで、すげぇ重いんだ」
「それは仕方ないよ。怪我だけはしないように楽しんだらいいよ」
ニッコリ笑って言うアキト。
レオ相手に怪我せずに終われる気がしねぇけど、模擬戦だし深く考えずにやるか。
「そうそう。今日はみんなも呼んだんだ~♪勉強にもなると思って♪」
「みんな?」
アキトが言うと、また誰かが訓練場に入って来た。それは蒼司だった。そして相棒のサクラを連れていないのはいつもの事。
白のカットソーに青いカーディガンを羽織っていた。下はダボっとした黒のワイドパンツにサンダル。
アキトもだけど、この二人は背も高くてスタイルが良いから何を着ても似合う。
蒼司は俺を見てニコッと笑った。
「おはよう兄さん。聞いたよ。馬鹿猫をやっつけるんだろ?頑張ってね」
「え、蒼司……ちょ、みんなってもしかして?」
「もちろんルカとゼロも来るよ~♪私が召集かけたからね」
「はぁ!?」
ニヤリと笑うアキト。
なんつー事しやがんだ!アキトが言う事は絶対だから来るに決まってる!ただの模擬戦だぞ!職権乱用じゃねぇか!
「お、おい、ゼロはともかく、ルカは学校だろ?こんな遊びに付き合わせるなって!」
「学校より大事な事もあるんだよ。さて私達は上に行って見てようか♪」
アキトと蒼司は階段を使って上のギャラリー席へ向かった。
うわー、よりによってあの二人も来るのかよ……
ルカは四番目、ゼロは五番目の超人だ。
ルカはまだ11歳の子供で、俺達超人の中では最年少だ。超人としての特殊な能力を持っていて、俺が思うに一番面白い戦い方をするんだ。主に役目はサポートで戦闘力は高く無いが、まだまだ成長しているからこれからに期待だ。
ゼロは16歳だったかな?学校には行ってなかったはず。五番目の超人になってからまだ半年ぐらいしか経ってない新人だけど、かなりの戦闘狂で、レオと似ていて敵と戦うのを楽しんでいる所がある。
どちらも蒼司やレオとは違った後輩だから下手な所は見せたくないのが本音だ。
あー、本調子になるまで待つべきだったか……
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