未熟な欠片たち

pino

文字の大きさ
上 下
40 / 52
2章

我慢のその後

しおりを挟む
 
 目を開けるとそこはベッドの上だった。あれ、いつの間に寝てたんだ?寝返りを打つとお尻に激痛が走ってそのまま動けずに居た。


「ってぇ……何だコレ?あ!」


 痛みの原因を思い出して俺は一人恥ずかしくなって布団に潜り込んだ。
 そうだ、俺ってば律と最後までしたんだ……
 初めての経験だったけど、まさかあんなに気持ち良いなんて。思い出しただけで顔から火が出そうだった。


「って、律は?」


 いつも一緒に寝ている筈の律の気配が感じない事に気付き、首だけ捻って隣を確認してみるけど、やっぱり居なかった。
 てか何時だ?まだ外暗いみたいだけど……


「二時……」


 なるべく動きたくなくて手を伸ばしてベッドの横のサイドテーブルに置いてあるスマホで時間を確認した。確か律とベッドに行ったのが十二時前だったから、一時間ぐらい寝たのか?
 いつ寝たのかは分からなかったから定かでは無かったけど、そんな事をぼんやり考えてると部屋に律が入って来た。


「律?」

「あれ、起こしちゃった?」

「ううん。さっき起きた。どこ行ってたんだ?」

「喉が渇いたから水飲んで来たよ」


 優しい律の声にホッとした。ベッドに入って来た律は動けない俺を後ろから抱き締めてきた。


「夏樹、体大丈夫?」

「ダメだ。動けねぇ」

「頑張ってくれてありがとう♡」

「律もお疲れ様。あ、律は平気なのか?」

「大丈夫だよ」


 首を捻って律の方を向くとチュッとキスをされた。


「夏樹、俺今幸せだよ」

「はは、そりゃ良かった。俺もだ」

「こんな幸せがずっと続けばいいのに」

「続くだろ」

「……そうだね」

「律は眠くないのか?」

「少し眠いかも」

「なら寝ようぜ」

「寝たら勿体ない気がして」

「勿体ないって?」

「律とずっとこうしていたいからだよ」


 首筋にキスをされてそれがくすぐったくて小さく声を漏らすと律が笑った。
 

「なぁ、少し話してもいいか?」

「いいよ」

「律はやり方知ってたのか?」

「やり方ってセックス?」

「うん。何かやけに慣れてんなーと思ったから」

「一応調べたからね。それと夏樹を傷付けたくなかったから試した」

「試した?……誰と!?」

「自分でだよ。ローションなんて使った事無かったから、自分のお尻で試したの」

「マジで!?」


 律が冗談を言うようには思えないけど、まさかそんな事をしていたなんて……
 あれ、想像したら何か悪くねぇかも?


「ちょ、律それヤバい。何か興奮する」

「夏樹の変態ー」

「だって、律が自分でとか……それもあんな事だぞ?」


 今さっき律にされた事を思い出して恥ずかしくなった。そっか、律はちゃんと下調べをしてから俺にしてくれたんだな。


「律ありがとう」

「うん。ねぇ、上手く出来たかな?」

「すげぇ気持ち良かった!」

「嬉しい。これからも気持ち良くしてあげるからね♡」

「しばらくは出来そうにねぇけどな」

「えー、毎日でもしたいよー」


 痛むお尻を考えて真面目に答えると律は残念そうに言った。冗談だろ?アレを毎日だと?さすがに体がもたねぇよ。


「あ、今度俺も律のお尻やってあげるからな」

「え」

「俺ばかり良くなってたら悪いだろ。やり方教えてくれよな」

「いや、俺は十分気持ち良いんだけど」

「まぁ初めは恥ずかしいけど、慣れればそんなの気にならなくなるから」

「……夏樹、そろそろ寝ようか♡」

「ん?そうだな」


 何か誤魔化されたような?まぁいいか。今日ってかもう昨日か。お互い遊園地ではしゃいでその後も慣れない事して疲れたしな。
 最後に律にキスをしようと思い切って寝返りを打って向き合う体勢になった。


「ふぅ、腰もやられたか」

「夏樹の腰とお尻が治るまでお世話してあげる♡」

「そりゃ頼もしいや。律、おやすみ」

「ん。おやすみ夏樹♡」


 俺からキスをすると、暗がりで律の笑顔が薄っすら見えた。

 俺のイケメン彼氏。いつでもカッコよくて、優しくて、何でも出来て、でもすげぇヤキモチ焼きで、俺以外にはあっさりしてるそんな彼氏。

 律自身にいろいろ問題もあって不安定な男だけど、それでも俺は律がいいと思った。

 面倒くさがりだった俺を変えた律。
 これからもずっと一緒に居たい。
 心からそう思って再び眠りについた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

俺の幼馴染はストーカー

凪玖海くみ
BL
佐々木昴と鳴海律は、幼い頃からの付き合いである幼馴染。 それは高校生となった今でも律は昴のそばにいることを当たり前のように思っているが、その「距離の近さ」に昴は少しだけ戸惑いを覚えていた。 そんなある日、律の“本音”に触れた昴は、彼との関係を見つめ直さざるを得なくなる。 幼馴染として築き上げた関係は、やがて新たな形へと変わり始め――。 友情と独占欲、戸惑いと気づきの間で揺れる二人の青春ストーリー。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...