未熟な欠片たち

pino

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2章

デートの帰り道

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 陽も落ちて来てちらほら帰る人達がいる中、俺達は大きな噴水の前にあるベンチに座って遊園地の真ん中にある大きなお城を眺めていた。
 あー、今日は律と一緒にいろいろ乗ったり見たり食べたり楽しかったなぁ。律もそう思っててくれたらいいけど。


「楽しかったね夏樹」

「へ?ああ、すっげぇ楽しかった!ありがとうな律」

「どうしたの?何考えてたの?」

「いや、恋人と誕生日過ごすの初めてだったけど、何かいいなって」

「夏樹……」

「俺にとって初めての事ばかりだけど、律だからこうして楽しめるのかもな。本当にありがとうな」

「ダメ。我慢出来ない!」

「ん?って、うわっ」


 いきなりキスをされて、慌てて離れる。暗くなって来たし行き交う人達はそこまで注目していなかったけど、やっぱり人前では抵抗がある。


「律!」

「だって~。夏樹が可愛い事言うからぁ」

「だからって外ではやめろよ!」

「ごめん……」


 しゅんとしてしまった律。ズルい!そんな顔されたら俺が悪い事したみたいじゃねぇか!


「言い過ぎたよ。恥ずかしいんだよ人前だと」

「うん。気を付けるよ」


 手を握ってやるとニコッと笑って言った。

 それから俺達は夜の遊園地の景色を楽しんでから帰る事に。


「夏樹、今日泊まるよね?」

「えっと、ああ」

「?」


 泊まるだろうなとは思っていた。いたけども……
 何だろ?今日は妙に緊張するって言うか……
 いつもと違うデートだったからか?


「夏樹?」

「ん、何でもない。何かお菓子買って行こうぜ」


 夜更かしセットを買って律ん家へ向かう。そこで俺のスマホが鳴った。


「電話?……誰だこの番号」


 知らない番号からの着信で、出るか迷ってたら律に止められた。


「危ないから出ない方がいいよ。本当に用があるならまた掛けてくるかもだし」

「そうだな。律の言う通りにする」

「てか俺以外の着信には出て欲しくないしね」

「ほんと俺の事大好きだな」

「うん。大好き♡夏樹がいたら何もいらないもん」


 律はいつもそう言うことを言う。
 嬉しい事を言われた筈なのに、一瞬悲しくなった。何でだろう。
 今俺は律と一緒にいられてとても楽しい。嬉しい事もたくさん言ってくれる。きっとこの先もずっと続くと思う。俺と律なら。
 でも何だろ?この悲しさは……


「なぁ律」

「なぁに?」

「律は俺が何をしたら嫌いになる?」

「何その質問?」

「深い意味はねぇよ?いつも俺の事好きって言ってくれるからさ~。気になったんだよ」

「俺が夏樹を嫌いになるなんて想像出来ないから思いつかないよ」

「はは、俺も想像できねー」


 律に嫌われたら俺、どうなるんだろ。
 今の状況が当たり前だから今は想像とか出来ないけど、いざ嫌われでもしたら普通にしてられるのかな。


「悪いな、変な事聞いて」

「逆に夏樹は?何をされたら俺を嫌いになる?」

「んー、あ、嘘つかれたらやだかも」

「なら大丈夫だね。俺夏樹には嘘つかないから」

「上手く嘘つきそうだもんな」

「それ酷いよ。真実しか言わないよ」


 嫌いになるまではいかないけど、やだなとは思う。それぐらいならまだたくさん出てくるぞ。
 けど、やっぱり何をされても許してしまいそうだな。


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