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一章
10.消された「奴ら」の記憶
しおりを挟むレオと蒼司と廊下を歩く。
俺とレオの相棒は今研究室だけど、蒼司の相棒、人造人間もここにはいなかった。
理由は大体知ってるから敢えて聞かない。
きっと蒼司の部屋で寝かされてるか、雑用をやらされてるんだろう。それか昨日護衛で付いてった時にウィルみたいに負傷して研究室にいるかだ。
蒼司は自分の相棒にも心を開いていないんだ。基本的に俺達は監視の意味も込めて相棒である人造人間と行動するように言い付けられているけど、蒼司は平気で無視する。これには蒼司の実力や信頼もあってアキトは目を瞑っているらしい。
これがレオだったら怒られて強制的にウィルを操作されるだろう。レオは一人だと戦う以外は何も出来ないからウィルをどこかに置いて行くなんてしないけどな。
「兄さんはこれからどこへ行くんだ?」
「アキトんとこ。アースの様子も見にな」
「俺はウィル!だから用の無い蒼司は来る必要ないぜ~」
「それなら俺が兄さんの護衛をしよう」
まるでレオの言う事が聞こえていないかのように蒼司が言う。
俺は何でもいいけど、レオがうるさくなるなぁ。
「ウルの護衛は今俺が任されてんだ。アスが戻るまでな」
「それは俺がいなかったからだろ?今は俺がいるから問題無い。お前は部屋で寝てろ」
「だぁー!なんっで蒼司はそうなんだっ!アキトが言ったんだから絶対なんだよ!」
「臨機応変って言葉を知らないのか?これだから馬鹿は。ルカと一緒に学校へ行ったらどうだ?」
「蒼司、その辺にしといてやれって。三人で行こうぜ~」
いつもの二人のやり取りに付き合うのも疲れるからほぼシカトして筒型のエレベーターに乗り込む。研究室まではしばらくかかるな。
ここで少し気になっていた事を蒼司に聞いてみた。それは昨日の出掛けたアキトの事。
「蒼司、昨日はどうだったんだ?アキトまで出てったって事はとうとうボスが出て来たのか?」
「いや、あれは囮だった。一度目の襲撃で逃げて行った奴を追ったんだけど、そこにはいつもの雑魚しかいなかった。奴らの本当の狙いは二度目の襲撃を成功させる為だったらしいな」
「一度目?ん?昨日俺達しかいなかった時のアレが一度目じゃねぇのか?」
「あれは二度目だ。ああ、兄さんは暴走して記憶を消されたのか」
これには驚いた。てかレオもアースもウィルもそんな事言って無かったぞ!
アースやウィルが教えなかったって事はアキトは俺に知られたくなかったから二人からデータを消したんだろ。
じゃあレオは?そもそも知らなかった?
俺はレオを見て問い掛ける。
「レオ、知ってたか?」
「ごめん。俺、寝てた」
えへへと子供がイタズラをしてそれが見つかった時みたいに笑うレオ。まぁレオらしいか。
「俺ずっと寝てて、一回起きた時何か騒がしくてウィルに聞いたんだけど、ウルが暴走して研究室に連れてかれたって聞いたんだ。理由は知らないみたいでさ、そんですぐ行こうとしたんだけど、止められたからウルが目覚めたら起こしてって言ってまた寝てた」
「寝てばかりじゃないか」
「夜は寝るもんだろ!」
「なるほどな。でもレオがいて助かったよ」
「だろー♡俺って役に立つ~♡」
「…………」
実際レオが残っててくれなかったら俺は斧男に殺されていたか反撃していて副作用で死んでいたかもしれないからな。
正直、死ぬ事は怖くない。
今まで散々死を目の当たりにして来たし、自分にもそれぐらいのリスクはあるって事は自覚している。
だからいつでもその覚悟は出来ている。
他の人造人間もそうだと思う。
俺が感謝を伝えるとレオが嬉しそうにしていた。それを見て不機嫌そうに顔を歪ませる蒼司。
「蒼司もいつもアキトの護衛お疲れ。俺も復帰したら参戦するからよ」
「兄さんは無理しちゃダメだ。俺が頑張る」
「そうだぞウルー。お前はすぐ暴走するんだからぁ」
「はは、何で暴走しちまうんだろうな。いつも直前の記憶がねぇから分からねぇや」
俺は暴走した時の自分がどうなるのか知らない。記憶が無いからだ。あったとしても暴走するって言うぐらいだから覚えてるかも曖昧だけどな。
レオは俺の肩を叩いて一緒に笑っていたけど、蒼司は深刻そうな顔をしていた。
「兄さんは奴らと戦っちゃダメだ」
「暴走するからだろ~」
「それもある。兄さんは奴らと会った記憶は無いんだよね?」
「無い。あー、昨日の奴なら覚えてるぜ。黒いマスクの斧男だろ……!」
そうか。俺は暴走する度に記憶を消されて奴らの事も覚えていないけど、もしかしたら暴走した時に斧男みたいな奴らもいたかもしれなかったのか。
て事は敵は武装した人間やヒューボット以外にも襲撃して来ていたのかもしれないんだ。
暴走さえしなきゃ覚えてられるのに……
どうにかして暴走を止められないか。
いや、そもそも何故暴走するのか、何が原因なのかも分からないのに、止められる訳も無い。
戦うのを辞める?そんなの超人としてここにいる意味が無くなる。
はぁ、考えるだけ無駄か。
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