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3章
伊織っ……お前……
しおりを挟む桃山と別れてからタクシーに揺られる事20分ちょっと。道が混んでたから少し時間が掛かったな。
タクシーを降りて、とりあえず桃山に貰った金で支払いを済ませて到着した地に足をつける。
辿り着いたのは木が生い茂る大きな公園。タクシーの中からも見えたけど、イルミネーションか何かをやってるようで、公園に近付くに連れて人も増えていた。昨日ハッピーランドで見た規模のイルミネーション程ではないけど、こんなとこでもやってるんだと思いながら俺は駐車場内を歩く。
そうだ、伊織に連絡しねぇと。
そう思ってたらいきなり背後から抱き付かれて前によろけた。
伊織だ!
「貴哉~♡見つけた~♡」
「伊織っ……お前……」
伊織は俺の背中側からギューって深く抱き締めていた。フワッと甘くて爽やかない匂いがして、伊織なんだと実感する。そんな伊織に俺は何とも言えない感情がいろいろ湧いて、上手く言葉が出て来なかった。
「ごめんな貴哉。俺すぐ行かなきゃだからとりあえず移動しよう」
「おう」
そう言って伊織は俺の手をしっかり握ってそのまま連れて公園の中に連れて行ってくれた。首元にはネックウォーマーを付けて寒い中原付で来たからか耳が赤くなっていた。そして、伊織の象徴赤い髪は健在だった。
中に入ると更に色鮮やかで綺麗なイルミネーションが開催されていた。人の数も外よりも多くて、特にカップルが多かった。
その中を歩いて行き、少し開けた噴水のある公園のメインっぽい場所に辿り着く。
「桃山の奴、粋な事してくれるぜ」
「あ、俺にタクシー代もくれたんだ。一万円も!」
「マジかよ……なら明日これ桃山に渡しといて」
伊織が財布を取り出して新たに一万円札を取り出して渡して来た。俺は受け取るか迷ったけど、そんなやり取りも惜しいと思って素直に受け取る事にした。
「これは、俺が貴哉とクリスマス過ごそうと思って貯めた金だから。どうやら今年のクリスマスは会えなそうだからちょうどいいや♪」
「なぁ、どうしていきなり旅行に行く事になったんだ?」
「親の仕事の都合だよ。俺も兄貴も反対したんだ。俺はせめて学校が休みに入るまで待って欲しかったんだけど、俺の為の旅行らしくてあんま強く言えなかった。兄貴はそもそも旅行自体行きたくないみてぇで、俺のせいだってすげぇ怒られた」
伊織は「はは」と苦笑いをしつつも嬉しそうだった。伊織にとって家族との時間が増えたのが良い方に行ってるみてぇだな。
俺も嬉しくなって自然と笑顔になれた。
「そっか。それなら楽しんで来いよ」
「おう。少しでも貴哉に会えて良かった。昼間電話くれたのに出れなくてごめんな。兄貴にこき使われてたんだ」
「うん」
「って、そんな事はいいんだ。貴哉、来てくれてありがとう。ずっと連絡もしないでいてごめんな」
「伊織……」
伊織は軽く俺を抱き締めてそう言った。
ここで俺の感情は溢れ出した。俺も伊織の背中に腕を回して伊織が着てたをダウンジャケットをギュッと握り締めた。
伊織も俺を優しく抱き締めて、ずっと離れていて、一緒に過ごせなかった間の隙間を埋めるように抱き締め合った。
周りのカップルは男女ばかりだったけど、今はそんな事どうでも良かった。
あと少しで伊織とまた離れなくちゃいけないって考えたら寂しくて、辛かった。
俺、やっぱり伊織の事好きなんだ……
「なぁ、いつ帰ってくるんだ?」
「年明け。新学期には間に合うように帰って来るよ」
「そんなに!?じゃあクリスマスどころか年越しも?」
確かに約束とかしてなかったけど、そんなに長い期間遠くへ行っちまうとか、冬休みとか会えねぇじゃん!
俺が驚いて顔を上げて聞くと、伊織は困ったような顔をした。
「俺もクリスマスと年末年始は貴哉と何とかして会おうと思ってたんだけどな。ごめん」
「べ、別に、いいけど……」
だってクリスマスは空と約束してるし、年越しとかだって茜に声掛けりゃ楽しく過ごせるし!伊織と会えなくたって何とかなるだろ。
そう自分に言い聞かせて本当は寂しいとか思ってるのを隠そうとした。
それに対して伊織はシュンとして、今度は手を繋いで来て歩き出す。俺を連れて来た道を戻って行く。あ、もう帰らなきゃなのか……
もう少し一緒にいたかった。もっといろいろな話をしたかった。
でもせっかく伊織が今頑張ってるのに、それを邪魔するような事はしたくない。俺は黙って後を付いて行く事にした。
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