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9章
くそー!せっかく良い手だと思ったのに!
しおりを挟む家に帰って来た時まだ昼前で、真っ直ぐに部屋に向かいそのままベッドに倒れ込む。
なんか、なんもする気起きねぇ。
家に着くまでにスマホが何回か鳴ってたけど、一切見る事はなかった。
伊織にはかっこよく言ってそのまま帰って来たけど、本当は抱き付いて離れるなって言いたかった。そんで今までずっと俺の首にぶら下がってた指輪も、返してって言いたかった。
何が階段登ってるだ。何が俺は俺のしたいようにするだ。
何がみんなから愛されてるだ!
今こうして一人で泣いてる癖に、強がってんじゃねぇよ俺。
くそー、鼻水まで出て来やがった。
てか寒ぃんだよちくしょー。
エアコンのリモコンを探すけど、机の上のパソコンの横にあって、それを取りに行くのも面倒だった。
何もしたくない。そもそも今日はずっと寝てる予定だったんだ。もう寝ちまおうか。そんで全部忘れて、朝になって空に起こされる。
空……とてもじゃねぇけど、こんなんじゃ会えねぇよ。
俺はティッシュで鼻をかみながら、気怠い体を動かしてエアコンのリモコンを取る。
冬休みももう終わりかー。みんなといっぱい遊んだなー。じぃちゃんとばぁちゃんにも会ったなー。お年玉思ったよりもくれたな。ゲームもいっぱいやったし、夜更かし最高だったなー。
でもさ、伊織との冬休みの思い出は今日のあれだけなんだよな。たった数時間だけ。それがまた寂しくて……
あー!ダメだ!昨日全然眠れてねぇのに眠くねぇ!しかも今寝たら変な時間に起きて明日ヤバいだろ!始業式で寝ちまって学年主任に怒られてるパターンじゃん!
こうなったら無理矢理出掛けるか!
よし!そうしよう!なんなら体でも動かすか!?それならなっち誘ってみるか!いや、なっちは伊織と繋がりが深いよな?伊織は帰って来たばっかだし、親友だからもしかしたら今日とか二人は会うかも?そしたら気まずいな。
くそー!せっかく良い手だと思ったのに!
はぁ、とりあえず腹減ったからなんか食いたいな。母ちゃんパート何時までだろ?とりあえず家に何かあるか見てみるか。
俺は重い腰を上げて部屋を出てキッチンを漁る。特にすぐに食えそうなもんはねぇな。菓子ならあるけど、今は飯って言う飯が食いたい。
俺はふと思う。桃山って料理上手いんだよな。あいつなら何か作ってくれそうじゃね?
イケメンで料理上手いとかスペック良過ぎだろ。いや、あいつの場合性格に難有りだから残念だよな。大分サイコ入ってるよな。
でもさ、桃山って結構しっかりしてるんだよな。一緒にいて楽しいし、なんだかんだ世話してくれるんだよな~。
よし!冬休み最終日は桃山と過ごすか!
そうだ!今の気分は桃山みてぇにめちゃくちゃになりてぇんだ♪
大暴れして騒いで全部忘れちまいてぇんだ。
再び部屋に戻ってスマホを見る。
さっきまで来てた着信やメッセージは全部スルーして、桃山の連絡先を表示する。
そして迷わず通話ボタンをオン!
「♪」
呼び出してる間俺はワクワクが止まらなかった。
あいつの事だから俺からの誘いは断らねぇだろ。
変な自信があった。てか前にあいつから騙されて呼び出された事あったもんな。うん。その仕返しだと思おう。
その時の事を思い出すと顔が緩む。
あいつやたら紳士だったなー。初めはゲーセンにいて、その後飯連れてってくれて、俺は騙されたって分かってあいつから逃げようとしてたよな。今思い出すと笑えるわ。なんだかんだ楽しいよなあいつ。
で、その後なんだっけ?なにしたっけ?
そうだ、夕飯食ってたんだけど、伊織と会う事になったんだ……ここでも伊織かよ……
結局みんな伊織に繋がっちまうんだな。
でもあの時の桃山はすげぇ協力的で、頼りになったんだ。最後の別れ際なんかめちゃくちゃかっこよくてさぁ、絶対モテるじゃんあんなの。
電話を切ろうか迷っていると、ここで呼び出し音が途切れて桃山の声が聞こえて来た。
『はいはーい♪桃山観光案内所でーす♪』
そんなふざけた声に、いつも通り過ぎて笑えた。
桃山に電話した事を後悔しそうになったけど、俺はその声を聞いてそのままでいる事にした。
「ははっ♪モヤモヤする事があったからスカッとするような楽しい事出来る場所ありますかー?」
『おやっ?ノリ良いですね~♪センスあるの好きよ♡』
そう言って桃山は俺を連れ出してくれた。
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