未熟な欠片たち

pino

文字の大きさ
上 下
31 / 52
2章

再会

しおりを挟む


 そして期末テストも無事に終わって、みんなピリピリムードから浮かれムードに切り替わる。
 俺達も早くマキさんの店に行きたいところなんだが、今日は教室の掃除当番だからそれを片付けてからになる。


「さっさとやっちゃうか」

「俺、廊下やってくるね」


 掃除当番は班ごとにやる事になっていて、俺と律は同じ班。他の二人は机を移動させて教室を掃いてくれるみたいだから俺は窓を拭く事にした。
 大掃除とは違って簡単なものだからすぐに終わるけど、掃除は苦手だ。この窓拭きだって、どこまで拭けばいいのか迷うんだ。上まで拭けと言われたらこのままじゃ届かないから椅子に登って拭く事になるし、かと言って届く所まででいいと言われても上は汚いままだから余計に汚れが目立っちゃうだろ?どこまでやればいいのかが分からない。


「夏樹ー、終わりそう?」

「あ、律~手伝って~」


 掃除が得意な律が廊下の掃除を終わらせて助っ人に来てくれた。
 

「あ、じゃあ窓は俺が拭いておくからゴミ捨て行って来れる?二人も掃き終わったみたい、後は机を戻して終わりだから」

「それなら出来るぞ♪」


 結局いつも俺はこの担当になる。律が甘やかしてくれるから助かるぜ。ゴミ箱のゴミを回収して廊下を歩く。
 校舎の裏側にあるゴミ捨て場にゴミを置いて戻る途中の中庭で、昨日の青い髪の生徒を見かけた。今度はこちらを見て立ち止まっていた。


「なっちゃん?」

「あ!やっぱり大和か!」


 どうやら気のせいじゃなかったらしく、俺が名前を呼ぶとパァッと明るく笑って駆け寄って来た。
 望月大和。小学校の時に一緒に遊んでいた友達で、澪や弘樹とも遊んだ事がある。大和が転校してからは音沙汰なかったから会うのは六年振りぐらいだった。


「なっちゃんだぁ!」

「はは、別人になっててすぐに分からなかったぞ」


 見た目は大分変わったけどな。俺の知る大和は内気でいつも誰かの後ろにいるようなやつだった。今の大和は切れ長の目ぐらいしか面影が無かった。


「それにしても背伸びたな!俺より小さかったのに、俺よりデカくなってんじゃん」

「中学上がったら急に伸びたんだ。なっちゃんは変わらないな!いや、ますます美人になったな」

「美人か、それ褒めてんのか?」

「褒めてるよ!なっちゃんもこの高校だったんだな」

「澪と弘樹もいるよ。てか大和ってクラスは……」

「夏樹!大丈夫?」


 走って来たのか息を切らした律が俺の分の鞄を持って、俺と大和の間に立った。大和との再会に盛り上がってゴミ捨てしてたの忘れてた。


「大丈夫大丈夫!昨日の厳ついの、やっぱり知り合いだったみたいでさ」

「ちす!望月大和す!なっちゃんの友達?」

「なっちゃん?」


 あ、律ってば警戒してるな。今の大和の見た目はアレだけど、心配するようなやつじゃないんだけどな。


「大和とは小学校の時一緒だったんだよ。久しぶりに会ったから挨拶してたんだ。澪たちも知ってるよ」

「へー」

「あー、こっちは和久井律!じゃあ俺達帰るから、またな大和!」


 これはまずい空気になりそうだ。律の機嫌が悪くなる前に立ち去る事にした。お腹も減ったしな。
 律が鞄を持って来てくれたのでそのまま学校を出た。


「なっちゃんだって」

「律~、大和はただの友達!なんもないから気にすんなよ~」

「だって、夏樹を取られるの嫌なんだもん」

「俺は律だけだから心配すんな」

「夏樹は友達多いよね。誰とでもすぐに仲良くなるし。ごめんね俺がこんなんで。夏樹の良いところが台無しだよね」

「……友達はいっぱいいるけど、俺は友達より律だよ。そんな俺に文句言う友達ならいらない」


 実際、澪も弘樹も変わらず側に居てくれるしな。そうじゃなきゃ友達って言わないんじゃないかって思うし。


「夏樹ぃ♡ずっと俺が一番でいてね♡」

「いるよ!いるからここで抱きつくな!」


 さすがに街中で抱きつかれるのは恥ずかしかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染

海野
BL
 唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。  ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

処理中です...