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4章
おまけ2-1※一条紘夢
しおりを挟む※紘夢side
学校の階段から落ちた俺は今、迎えに来た車の中で状況の整理をしていた。
まず、体は思ったよりもダメージが大きかった。ベッドにいる時は体を起こすのに痛い程度だったけど、降りて立ち上がったり、いろいろな格好を取ろうとすると所々に激痛が走り、思うように体を動かす事が出来なかったんだ。これじゃあと二日ある学校は休んだ方が良いかもな。
そして迎えに来た人物だ。俺はてっきり的羽が来るものだと思っていたんだ。だから暇してる癖に来るまでに時間が掛かるなんてどういう事だとか思ってたけど、来たのは的羽じゃなかった。なんと、俺の父さんだったんだ。それも付き添いの人間を連れずに父さん一人だった。
担任に支えられながら玄関まで行くと、スーツ姿の父さんが立っていて、俺は思わず目を疑って固まっちゃったよね。
父さんと会うのは約二年振りぐらいで、少し老けたように見えた。それでもしっかりした身だしなみに、仏頂面でとても威厳のある顔は変わらずだった。
てか芽依から聞いた話だと大分弱っているとか言っていた。それが二本の足でしっかり立って歩いてたし、今は俺を乗せて自分の車を運転までしてる。見た所老けた以外は変わりなく元気そうだけど……
うん。ここまでいろいろ考えられるなら脳は大丈夫そうだな。
「紘夢」
「……はい」
運転中の父さんに声を掛けられて、思わず敬語で返事をしてしまった。さすがに俺でも緊張はする。いや、今の俺ならだ。
父さんに復讐をした時はまだ子供だった。あれから時間が経って、いろんな経験をして今ではあの時の事を恥ずかしく思うぐらいだ。父さんとはちゃんと話そうとは思っていたけど、こんな風に突然その機会が訪れるなんて、戸惑いもする。
「これから病院へ行って診てもらう。何か欲しい物があるなら的羽に頼むんだ」
「分かりました。欲しい物は特にありません」
「そうか。体は痛むか?」
「まぁ少し」
嘘だ。大分痛いよ。高級車だから乗り心地は良いはずの後部座席に、こうして座ってるだけでも背中と腰がシートに付けられない程激痛が走ってる。
「あの、何故父さんが来たの?仕事忙しいんじゃないの?」
「ああ、年末年始に向けて打ち合わせの最中だったよ。代わりの者に任せて来た」
「迷惑を掛けてすみませんでした」
「……気にするな。今は自分の心配をしていろ」
「はい」
何だか父さんの様子がおかしい。まず、俺を直々に迎えに来た事もだけど、勘違いか優しい気がする。まるで俺が復讐する前のような対応で、俺の事を追放した時の怒り狂った父さんはどこへ行ったと今だに信じられなかった。
俺は大人しく父さんに連れられてかかりつけの病院で脳や体に異常が無いかを検査する事になった。
検査等が終わったのは夜の19時過ぎだった。その間、父さんはパソコンをいじりながら仕事の電話をしたり、忙しそうにしていた。
仕事柄今の時期は忙しい筈だ。それでも仕事に戻らずにずっと待合室で待っていてくれた。
俺が全ての検査を終えて姿を現すと、パソコンを閉じて電話も切って主治医の話を聞いてくれた。
そして19時30分頃、父さんと病院を出る。
結果は脳に異常は無し。体の方も、背中と腰と腕に全治数週間の打撲。普通に生活を送っていいと言われたけど、もし後日気になる事や症状が出た場合はもう一度より精密な検査を受ける事になった。
病院を出て父さんの車に乗る前に、俺は父さんに今回の事と、今までの事を謝ろうと声を掛ける。父さんは立ち止まって話を聞いてくれていた。
「父さん、今回も俺の勝手な行動により仕事の手を止めさせるような迷惑を掛けてすみませんでした。以後ないよう気を付けます。それと、二約年前にとった父さんへの失礼な態度も……ごめんなさい。今では凄く反省してます」
「……そうか、とりあえず車に乗りなさい。この後きちんと話そう」
父さんは顔色を変えずにそう言って俺を再び後部座席に乗せて車を走らせた。
あの父さんがさっきので許してくれるとは思えないけど、意外とあっさりしてたな。この後ってまだ時間を作ってもらえるのかな。
父さんは代表取締役として、仕事も大手レジャー施設と言う今が最も忙しい時期で、すぐにでも仕事に戻りたいだろうに。父さんはいつもそうだった。一切手を抜かず何よりも仕事を大切にしてた。だからこうして父さんが一人で俺を迎えに来るなんて初めての事でかなり驚いた。
車の中で俺は特に話し掛ける事もなく、父さんも何も言わずに走らせていた。
俺が住む別宅とは正反対の方向へ進んでいるので、どこへ向かっているのかは分からなかった。
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