17 / 44
一章
17.賑やかな食卓
しおりを挟む「ウルー!すき焼き食いに来たぜー♡」
「失礼します」
うるさいのが来た来た。
俺とアースだけで静かだった部屋が一気に賑やかになった。
食卓には既にアースが作ったすき焼きが用意されていて、いつでも食事が出来るようになっていた。
またまたタンクトップとハーフパンツ姿のレオ。絶対それで寝てただろって思うぐらいシワシワだった。相変わらずの逆立った金色の髪には黒のカチューシャをしていた。
そしてそんないつも通りのレオの後ろから顔を出したのは俺のよく知るウィルだった。
何も変わらない、いつもの物腰の柔らかそうな好青年が笑顔でそこにいた。
「ウィル。復活おめでと」
「ありがとうございます。ウルさん、レオのお世話ありがとうございました」
深々と頭を下げて礼を言ってくるウィル。相変わらずしっかりしてんなー。
主人であるレオはお構いなしに部屋に入って来てテーブルの上のすき焼きの蓋を開けて眺めていた。
そしてキッチンから出て来たアースは二人を見て笑って言った。
「レオにウィル。昨日は自分が不甲斐ないばかりに迷惑を掛けてすまなかった。ウルを守ってくれて本当にありがとう」
「おっアス!って、何か逞しくなってね!?」
「アース、迷惑だなんて。気にしないで下さい。私なんて実戦経験も無いのに出しゃばったから、危うく真っ二つになる所でしたから」
「いや、ウィルのお陰でウルが無事だったんだ。二人には感謝してる。だから今日は楽しんでくれよな♪」
「おいおい!俺が一番活躍したんだけどー?」
「レオうるさい。唾が入るからそこで喋るな」
俺がレオを引っ張ってすき焼きが入った鍋から遠ざけると、アースとウィルが笑った。
とりあえずまた四人顔合わせられたし、そろそろ食ってもいいよな?
「アース!米!卵!」
「はいはい。レオも卵使うか?」
「勿論♪ウィル!ご飯~!」
俺とレオは対面して座り、甘える子供みたいに椅子に座って二人が動くのを見ていた。
アースとウィルは俺達の世話をした後、それぞれの主人の隣に座った。
そして俺は自分で好きな食材を取り、レオはウィルに取り分けてもらいながら食べ始める。
こんなに賑やかな食卓は無いから少し変な気分だったけど、悪く無いなと思った。
「うまー♡なぁウィル、肉もっと~」
「肉と野菜、バランス良く食べないとダメです。さあ、コレを食べたら次はお肉を取ってあげますから」
「野菜ばっかじゃん!」
「レオは我儘だな。肉ならまだあるし、ちゃんと食えって」
レオは既にレトルトのご飯を5杯分もおかわりしていた。俺からしたら信じられない光景だったけど、こんなけ体がデカいから食う量も多いのか。
「そういやレオ、訓練室にいたって聞いたけど、何かしたのか?」
「ん?ああ、何かテストさせられた」
俺がアースから聞いて気になっていた事を聞くと、レオは思い出したように話し始めた。
「何のテストかは知らねぇけど、いつものやるような模擬戦をやったよ。あと、いろいろ質問されたー」
「レオの実力をテストしたかったみたいですよ」
ウィルが付け加えるように話し始めた。
確かにレオはどんどん強くなっている。俺達の中でもずば抜けているのは誰から見ても一目瞭然だ。
二人の話を聞いてアースに確認してみる。
「アース、俺もテストするのか?」
「いや、予定はねぇよ」
「アキトさんはレオの強さが気になっているようです。私にもレオの私生活を事細かく聞いて来ました」
「そうだったのか!?」
「まぁレオは殆ど寝ていますけど、私がいない間はどうでしたか?ウルさんの護衛を任されていたようでしたが」
「いつも通りだったぜ。蒼司が合流したけど、相変わらず言い負かされてたな」
「そうだ蒼司!アイツってば何でいつもああかな!?俺何かしたか~?」
「ウルに懐いてるから嫌なんじゃないか?ほら、ウルと初め仲良かったのって蒼司だったし」
アースが言うと、ブーブー不貞腐れた顔をするレオ。
こればかりは仕方ない事だ。
最初にここに来たのは蒼司でそれから何年かしてからレオが来た。
蒼司は俺とアキト以外にはみんなにそうだから気にしないでいればいいのにと思う。口では勝てる訳ないのにいちいち反抗するから負けるんだ。
「そうだ、レオ明日暇か?」
「え♡もちろん暇だけど♡」
俺が聞くと、不貞腐れた顔を嬉しそうな笑顔に変えて即答した。
二日間動いて無かったから、リハビリも兼ねてアースと模擬戦やろうと思ってたんだけど、どうせならレオも混ぜてやったら面白いかなって。
「んじゃ明日9時に第一訓練場に集合な」
「訓練場!なになに~?遊んでくれんのか!?」
レオはとても嬉しそうに目を輝かせていた。
正直、俺はレオに勝てない。だからこそ良い練習相手になるんだ。アースの新しい動きも見てみたいし、レオは丁度良かった。
「明日アースと模擬戦やろうと思ってたんだけど、レオ協力してくれよ」
「するー!ウィル、明日はアキトに呼び出されてねぇよな?」
「ええ。今の所は」
「今の俺ならレオに勝てるかもな」
「アスってば言うね~♪」
「今日アースの耐久性を上げたんだ。起動実験見てたけど、かっこよかったぞ」
「あ、だから体が逞しくなったのか?」
そう言ってアースに触ろうとテーブルを乗り出して腕を伸ばすレオ。それを行儀悪いと叱るウィル。
レオに勝てなくても良い経験にはなるだろう。
俺は明日第一訓練場を使う事をアキトに伝える為、アースに頼んでおいた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ベル・エポック
しんたろう
SF
この作品は自然界でこれからの自分のいい進歩の理想を考えてみました。
これからこの理想、目指してほしいですね。これから個人的通してほしい法案とかもです。
21世紀でこれからにも負けていないよさのある時代を考えてみました。
負けたほうの仕事しかない人とか奥さんもいない人の人生の人もいるから、
そうゆう人でも幸せになれる社会を考えました。
力学や科学の進歩でもない、
人間的に素晴らしい文化の、障害者とかもいない、
僕の考える、人間の要項を満たしたこれからの時代をテーマに、
負の事がない、僕の考えた21世紀やこれからの個人的に目指したい素晴らしい時代の現実でできると思う想像の理想の日常です。
約束のグリーンランドは競争も格差もない人間の向いている世界の理想。
21世紀民主ルネサンス作品とか(笑)
もうありませんがおためし投稿版のサイトで小泉総理か福田総理の頃のだいぶん前に書いた作品ですが、修正でリメイク版です。保存もかねて載せました。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く
オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。
しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。
農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ!
※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる