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2章
再会
しおりを挟むそして期末テストも無事に終わって、みんなピリピリムードから浮かれムードに切り替わる。
俺達も早くマキさんの店に行きたいところなんだが、今日は教室の掃除当番だからそれを片付けてからになる。
「さっさとやっちゃうか」
「俺、廊下やってくるね」
掃除当番は班ごとにやる事になっていて、俺と律は同じ班。他の二人は机を移動させて教室を掃いてくれるみたいだから俺は窓を拭く事にした。
大掃除とは違って簡単なものだからすぐに終わるけど、掃除は苦手だ。この窓拭きだって、どこまで拭けばいいのか迷うんだ。上まで拭けと言われたらこのままじゃ届かないから椅子に登って拭く事になるし、かと言って届く所まででいいと言われても上は汚いままだから余計に汚れが目立っちゃうだろ?どこまでやればいいのかが分からない。
「夏樹ー、終わりそう?」
「あ、律~手伝って~」
掃除が得意な律が廊下の掃除を終わらせて助っ人に来てくれた。
「あ、じゃあ窓は俺が拭いておくからゴミ捨て行って来れる?二人も掃き終わったみたい、後は机を戻して終わりだから」
「それなら出来るぞ♪」
結局いつも俺はこの担当になる。律が甘やかしてくれるから助かるぜ。ゴミ箱のゴミを回収して廊下を歩く。
校舎の裏側にあるゴミ捨て場にゴミを置いて戻る途中の中庭で、昨日の青い髪の生徒を見かけた。今度はこちらを見て立ち止まっていた。
「なっちゃん?」
「あ!やっぱり大和か!」
どうやら気のせいじゃなかったらしく、俺が名前を呼ぶとパァッと明るく笑って駆け寄って来た。
望月大和。小学校の時に一緒に遊んでいた友達で、澪や弘樹とも遊んだ事がある。大和が転校してからは音沙汰なかったから会うのは六年振りぐらいだった。
「なっちゃんだぁ!」
「はは、別人になっててすぐに分からなかったぞ」
見た目は大分変わったけどな。俺の知る大和は内気でいつも誰かの後ろにいるようなやつだった。今の大和は切れ長の目ぐらいしか面影が無かった。
「それにしても背伸びたな!俺より小さかったのに、俺よりデカくなってんじゃん」
「中学上がったら急に伸びたんだ。なっちゃんは変わらないな!いや、ますます美人になったな」
「美人か、それ褒めてんのか?」
「褒めてるよ!なっちゃんもこの高校だったんだな」
「澪と弘樹もいるよ。てか大和ってクラスは……」
「夏樹!大丈夫?」
走って来たのか息を切らした律が俺の分の鞄を持って、俺と大和の間に立った。大和との再会に盛り上がってゴミ捨てしてたの忘れてた。
「大丈夫大丈夫!昨日の厳ついの、やっぱり知り合いだったみたいでさ」
「ちす!望月大和す!なっちゃんの友達?」
「なっちゃん?」
あ、律ってば警戒してるな。今の大和の見た目はアレだけど、心配するようなやつじゃないんだけどな。
「大和とは小学校の時一緒だったんだよ。久しぶりに会ったから挨拶してたんだ。澪たちも知ってるよ」
「へー」
「あー、こっちは和久井律!じゃあ俺達帰るから、またな大和!」
これはまずい空気になりそうだ。律の機嫌が悪くなる前に立ち去る事にした。お腹も減ったしな。
律が鞄を持って来てくれたのでそのまま学校を出た。
「なっちゃんだって」
「律~、大和はただの友達!なんもないから気にすんなよ~」
「だって、夏樹を取られるの嫌なんだもん」
「俺は律だけだから心配すんな」
「夏樹は友達多いよね。誰とでもすぐに仲良くなるし。ごめんね俺がこんなんで。夏樹の良いところが台無しだよね」
「……友達はいっぱいいるけど、俺は友達より律だよ。そんな俺に文句言う友達ならいらない」
実際、澪も弘樹も変わらず側に居てくれるしな。そうじゃなきゃ友達って言わないんじゃないかって思うし。
「夏樹ぃ♡ずっと俺が一番でいてね♡」
「いるよ!いるからここで抱きつくな!」
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