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5章
何で勝手に上がって来ねぇの?
しおりを挟む楓んちからの帰り道。俺は焦っていた。
酔いなんかとっくに覚めて今は自分がした事を必死に思い出してただひたすらに焦っていた。
楓んちで飲んでたんだけど、どうやら俺は缶ビール数本で酔ったらしい。いや、酔ってたとは言え所々記憶はあるんだ。だからこそ厄介だ。
結果的に言うと俺は楓とセックスしちまった。
俺の記憶を辿ると俺から誘った。
そこだよそこ!俺何してんだよ!
イブの日に誰からも相手にされないからって、溜まってたからって、まさかの親友を襲っちまうなんて!!
楓は自分が悪いとか言ってたけど、絶対俺が悪いじゃん。だって楓は少なからず俺の事が好きだろ?それに恋人と別れた直後だし。そんなの断れなくね?甘えちゃうだろ!
ってやっぱ俺が悪いじゃん!!
楓は良い奴だから俺を責める事なく笑って、更にイった後寝ちまった俺の体まで拭いてくれて、おまけに空からの電話まで出てくれたと言うのに!
何という裏切り!!
えー、てか楓が言うには空が向かってるんだって?今から空に会うのちょーダルいんだけど……
いや、自分が悪いんだ。
空には変に隠すのはやめよう。
とりあえず空が来るまでに風呂は入っとくか……
楓んちと俺んちは数分ぐらいで着く距離だ。送ってくとか言ってたけど、俺は断って一人で家まで辿り着く。
母ちゃん遅くなるみたいだな。まだ暗い家の中に入って明かりを点ける。
それにしても楓の奴、「ご馳走様」とか言ってたな。とても嬉しそうだったし。うわ、思い出したら恥ずかしい!
親友の楓とヤっちまった事を改めて思い返すと、次どういう顔して会えばいいのか悩むな。
何か今になって最中の記憶が復活してより恥ずいな!
何もなかったようにする?
俺がそんなの出来るかー?
シカトする訳にもいかねぇしなぁ。
てか冬休み遊びたいとか言われたな。普通に気まずくね?てか冬休みとかほぼ空と過ごすかも知れねぇじゃん。
待てよ?俺ってば何で空の心配ばかりしてんだ?そりゃお互い好きだからってのはあるけど、俺って今誰とも付き合ってなくね?
だから俺が誰と何をしようと堂々としていていい筈だ。
なのに、空に対しては罪悪感がハンパねぇ。
これじゃ付き合ってるのと変わらねぇじゃん。
風呂を沸かしてる間に部屋着に着替えようと部屋へ向かう。
その間も楓の事はさて置き、ずっと空の事を考えていた。
俺は空とどうなりたいんだ?
好きと言いつつその気にさせといてまだ付き合わないって言い張ってるけど、もしこれが逆の立場だったら?
そんなの俺は怒り狂うに決まってる。
そんでもって空を許さない。
何て自分勝手なんだと我ながら思う。
時計を見ると22時30分になろうとしていた。
空がここに来るのに23時ぐらいになるか。
いや、あいつの事だから自転車かっ飛ばして来る筈。多分23時前には着くか。
やっぱり正直に話そうかな。
そんでどうするかは空に任せよう。
そろそろ風呂が沸く頃だから準備をしようと部屋を出た所で家のインターフォンが鳴った。
え?空か?でも空ならいつも勝手に入って来るぞ。空が来るから鍵は開けてあるんだ。
不思議に思いながらも玄関まで行ってドアを開けると、やっぱり空がいた。グレーのダッフルコートに黒いマフラーをぐるぐるに巻いて寒そうに立っていた。
「空……何で勝手に上がって来ねぇの?」
「何となく……」
とりあえず空を中に入れてやった。
空はデカいバッグの他に紙袋を持っていて、紙袋の方をリビングのテーブルに置いた。
お互い少し気まずかったけど、先に喋り出したのは空からだった。
「今日泊まるから♪着替えも制服も持って来たからいいよな?」
「えっ!泊まり!?」
俺は思わず大きな声で言っちまった。
だって、泊まるとか急だし、何かいろいろヤバくね?何がヤバいって、ほら、さっき楓とあんな事して来た後だし、もし空がしたいとか言ったら……
いやいや、変に隠すのやめるとか言ってたのに何隠そうとしてんだ俺!
「時間も遅くなっちゃったし、あ、ここまでタクシーで来たんだ~♪お手伝い頑張ったからって光ちゃんがお小遣いくれたんだ~♪」
「マジで?」
「マジで♪あと、ケーキとつまみになりそうなもんも貰ったんだ。兄貴と光ちゃんが貴哉と食べてって♪冷蔵庫入れておくな。二人が貴哉によろしくって言ってたよ~」
空は紙袋からケーキとその他食べ物が入ったタッパーを何個か取り出して冷蔵庫にしまっていた。
そんな空の言葉を聞いて、罪悪感が更に更に重くのし掛かった。
俺、雪兄と光ちゃんまで裏切ってんじゃん!
楓と会ってた事を知ってる筈の空は意外と普通にしていて、俺は本当の事を言い出すに言えなかった。
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