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2章
心の変化
しおりを挟む律の住むマンションに着くなり抱き締められた。身動きが取れず困ってると、首にキスをされた。
「律、とりあえず中入ろ?」
「んー、ずっとくっ付いていたい」
「分かったから。今日はずっとくっ付いていような」
「うん♡」
俺がそう言うと、嬉しそうにニッコリ笑った。そんな律が可愛いくて俺からギューってしてやった。
「もーお前可愛い!」
「可愛い?かっこいいじゃなくて?」
「何か今可愛いって思った」
「悪くないかも?でもかっこいいがいいなぁ」
「律のかっこいいは標準装備だろ」
「あは、装備って何ー?夏樹面白い」
話しながらリビングに行く。律んちにも慣れたもんで、もう勝手に風呂まで沸かせるようになった。湯張のタイマーを掛けてその間に寝室に行って着替えたりいろいろ済ませる。
その間も律は俺にベッタリ張り付いていた。
「律さーん、ちょっと動きにくいんだが」
「今日はずっとくっ付いてるって言ったじゃん」
「言ったけど、限度があるだろ。これじゃ何も出来ねぇよ」
「何かしたいなら俺がしてあげる♡」
「全く、じゃあ喉が乾いたからコーヒー作ってよ」
「はーい♡」
俺が言うと嬉しそうにリビングに向かう律。やっと離れたか。離れて欲しい訳じゃないけど、くっ付かれてると動きにくい時があるから着替える時とかはこうして一人の方が効率がいいんだ。
着替え終わってリビングに行くと買っておいたインスタントコーヒーのいい匂いがした。
「夏樹出来たよー♡」
「サンキュー。っと、また電話?」
淹れて貰ったコーヒーを飲もうとカウンターのとこに行くと置いておいたスマホが光ってるのに気付いた。
今度はメッセージだったみたいだ。
「メッセージ?澪かな」
「なんてー?」
「……あ、違う」
「誰から!?」
「大和だ」
「…………」
俺が名前を言うと律の顔が強張った。内容は「こんばんは!大和だよ。番号、澪くんに聞いちゃった♪さっきの電話も俺だよ。今日誕生日だったんだね。おめでとう♪これからもよろしくね」ってメッセージだった。
相手が誰だか分かったから俺はホッとしたけど、律はそう言う訳にはいかないみたいで、メッセージの内容も見せたけど、少し元気が無くなったように見えた。
「律、この通り大和は悪い奴じゃないんだ。律も仲良くなれるから」
「俺は夏樹がいればいい。仲良くなれなくてもいい」
「はぁ、分かった。俺が悪かったよ。今度からは一緒にいる時はスマホとか見ないようにするよ。そうすれば律も気にしなくて済むだろ?」
「ううん。俺が悪いんだよ。緊急の時もあるだろうし、見てもいいよ。……ごめんね」
「律ー!元気出せよ!ほら、まだ俺の誕生日は終わってないだろ?律の笑顔見せてくれよー」
しょんぼりする律に近寄って頭を撫でてあげると、俯いたまま上目遣いで見て来た。
いつもと違う律の表情にドキッとしてしまう。
本当にかっこいいなこいつ。
「なぁ律、キスしたい」
「えっうん!」
俺の言葉に驚いた顔をして慌ててキスをしてくれた。誤魔化すとかじゃない。本当にしたかったからだ。
「律!早くお風呂入ろう!」
「え、コーヒーは?」
「出たら飲む!」
律の腕を引っ張ってお風呂に連れて行く。
なんだろう、やけに律とイチャイチャしたい気分だ。
律と風呂に入るのはもう慣れたけど、俺から引っ張って行く事はないから変な感じで、律も驚きながらも嬉しそうだった。
この時の俺はまだ気付いていないけど、きっと俺も律の事が欲しかったんだと思う。
律のいろいろな表情に心が動いて、改めて大切さに気付く。
俺の配慮が欠けていたのかもな。律を傷付けないように、もう少し気をつけよう。
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