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1章
ほら、デコ触ってみ!
しおりを挟む俺は今日も真面目に補習を受けていた。今日頑張れば明日は土曜で休みだー。
補習は大体一時間ぐれぇだけど、俺からしたらそんなけ長い時間机に座って勉強なんかするのは辛すぎた。
今も玉山がいなくなったからボーッと窓の外を見て過ごしていた。
補習始めてから部活行けてねぇなぁ。何があったとかは空から聞いてるから分かるけど、別に大した事はしてないらしい。同時に伊織とも会ってない事になる。最後に会って会話したのはこの補習を始めた日の昼休みだ。
伊織、元気かな?
それにしても二学期も来週の後三日か~。あと二日も補習あるとかつまんな過ぎだな~。
とか外を見ながらいろいろな事を考えていたら、スマホが鳴った。空なら連絡しねぇで勝手に迎えに来るはずだ。
あ、藤野からだ。
意外な奴からのメッセージだったからすぐに開いて確認してみる。
『秋山、補習が終わったら会いたい』
藤野が俺にぃ?いきなりどうしたんだ?
目立つからって俺とは会うの避けたがってる癖にどう言う風の吹き回しだ?
不思議に思いながらも何かあったんだろうと思って、俺は空もいてもいいか確認してみる事にした。そしたら二人で会いたいって事だったから俺は補習を抜けて空より先に帰る事にした。
藤野の件は空が結構頑張って動いてるみてぇだけど、なんやかんや賑やかなグループだから、藤野の周りの三人を単体で引っ張り出すのに苦戦してるみてぇだ。俺は特に何もしてなかった。
補習が終わるまでは後三十分はあるからな。玉山をどうにかねじ伏せて駅で待ってるって言う藤野んとこに行ってやろう。
俺は勉強道具を片付けて、全部机に押し込み、ほとんど何も入っていないショルダーバッグを肩に掛けて教室を出る。
とりあえず職員室へ行こう。玉山はどの部活の顧問もやってねぇからそこに居る筈だ。
「失礼しまーす。玉ちゃんいるー?」
「あ、秋山くん。玉山先生なら校内の見廻りに行ってるよ。その帰りに秋山くんの様子も見て来るって言ってたけど、会わなかった?」
職員室に先公達は少なく、二年の担任やってる柴田が俺に気付いて教えてくれた。
柴田こと柴先。二年B組の担任で、伊織のクラスの担任だ。伊織は柴ちゃんとか呼んでたな。教師達の中では若くて、話し易そうな見た目してる。話すと「あ、こいつ抜けてんな」って俺でも分かるぐらいの天然だ。
「マジで?あいつ勝手に動くなよな~。ちょっと電話してみるわ」
「……まるで友達みたいだね」
俺はポケットに入ってたスマホを取り出して言うと、柴先が苦笑いで言った。
俺は教師にも生徒にもこうだから、初めは驚かれるか怒られるかだ。柴先は普通だったなー。だから柴先は俺の味方であって好きだ。
玉山は電話には出なかった。
あいつまさか!?と思って玉山の机を見る。
やっぱり!机の上に画面が光るスマホが一台。持ち歩いてねぇのかよ!これだからおっさんは!!
って俺も四六時中持ち歩いてる訳じゃねぇけどな。
俺を見ていて状況が分かったのか、柴先が優しく笑って言った。
「もし何か伝えたい事があるなら僕が聞いておくよ。玉山先生が戻ったら伝えておくから」
「そう?やっぱ柴先はちげぇは♪俺柴先のクラスが良かったな~♪」
「あはは、秋山くんは僕の手には負え……ぼ、僕も秋山くんは賑やかだから楽しそうで是非受け持ってみたいと思ってるよ!」
「あ?今秋山くんは手に負えねぇみてぇに言おうとしなかったか?」
分かりやすいんだよな柴先ってよ。
俺がムッとして聞くと、慌てて言い訳を言い始めた。別に気にしてねぇから何か面白い。
軽くパニクってる柴先を茶化して遊んでると、後ろから怒鳴られてビクッとしちまった。
あ、玉山!
「コラァ!秋山ぁ!柴田先生をからかうんじゃないっ!」
「うひぃ!?玉ちゃん、いきなり後ろで大きな声出すなよぉ!」
「それよりもお前は何でここにいるんだ!教室見に行ったらいなかったから逃げたと思ったぞ!」
「あ、そうそう!俺体調悪いから今日は帰ろうと思ったんだ」
肩に掛けてたバッグを見せて言うと、玉山は難しい顔をして俺の周りをジロジロ見た。あ、疑ってんな?
「体調が悪いだとぉ?今日お前ピンピンしてたじゃないか。逃げようとしてるだろ?」
「してねぇって!何か熱っぽくてよ~。ほら、デコ触ってみ!」
俺は玉山の手を取って自分のデコに当ててみる。
あ、玉山の手のがあったけぇや。
玉山は今度は微妙な顔をしていた。
てか良く考えたら玉山の手が俺を触ってるってキモいな!自分からやったとは言え、俺は玉山の手を払うようにどけた。
「うーん、熱があるとは思えんが……」
「玉山先生~。今日は金曜日ですし、大事を取って休ませたらいかがでしょう?秋山くんは毎日ちゃんと頑張ってるみたいだからね?」
ナイス柴先!ずっと俺らのやり取りを見ていた柴田がニコニコ笑顔で助け船を出してくれた。
あー、柴田が担任だったらどんなけ楽だったか……
「また柴田先生は秋山に甘い事を……まぁ三十分はやったしいいだろう。その代わり家でもちゃんと勉強する事!分かったか?」
「分かってるって~♪そんじゃあな!あ、柴先サンキューな~♪」
「お前はまた!敬語を使え敬語を!!」
「はいはーい。気を付けて帰るんだよ~」
玉山は最後まで説教しようとしてたけど、俺は逃げるように職員室を出た。何とか抜けられたな。
あとは部活行ってる空だ。空はー……メッセージ入れときゃいっか。
『体調不良先帰る』
でいいか?まぁ連絡来たら話せばいいだろ。
俺は一人で学校を出て駅まで歩いて向かった。
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