未熟な欠片たち

pino

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2章

大人の男性

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 それぞれ食べたい物を頼んで食べていると、佐倉さんらしき人が奥から出て来て俺達の席に向かってやってくるのが見えた。

 その人は身長が高く、茶髪で緩いパーマがかかった髪型で、モデルのような体型だ。このファミレスの中では目立っていた。
 その人は俺達のテーブルまで来ると、湊に挨拶をして俺達にも軽く頭を下げて来た。なんて礼儀正しい大学生なんだ!


「佐倉さーん♡わざわざ来てもらっちゃってすいません♡」

「気にしないで。二人共初めまして。ここ座ってもいいかな?」

「どうぞ!」


 大人に雰囲気に圧倒されたけど、ずっとニコニコしている佐倉さんに、俺と弘樹は少し緊張していた。


「二人共どうしたのー?佐倉さんかっこよすぎて驚いたでしょー?」

「澪、ふざけるな。僕は佐倉駿だよ。二人は澪の大切な友達なんだよね。名前聞いてもいいかな?」

「はい!俺は間宮夏樹です!よろしく」

「高城弘樹です。澪がお世話になってます」

「うん。よろしく。それにしても二人共かっこいいなー!澪から聞いていた通りだ」


 近くで見た佐倉さんは、顔までイケメンだった。綺麗な二重の目にスッと通った鼻筋。広角の上がった口元で、愛想まで良い。接客業にはもってこいの顔。
 そんな佐倉さんに言われたら恥ずかしくなるだろ。


「でしょー?二人もとてもモテるんですよ♡是非佐倉さんに会わせたかったんです」

「ずっと会わせたい人がいるって言ってたもんな」

「あの佐倉さん、聞いてもいいですか?」

「なにかな?」


 勇気を出して聞きたかった事を聞く事に。
 澪の為に調査しないとだもんな!


「恋人いるんですか?」

「えー、いきなりだな!残念だけどいないんだぁ」

「夏樹ってば何聞いてるの!」

「だってイケメンだし、いると思って」

「あの、次は俺が質問いいですか?」

「どうぞ」


 今度は弘樹が。何聞くんだろー?


「澪の事、どう思ってるんですか?」

「ヒロくん!」


 さすが弘樹だ!いきなり確信を突くような質問!慌てる澪に、驚く俺。そして佐倉さんは笑っていた。


「あはは、何だか澪の親と面談してるみたいだなぁ。うん。澪の事はいつも明るくて元気で、仕事頑張ってる良い子だと思ってるよ。いつも俺に懐いてくれてるし可愛いくて側に置いておきたいって思ってるよ♪」

「さ、佐倉さんっ♡」

「そっか~。澪良かったじゃん」

「もー、ヒロくんいきなり辞めてよねー!佐倉さんを困らせちゃダメー」

「え、澪の為に聞いたのに」

「仲良いなぁ。このまま話していたいけど、俺この後用があるんだ。ここは俺がご馳走様するからゆっくりして行ってよ」


 そう言って佐倉さんはテーブルの端に五千円を置いて立ち上がった。普通に取った行動がかっけー!
 でもさすがに悪い気がして俺が断ろうとすると、ニッコリ笑って手を振った。


「悪いですよ佐倉さーん!俺達がいきなり来たのにー」

「いいの。後輩は黙って奢られてなさい。それじゃまたね♪」


 爽やかに立ち去る佐倉さん。
 自然な行動が、まるで律みたいだと思ってしまった。律もあんな感じになるのかな……
 残された俺達は食事を再開して、佐倉さんの話で盛り上がった。


「はぁ、ヒヤッとしたよ~」

「良い人そうじゃん!安心したぞ」

「良い人だもーん♪いつもあんな風に優しくしてくれるんだよ」

「なんか脈ありじゃね?なぁ?弘樹」

「うん。佐倉さんが他の人にもああ言ってなければだけどね」

「そこなんだよねー!佐倉さんってみんなにも優しいの!今ホールやってるららちゃんとも仲が良くていつも楽しそうに話してるんだよ~」

「え、ライバルじゃん」

「ららちゃんにも聞いてみる?」

「ヒロくん辞めて!これ以上俺のバイト先荒らさないで!」

「まぁ頑張れよ澪。バイトも恋もさ」

「うん!頑張る~♪ねぇ、五千円あればもっと食べられるよね?俺追加しちゃおー♡」

「佐倉さんいなくなった途端にこれだよ」

「澪はこうじゃなくちゃね」


 相変わらずの澪にその後も三人で食事を楽しんだ。
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