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一章
4.侵入者の斧男
しおりを挟む館内に響き渡る警報は、この建物内で異常が発生した時になる。主に登録されていない侵入者が入って来た時や、建物のどこかが崩れて崩壊した時。きっと俺が暴走した時も鳴ったと思う。覚えてねぇけど。
しまった。警報が鳴るとエレベーターは使えなくなるんだった。
「なんだぁ?どっか壊れたか?」
「…………」
『ウルくん!聞こえるかい?』
「あ」
俺の付けてる首輪から野々山の声がした。
『そこにレオくんもいるんだろ?二人共動かないでそこにいてくれ!』
「なぁ何があったんだ?」
『どうやらアキトが居ないのを狙って奴らが侵入して来たらしいんだ。アキトには連絡したけど、応答無し。とにかく君達はそこで……』
「なぁ野々山!奴らが侵入ってどこにだ!?」
野々山が言い終わらない内にレオが俺の首元に向かって喋った。こいつまさか行く気か?
奴らとは俺達Liveと長年いがみ合って戦い続けている相手の事で、他の研究所の事だ。何で奴らと戦っているかは俺は知らない。
奴らは何度でもこちらに襲撃して来ては敗れている。武装した普通の人間がほとんどで、最近では戦闘型ヒューボットもいる。ただの武装した人間やヒューボット相手なら俺達超人の有利なんだが、それでも奴らは何度でも来る。
『その声はレオくんか。まだ上の方だよ。下には入って来れないように全てのエレベーターや階段は使えなくしたから。何度も言うけど君達は……』
「なぁんだぁ!封鎖したのかよぉ!俺が追い払ってやろうと思ったのに!」
『場合によっては頼むかもしれない。みんなアキトと行っちゃったから戦力は君しか居ないからね。とにかく今はアキトからの連絡を待つんだ。それと、レオくん!ウルくんから離れないで、何かあったら守ってあげてね!』
「任せとけって!そんじゃ良い連絡待ってるぜ~」
なるほどな。だからレオとしか会わなかったのか。この研究所にいる超人は、俺が知ってるだけで五人いる。その内の二人は俺とレオだ。後の三人は出掛けたアキトの護衛か何かで出払ってるらしい。
一応戦闘用のヒューボットもいる。今はそれが応戦してるんだろう。
「せめて部屋で待機したかったぜ」
「ウルはもし連絡来ても行っちゃダメだぜ。暴走して脳をいじられたんだろ?しばらくは激しい運動は出来ないからな」
「あ、そっか」
アースに指摘されて思い出した。
そうだった。俺はさっき脳をいじられたばかりだから当分は大人しくしてなきゃいけねーんだ。
過去にうちの研究所じゃねぇけど、アキトの知り合いの研究所で脳をいじられたばかりですぐに戦闘を始めたら途中でいきなり倒れてそのまま亡くなった事例があったらしい。
それからはそういった副作用が出る可能性があるので、うちの研究所でもどんな奴でも四十八時間は大人しくしていなければいけないルールが出来た。
「えー!ウルってばまたいじられたのかぁ?ホント何したんだよー」
「そんなの俺が知りてーよ。第三で何かあったらしい」
「さっきも第三研究室に行きたがってたな。でもあそこって普段使わないとこだろ?狭いし暗いし、何か奥の方にあって行くの面倒だし。そんなとこで何してたんだよ?」
「だから俺もそれを知りてーんだよ。もうお前黙ってろよ」
「ウルはすぐ暴れるからいじられるんだぞ!もう少し大人しくしてりゃいいのに」
「お前に言われたくねぇよ!」
「これでも心配してんだ!一歩間違えたら死ぬかもしれねぇんだぞ」
「…………」
そんな事言われなくても分かってる。
脳をいじって記憶などを操作する事は簡単に出来るものじゃないらしく、それも成功する確率は数十%だ。たとえその時成功したとしてもその後に後遺症などで失敗になる事もある。
そんな処置を俺は毎回されているんだ。
「俺からも頼むぜウル。お前がいなくなったら俺はスクラップだ」
「アース……分かったよ」
「よし!良い子だウル!」
「テメェ調子に乗んな。俺より年下だろうが」
レオがポンポンと頭を撫でて来やがるからパシッと払って俺は歩き出す。
ここにいても仕方ねぇからな。さっきの食堂の椅子にでも座ってよう。
「あ、ウルあぶねーから離れんなっ……?」
レオが追い掛けて来ようと俺に声を掛けた瞬間、大きな地震が起こった。それはしばらく続いて、立っているのもやっとだった。
上で行われている戦闘の影響か……
割と近くまで来てるみてーだな。
「やべ!おいウル!こっちに来い!」
「チッ」
仕方ねぇから戻ろうと振り返った時、天井が崩れて俺の目の前に瓦礫と共に何かが降って来た。
「ウル!」
真っ先にアースが動いた。
瓦礫と共に落ちて来た何かを避けて俺に近付こうとしたが、その何かは人型をしていて、そいつは持っていた武器を振ってアースを弾いてレオ達の所まで吹っ飛ばした。
「アース!!」
「……みーつけた♪」
「は?何だテメェ」
そいつは顔の半分を覆う黒いマスクをしていて顔は分からなかったが声で男だと分かった。
小柄で軽装備だが、手に持っている道具と言うか武器はそいつの背丈ぐらいあるデカい斧で、一瞬でさっきの地震はこいつの仕業だと分かった。
そいつは俺を見て持っていた斧を向けて来た。
俺を探してただと?目的は俺なのか?
「ウルに近付くんじゃねぇ!クソ野郎!」
「レオ!気を付けろ!」
今戦えるのはレオだけだ。アースも一応戦闘タイプだが、さっき吹っ飛ばされてまだ床に寝転んだままだ。すぐに起き上がらないのを見ると、どこかを打って機能停止したかもな。あんな武器が当たったんだ、当然か。
ウィルは完全にレオの世話役として作られたから戦闘は全く出来ない。
……まぁレオには自分を守ってくれるような人造人間なんて必要ないけどな。
「うおおおおおおおお!!」
「!」
レオが叫ぶと体に赤いオーラが纏い始めた。同時に周りの壁や窓がガタガタ揺れ始める。
そしてレオの瞳の色が緑から赤に変わり真っ直ぐにそいつを睨んだ。
「グルルルル……」
「へー、アングリーライオンか。こりゃ厄介だな」
「!」
こいつ今レオの通り名を言ったか?
何で知ってやがる?
一体何者なんだ?
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