49 / 52
2章
夏樹と弘樹
しおりを挟むそれから俺は律のマンションを出た。こう言う時オートロックって便利だな。部屋から出れば勝手に鍵が掛かるようになってるとかすげぇよな。
そして、律の看病中に来てた着信履歴を見る。
澪からだった。澪には俺から買い物に付き合ってくれってメッセージしておいたんだ。本当は律と行くつもりだったけど、とてもじゃないが連れ回せない。
澪に掛け直すとすぐに出た。
「澪ー?今暇ー?」
『今バイトの休憩中だよー♪あと少しで終わるんだけど、そしたら暇だよー』
「じゃあ一緒に買い物行こうぜ!って、電話大丈夫なのかよ?」
『今トイレから掛けてるから~。買い物行く行くー♡浴衣見るー♡あ、終わったらまた電話するよー♪』
相変わらず自由な奴だなと思って電話を切って一回帰る事にした。律が体調良かったら澪んとこにご飯食べに行ったりもしたかったなぁ。まぁそれはまた今度だ。
家に帰って澪からの連絡を待つ間、弘樹も誘おうかと迷った。澪もいるし大丈夫だよな?弘樹は元々家の手伝いとかで忙しいのもあって澪程は良い返事が貰える事はないけど、同じ幼馴染だから誘うだけ誘いたかった。
「誘うだけなら良いよな?」
スマホを取ると、ちょうど澪から電話が来てビックリした。なんつータイミングだ……
「おう。バイト終わったのか?」
『終わった終わったー。夏樹は今どこ?』
「家だよ。なぁ弘樹にも声掛けようと思うんだけど、どう思う?」
『いいんじゃない?ヒロくんが暇ならだけど』
「俺から誘って平気だよな?」
『あー、そう言う事ね!なら俺から誘うよ。そうすれば自然でしょ?帰って着替えたら夏樹んち行くねー』
澪のこういうサッパリしてるところ好きだな。俺達の中で一番乙女っぽいのに、実は一番男らしい部分ももっている。
澪は決して見た目は悪くない。むしろ男にしては可愛い外見で、結構モテる。だけど、本人が面食いでイケメンに好かれなければモテてる事にはならないとかワガママな事を言ってるんだ。
そうだ、今日時間があったら澪のバイト先に連れてってもらおう。澪の好きな人、佐倉さんだっけ?を紹介してもらおう。
勝手にプランを立てて澪が来るまで一階のリビングのソファでゴロゴロしながら待ってると、インターフォンが鳴った。澪にしては早いな。今母さんいないから俺が出るしかねぇんだけど。
「はーい?どちら様?」
「やあ」
「弘樹!」
玄関を開けると弘樹が笑顔で立っていた。
あ、澪が電話してくれたのか?
「澪から聞いた。買い物に行くんだって?俺もいいかな」
「もちろん!でも驚いたぜ。今さっき澪と電話してたとこだからさ」
「ちょうど家にいたんだ。一人で買い物に行こうと思ってて準備してたからちょうど良かったよ」
「そうだったのか!あ、中入れよ。澪はまだ時間かかるだろうし」
「お邪魔します」
相変わらずちゃんとしてる弘樹は、挨拶をしてから靴を揃えて入った。俺と澪なら自分ちみたいに入って行ったりするぞ。
弘樹をリビングに通して、作ってあった麦茶をコップに注いで渡してあげる。
弘樹と二人きりとか久しぶりだから何か変な感じだった。
「あ、弘樹は何を買うんだ?」
「参考書と文房具。夏樹は?」
「おー、夏休みでも勉強すんのか。俺は旅行で使うバッグとか着替えだ」
「どこか旅行行くの?……和久井と?」
弘樹に聞かれてドキッとした。が、別に隠す事じゃねぇもんな。弘樹も普通そうだし。
「ああ、律のお爺さんが持ってる別荘に行くんだ」
「へー、いいな。澪はバイトって言ってたし、俺は特に予定ないから羨ましいや」
「家の手伝いとかあるんだろ?」
「うん。でも母さんの雑用とかだし、あとは勉強かな」
「そっか……」
「…………」
何となく気まずかったんだ。だからとうとう沈黙になっちゃったんだけど、弘樹ってまだ俺の事好きなのかな?だとしたら迂闊に変な話は出来ねぇし。早く澪来ねぇかな。
と思ってると、弘樹が俺を呼んだ。
「夏樹」
「え?」
「今日誘ってくれてありがとう。澪から聞いた。夏樹が誘いたがってるって。和久井がいるから夏樹からは言いにくいかったんだよね?」
「えっと、はは、昔から澪を誘ったら弘樹もって当たり前だったじゃん?だからさ……俺から言えなくてごめんな」
「夏樹の気持ち分かるから大丈夫だよ。俺も夏樹には迷惑掛けないようにするから安心して」
「弘樹、お前ってさ……」
「?」
ニッコリいつもの笑顔でそう言うけど、弘樹はいつも誰かの一歩後ろにいる感じがするんだ。上手く言えないけど、遠慮して、我慢して、だから時々息苦しくねぇのかなって思ってしまう。
「まだ俺の事好きなの?」
「え……」
やべ。つい気になってた事を聞いてしまった。でも自分の感情を抑え込んでるような弘樹を見てたら黙ってられなかったんだ。
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ
pino
BL
恋愛経験0の秋山貴哉は、口悪し頭悪しのヤンキーだ。でも幸いにも顔は良く、天然な性格がウケて無自覚に人を魅了していた。だがしかし、男子校に通う貴哉は朝起きるのが苦手でいつも寝坊をして遅刻を繰り返していた。
夏休みを目の前にしたある日、担任から「今学期、あと1日でも遅刻、欠席したら出席日数不足で強制退学だ」と宣告される。
それはまずいと貴哉は周りの協力を得ながら何とか退学を免れようと奮闘するが、友達だと思っていた相手に好きだと告白されて……?
その他にも面倒な事が貴哉を待っている!
ドタバタ青春ラブコメディ。
チャラ男×ヤンキーorヤンキー×チャラ男
表紙は主人公の秋山貴哉です。
BLです。
貴哉視点でのお話です。
※印は貴哉以外の視点になります。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。



ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる