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5章
空、頼むから……嫌いにならないでっ
しおりを挟む空に嫌われて凄く寂しくて悲しくて、自然と涙が溢れた。
俺が泣くのはおかしいのに、止まらなかった。
嫌だ。空に嫌われたくない。
心のどこかで空は絶対に俺を嫌いにならないって自信があったから今初めて心底空を失いたくないって思った。
どうしたらいいんだ。なんて言ったらいいんだ。
いつもの俺なら空相手だと言い返して強引に俺の勝ちに持って行くけど、今回ばかりは空も本気でうんざりしてるみてぇだし……てか今言い返したら空は帰っちゃうんじゃないか?
俺は何とかして空を繋ぎ止めなきゃといろいろ考えまくった。
俺は一度脱いだ服で涙を拭いて落ち着こうとする。けど、涙は次から次へと流れて止まらなかった。
「うう……ごめん」
やっと出た言葉がそれだった。
ありきたりな、誰でも簡単に言えるような言葉。違う、もっと何か言わなきゃいけないのに、空にちゃんと説明しなきゃいけないのに、俺は空がいなくなる恐怖で思うように言葉が出せなかった。俺の一言で空がいなくなっちゃうんじゃないかって。
そんな俺を見ていた空はすっかり泣き止んで、厳しい顔で見ていた。
「空、頼むから……嫌いにならないでっ」
「…………」
やっと言えた言葉に、空の目が大きくなった。
もっと言わなきゃいけない事はあるのに、何を言ったらいいのか分からない。もどかしくて頭をブンブンと横に振る。その間にも涙はポロポロ溢れた。
いつもの空ならここで「嫌いになんかならないよ」って言って抱きしめてくれるのに、なかなか言わない事が俺を焦らせた。
このままじゃ空を失う。
嫌だ嫌だ嫌だ。
空が離れるの嫌だ!
俺は消え入るような声で振り絞るように声を出した。
「空の言う事何でも聞くから……もう嫌な事しないから……頼むよ」
「何でも?」
「うん!何でも聞く!」
やっと空が反応してくれた。俺は顔を上げてすぐに頷いて答えた。空は相変わらず冷たい顔をしていたけど、話してくれるって事はまだ大丈夫かもしれないって事だよな。
俺は空を繋ぎ止めるのに必死だった。
「じゃあまず泣くのやめて」
「お、おう!」
空に言われて今度は脱ぎ捨てた部屋着で顔全体を拭く。また涙が込み上げて来てたけど、状況が変わったからか溢れる事はなかった。
次に空は少し考えるような顔をして、真っ直ぐに俺を見た。
今なら空の言う事なら何でも聞けそうな気がする。俺は空の言葉を待つ。
そして、辛そうな顔しながら空は言った。
「俺と、今すぐ付き合って。それからもう他の男と変な事しないで。出来る?」
「分かった!てか付き合うとか今とあんま変わらねぇし……あ、これからは変な事しないです。ちゃんと出来ます」
そんな事かと思って本音が出て俺はすぐにシャキッとして、ちゃんと空の言う事を守ると宣言した。
ここで空は冷めた顔からいつもの困ったような笑顔を見せた。
良かった!許してくれた!
「そんな簡単に答えちゃって。でも守って貰うからな?改めて言うけど、俺とちゃんと付き合って下さい」
「空~♡もーマジ焦ったからなぁ~♪良かった~♪」
「おいっ!俺の告白無視すんなよ!ちゃんと返事しろ!」
空に許してもらえてホッとしてギューって抱き締めると、怒られた。肩を掴まれて体を離され、至近距離でジーッと見られる。
俺は嬉しくてニヤけちまった。
「はい♡空の彼氏になります♡よろしくお願いします♡」
「かわっ!!!!!」
「空~♡ぜってー離さねぇからなぁ♡」
空が何かを言いかけて口を押さえてたけど、俺は気にせずにまた抱き付いた。
あー、ほんと良かった。
てか空を失うのがこんなに辛い事だなんて再確認したわ。
もうこれからは空だけを見て生きよう。多分俺には空がいないとダメだ。
ふと伊織の事が頭をよぎる。まだちゃんと別れてねぇけど、今のままなら正直に言える気がする。
てか言わなきゃだな。あいつが帰って来たらちゃんと話そう。
俺は空から離れて伊織に貰ったペアリングが付いてるネックレスを指に掛けて空に言う。
「悪ぃんだけど、コレ外してくんね?俺自分で外せねぇんだわ」
空に本気を見せようと思った。
きっと空なら喜んでくれる。そう思ったけど、空は驚いた顔をした後に、真剣な顔をし出した。
「そうだったの!?でも、本当に外していいのか?」
「え?何で?」
「何でって、貴哉は桐原さんの事も好きなんだろ?勝手に外していいのか?」
「勝手にって言うか、これは俺が付けていたかったから付けてるだけだ。別に伊織に付けてろとか言われてねぇよ?」
「そうだとしても、そんな簡単に忘れられるのかよ」
「それは……」
正直ハッキリ空だけですとは言えなかった。まだ伊織の事は好きだし、ちゃんと話し合うまではモヤモヤはすると思う。
俺が答えに迷ってると、空は優しく笑った。
やっと良い笑顔が見れた!
「それならまだ付けてていいよ。貴哉が桐原さんの事を吹っ切れて俺だけを好きになるまで」
「お前……良い男だなぁ♡」
「今更気付いたのか?俺は貴哉が思ってるよりちゃんと考えてんだ。だから、もう他の男に貴哉を触らせないでよ」
「うん、約束する。あーあ、もうチャラ男なんて言えねぇな」
俺がいつものように言うと、空は嬉しそうにニッコリ笑った。
本当、空はどんどん良い方に変わっていくよな。
初めは不安定で危なっかしい奴だったけど、今では俺が縋るぐらいに立派な男に育ちやがって。
俺も空の隣を堂々と歩けるようにならなきゃな!
まずはこのペアリングを外せるようにならないとだな。
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