【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

文字の大きさ
7 / 156
1章 

良い兄貴だな

しおりを挟む

 図書室の横の小さい部屋。伊織とは毎度お馴染みとなった隠れ家的な部屋で売店で買ったおにぎりを食いながら、伊織に俺が廊下を猛ダッシュしていた訳を話していた。
 伊織は美味そうな弁当を広げてゆっくり食いながら話を聞いてくれていた。


「そりゃ災難だったな。今日から毎日ってのが辛いな」

「うん。まぁそうなんだけどよぉ……てか伊織その弁当って……」


 俺は自分の話をしながらずっと伊織の弁当が気になっていた。
 見るからに手作りのおかずたっぷりの美味そうな弁当だ。伊織と言えばカロリーメイトだった筈なのに、何故ここに来て手作り弁当?


「ん?あ、食うか?味は確かだぞ」

「食う♪って、お前が作ったのか?」

「まさか」


 弁当を差し出して来る伊織は苦笑いだった。
 あれれー?その反応って怪しくねぇ?
 伊織じゃねぇって事はもしかして誰かの手作りかぁ?


「誰に作ってもらったんだよ?」

「……秘密♡」

「あ?何でだよっ!」

「気になる?」

「そりゃ気にな……あ!」


 俺の反応を見てニヤニヤしだす伊織。
 危ねぇ!伊織が持ってる誰かの手作り弁当にやきもち焼くとこだったぜ~。


「はは、作ったのは俺の兄貴だよ。ちゃんと飯食えって朝飯も作ってくれてるんだ」

「あ、兄貴か……そっか!良かったなぁ♪」


 笑いながら本当の事を話してくれた伊織にホッとしていた。くぅー、俺ってば自分から別れるとか言って何気にしてんだよ。
 にしても兄貴と上手くやってるんだな。それは本当に良かったなって思う。


「良い兄貴だな。んじゃ遠慮なくいただくぜ~♪」

「全部食べていいよ。俺元々食わないから食い切れなくて」

「勿体ねぇなぁ。残すんなら俺にくれよ」

「いいよ。じゃあこれからはまたお昼一緒に食う?」

「……あー、たまにならいいかな!?」

「えー、俺は毎日でもいいけどな」


 伊織とは別れてからは会った時ぐらいしか話さなくなったんだ。俺からそうしようって言った訳じゃないけど、伊織から俺に会いに来なくなったんだ。代わりに空がずっと付き纏ってるから寂しくはなかったけど、こうして久しぶりに伊織と過ごすとやっぱいいなって思う。

 その反面、複雑な気持ちにもなるけどな。
 俺達は別れた。伊織は「保留」とか言ってるけど、もう恋人らしい事はしてねぇし、連絡すらまともに取ってねぇ。
 こうして会うと優しくしてくれたり、口説くような事言って来たりするけど、付き合ってた頃みてぇに触れて来たりはしないんだ。

 
「さっきのやきもちも嬉しかった。貴哉はまだ俺の事好きでいてくれてるんだって思えたから」

「そういう事言うなよ。俺達はもう……」

「保留な♡俺がちゃんと大人になれるまで、貴哉の事をまた惚れさせられるようになるまでな」

「伊織……」


 またって言うけどもう惚れてるよ。
 別れてからたまにしかこうして話さなくなって、伊織の良い所ばかり目についちまうんだ。
 さっきだっていきなりぶつかった俺を怒らずにしっかり受け止めてくれたし、昼飯も一緒に食ってくれてるし、優しく口説いてくるし……
 
 俺が優しい伊織にボーッと見惚れてると、伊織はカタンと椅子の音を立てて立ち上がり、俺の隣まで来て上から見下ろして来た。伊織の目は真っ直ぐに俺を見ていて、とても愛おしそうに見て来た。
 これヤバいやつだ。このままだと俺、伊織としちゃう……


「貴哉、していい?」

「っはぁ!?何聞いてんだっ!」


 伊織に見つめられて自然と待っていると、言葉にして聞かれたから咄嗟に慌てて顔をふいっとしてしまった。
 危ない。聞かれなかったらキスしてたな。

 箸を持って誤魔化そうとしてると、伊織はそのまま俺に右手を伸ばして来て、首元にある伊織から貰った指輪を手に取った。


「!」

「これ、まだ付けててくれてんだ♪」


 小さな声で、嬉しそうに言うからまた伊織を見ると、今度は本当に嬉しそうに笑う伊織がいた。
 もう一度箸を置いて俺は伊織の左手に手を添えた。


「お前だってまだ付けてんじゃん」


 伊織の左手の薬指に嵌めてあるペアリングを触りながら言うと、その手を絡めて来た。
 そしてゆっくり顔が近付いて来て、キスをされた。
 うわぁ、ここでして来るかぁ?
 もうこいつどこまで俺をドキドキさせりゃ気が済むんだよっ。

 俺は目を閉じて伊織の左手を握る右手に力を入れる。
 そっと離れていく伊織は俺のおでこに自分のおでこを当てて「へへ」と笑った。


「弁当代♡なんつって♡」

「おまっそう言うの後から言うなよなぁっ」

「そんじゃ今度からそのつもりで♡」

「……ん」


 もう一度キスをされて完全に俺は伊織に惚れてるんだと自覚した。
 どんなに離れても、空といても、伊織の事を辞めるのは出来ねぇんだな。
 こうしてキスされてこんなにドキドキして嬉しいなんてさ。

 すっかり俺のイライラは収まっていて、伊織の弁当をペロッと平らげて機嫌良く教室へ戻る俺だった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...