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一章
5.アングリーライオン
しおりを挟む俺達超人は、普通の人間よりも優れた能力を持っているが、ここの研究所ではその能力を更に引き上げる研究をしている。
その処置をされた超人は固有の色のオーラを纏う事で、限界を更に越えた能力を発揮する事が出来る。更に瞳の色も普段より輝き変化する。
赤いオーラを纏ったレオは唸りながら斧男に向かって走り出した。
斧男は持っていた大きな斧を構えてレオに向ける。
「うおおおおお!!」
「ぐっ!!」
レオは斧の先端に触れる寸前で飛び上がり、宙でクルクルと回転して大きな斧を足場にし、斧男に思い切り殴りかかった。
バランスを崩した斧男は後ろによろけながらも体勢を立て直して再び斧を構えた。
レオの拳を喰らって倒れねぇなんて、こいつ只者じゃねぇな。それに俺達の事も知ってるし。まさか超人か?
「凶暴な猫ちゃんだなぁ!まさかアングリーライオンがいるなんて想定外で僕ってばピンチだなぁ!」
「うるせぇ!!ウルに手ぇ出すんじゃねぇ!!」
レオの攻撃は止まらない。速度はそんなに速くは無いが、一撃が重いんだ。多分相手も同じタイプだ。大きな斧は頑丈に出来た床を壊してしまう程の破壊力を持っているが、重さのせいでスピードが無い分次の動きが読めてしまう。これは動体視力の良いレオの優勢だった。
レオは止まる事なく斧男に向かって行った。
振り上げた斧の下を颯爽と走り、斧男の懐に入るとそのまま次の拳を男の腹に喰らわせた。
「ガハッ!」
これには斧男も立っていられなかったようで、その場に膝を付いてうずくまった。斧男はマスク越しでも分かるぐらい苦しそうだった。
レオは強い。基本的に俺達はチームで動く事が多いが、パワーとスタミナのあるレオは一人でも十分戦えるぐらい強かった。
「くっ……こりゃ参ったな」
「グルル……」
レオは膝を付いてる斧男を見下ろして様子を見ていた。レオの奴、楽しんでやがるな。強いんだが止めを刺さずに遊ぶ癖があるのが弱点だった。
それを良い事に斧男は誰かと連絡を取り、話し始めた。相手の声は聞こえなかった。
「おい!アングリーライオンがいるなんて聞いてないぞ!僕死にそうなんだけど!……ああ!?知るかそんなの!とにかく一旦引くからな!」
「レオ!逃すな!」
会話の内容からして斧男は逃げるつもりらしい。俺がレオに指示すると、レオの赤い瞳が再び赤く光った。
斧男は斧を振り回してレオから数歩下がり間合いを取った。レオは近距離向けだからなるべく距離は取らない方がいいんだが……
「へへ、ちょっと不利みたいなんで僕帰らせてもらうね~!また遊ぼうよ猫ちゃん!」
「逃がさねぇ!」
大きな斧を振りかざした斧男は思い切りレオに向けて斧を投げ付けた。これは予想にしていなかった。レオは読んでいたのか自分に向かって来た斧をひょいっと避けてそいつに向かって走り出した。
あんな大きな斧をあの小柄な体で軽々と扱うなんて、一体何者なんだ?超人だったとしても奴らの中にこんな奴がいたのか?
レオが斧男に到達すると同時に避けた斧の動きがおかしい事に気付いた。
それに気付いたのは俺よりもウィルの方が早かった。
「レオ!危ない!」
「!」
ウィルの声にレオの動きが一瞬止まる。が、レオはそのまま斧男に喰らい付いた。
「グルルッ」
「ギャア!何しやがる!離せ!」
大きな斧はグルングルンと大きく回転して方向を変えて再びレオに向かった。まるで巨大なブーメランの様に。
このままではレオに当たる。今動けるのは俺しかいない。副作用の事もあるが、今はレオの援護をしなくちゃと駆け出そうと思った時、ウィルがレオと斧の間に入ってそのまま斧を喰らった。
レオが斧男から顔を離してウィルを見た。
「ウィル!お前!」
「レオ、しばらくサヨナラですね……ウルさん、レオ、……頼ミ……マ……」
斧はウィルの腹部に食い込んで止まった。ウィルの腹部から中の配線などが飛び出して断線した部分がショートしてバチバチと火花が散った。
その後、ウィルの動きが停止し瞳の光が消えた。
「ウガァアアアア!!!!」
レオの雄叫びが響き渡る。落ちてる天井などの欠片が振動で動いていた。
レオは斧男に頭突きして、更に頬を殴った。さすがに斧男は倒れて気を失っていたが、レオは跨り殴るのを止めなかった。
「レオ!そいつはもう気を失ってるぞ!」
「うるせぇ!!」
俺の声も分からないのか、レオが斧男を殴る音が響いていた。
『ウルくーん!無事ー?』
「あ?野々山?無事だけど、レオが止まらねーんだ。それとウィルが……」
首元から声がして、野々山に目の前で起きた事を話した。
『レオくんは大丈夫!今アキトがそっち行ったから!』
「アキトが?」
アキトが帰って来たのか。もう少し早ければウィルが壊れなくて済んだかもしれねぇな。
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『そっか。なんにせよ、君が無事でなりよりだ』
野々山と会話をしながらレオを見ると、動かない斧男に跨ったままボーッとしていた。
やっと止まったか。
俺は近付いて肩を叩くと、いつものレオだった。
「ウル……」
「お疲れ。良くやったな」
そう声を掛けると泣きそうな顔をして抱き付いて来た。俺はそのまま受け止めて背中をポンポンと優しく叩いてあげた。
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