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一章
3.レオとウィリアム
しおりを挟む俺はアースを連れてエレベーターを使い、再び上の階層まで上り、食堂まで来た。案の定すれ違う人は居なくて、研究所内はガランとしていた。
「随分と静かだな。夜勤の奴らもいねーのか?」
「みたいだな。アキトも外出中だって」
「相変わらず忙しい人だな」
「さぁ着いたぞ。何食おうかなー♪」
食堂は研究所に何ヶ所かあるけど、今回は早く食いたかったから一番近い小さな所に来た。他と比べてメニューも少な目だ。
俺はラーメンと半チャーハンのセットを選んだ。
ここは小さいからこの時間はヒューボットのみが働いている。
ヒューボットからラーメン半チャーハンセットを受け取りすぐ近くのテーブルに座る。勿論人造人間であるアースは飲み食いはしない。あくまでもロボットだ。エネルギー源は電気。
アースは大容量のバッテリーを搭載しているから一ヶ月は充電しなくても普通に動く。
ラーメンを食いながらアースを見ると、俺に気付いてニコッと笑った。
「ウル、美味いか?」
「美味い」
ウルって言うのは俺のメインの名前だ。「狼くん」「破壊神」俺の通り名である「デストロイウルフ」など色々な呼ばれ方をするけど、ウルが一番多いな。アキトが呼んでるからみんなも呼んでるんだけど。だからアースにもそう呼ぶよう設定した。
「アースも食えたらいいのにな」
「ほんとそれなー。アキトに言って出来るようにしてもらえねーかな。食った物はエネルギーに変換!エコじゃね?」
「出来たらとっくにやってるだろ」
「だよな~」
アースと話しながら飯を食ってると、騒がしい奴らが入って来た。
「やっぱりここだ!ほらな当たっただろ?」
「さすがレオです。食堂と聞いて真っ先にここだと思い付くとは。伊達にウルさんのストーカーやってませんね」
大きな声で近寄ってくるのは金髪のレオとレオの相棒の人造人間、ウィリアムの二人だった。
レオは俺と同じく超人で、陽気な性格で派手好き。大人しくしているのが苦手でいつもうるさい。筋肉多めでガタイがいい。金色の髪はいつもワックスか何かで逆立ててる。そして一年中薄着だ。今なんかは黒のタンクトップに白のハーフパンツと言う、とてもラフな格好をしていた。瞳の色は緑だ。
付き人のウィルは、反対に冷静沈着で、見た目も頭の良さそうな好青年。突っ走りがちなレオを上手く操っていると思う。ライトブラウンの髪は短くカットされていて爽やかで清潔感があった。
一見意外な組み合わせだが、ウィルのカスタムはアキトがしたらしい。レオは俺の事を気に入っていて、俺と全く同じにカスタムしようとしたら却下されたんだって。
「ウルー!心配したぜ?また暴走したんだろ?何で俺を呼んでくれなかったんだよぉ」
「うるせぇな。食事中だ」
「一緒に暴れたかったぜ~。おいアス!今度はちゃんと呼んでくれよな!」
「アース、スルーしろ」
「へいへい」
「ウルさん、こんなレオですが、今回もかなり心配されていたのですよ。話を聞いてすぐに飛び出そうとしたレオを止めるの大変だったんですから」
「なぁ、レオ。今回俺が暴走した理由知ってるか?」
「へ?さぁ?そん時俺とウィルは部屋に居たから」
「お力になれず申し訳ありません」
二人も知らないのか。知ってても俺には教えないように言われるか改ざんされるかだろうな。
「気にするな。大して知りたい訳でもねぇから。それよりもお前って本当夜行性だな。誰ともすれ違わなかったのに」
「普通に寝てたぜ?でもウィルにウルが復活したらすぐに教えるように言ってあったからこうして飛んで来れたって訳よ♡」
「そうかよ。暇人め」
俺に抱き付いて戯れてくる相変わらずなレオにうんざりしてると、食べ終わった食器をアースが片付けてくれた。
人造人間達は本当に優秀だ。見た目こそ人間と変わらないのに、言った事をキチンと守るしやり遂げる。ただしその忠誠心はその相棒である主人にだけで、他が命令しても聞けないようになっている。悪用されるのを防ぐ為だ。
今は俺が言わなくてもアースが動いたが、これは今まで一緒に過ごして俺の行動や言動など、特徴を細かくデータに残して自然とそれに見合った振る舞いが出来るように作られているんだ。
まぁアース達は新型だから出来るんだけど。
「ふぅ、腹ごしらえも済んだし、アース!第三研究室行くぞー」
「第三?何であんなとこに?」
レオは俺が暴走した場所も分かってない様子だな。
俺がその場所を口にするとアースだけじゃなく、ウィルまで何かを受信したように機械的な反応をした。
「ウル、悪いがそこにはしばらく近寄れねぇわ」
「申し訳ありません。私からもお勧めは出来ません」
「……ふーん。分かったよ。んじゃ部屋に戻って寝るか」
こう言う時はあまりしつこく言わないようにしてる。アースやウィルを作ったのはここのボスのアキトだ。勿論アースやウィルを通して俺やレオの行動や言動はアキトにも筒抜けだ。
俺達に付く人造人間は、良き相棒でもあり、世話役でもあり、監視役でもある。
ちなみに野々山に付けられたこの黒い首輪にも盗聴器ぐらいは付いてるだろ。
だから今はあまり派手には動けないって訳だ。
そんな事したらまたさっきの研究室行きだからな。
「よーし!俺達も行くぞウィルー!」
「お前話し聞いてたか?俺は戻って寝るんだよ。付いて来んな」
「俺も一緒に寝るぞー!」
「自分の部屋で寝ろ!」
「ウルと寝る!」
「テメェしつけぇぞ!てかお前出禁食らってんだろ」
「まぁまぁ、二人共喧嘩すんなって」
「そうですよ。またアキトさんに怒られますよ」
二人が呆れてるのが分かり、俺はレオを置いて食堂を出た。
レオはいつも俺に付いて来る。ガキの頃からずっとだ。
レオは三番目にここに来た超人だ。
俺の後に二番目がいて、それからしばらくしてからやって来た。その頃からずっと俺に懐いていて、何かと後を付いて来る。
歳も近い事もあって接しやすいんだが、うるさいのが難点だ。まぁ弟みたいで悪くねぇけど。
当たり前のようにレオが俺を追い掛けて来て、四人がエレベーターの前に着いた時、館内に警報が鳴った。
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