30 / 52
2章
すれ違った人
しおりを挟む季節は夏。ジリジリと照らす太陽にミンミンと鳴く蝉の声。毎日暑くて学校に行くのも億劫で、早く夏休みになればいいのにと願う今日この頃。
そして時間の区切りを告げる鐘が鳴ると同時に静まり返った教室、いや校舎中が一斉に騒がしくなった。
そう、正に今は三日間に渡って行われる期末テストの二日目だったのだ。
「いやー終わった終わった!これであと一日だぁ!」
「夏樹、明日終わったらマキさんのところ行こうよ」
「いいね~!テストお疲れ様の打ち上げだな」
「マキさん、夏樹の事気に入ってるから喜ぶよ」
マキさんとは律の叔母さんで、旦那さんと二人で喫茶店を経営している人だ。律とたまに行ってる内にマキさん達と仲良くなれた。
「晴人さんのパンケーキ美味しいんだよなぁ♪今度作り方聞いていいかな?」
「いいと思うよ。教えてもらったら俺に作ってね♡」
期末テストがあったから最近律と放課後過ごす事を控えていたから明日以降が楽しみだった。
帰る為に律と廊下を歩いていると、会議室から出て来た生徒とすれ違った。その時一瞬目が合って、通り過ぎた時に振り向くけど、相手はそのまま歩いて行った。気のせいか?
「夏樹?どうしたの?」
「いや、知り合いかと思ったけど、気のせいみたいだ」
すれ違った生徒はもう見えなくなっていて、あまり気にしない事にした。
青い髪に、たくさんのピアス。緩く縛られたネクタイはだらしなく曲がっていた。知り合いかと思ったのは目を見た時だ。切れ長の鋭い目。小学校の時に少しだけ遊んだ友達に似ていたんだ。その友達は転校してしまったからそのあとはそれっきりだったんだけど、何故かさっきの人を見たら思い出した。
「えー、あんな危なそうな知り合いがいるの?ちょっと心配だなぁ」
「いや、目が似てただけで見た目は変わってたけど、多分人違いだろ」
律の言う通り、さっきの生徒はこの学校には珍しいヤンキーだった。俺の知ってるその人はヤンキーじゃなかったしな。
それよりも明日のテストの後の事だ。最終日は午前中で終わるからいっぱい遊べるんだ。マキさんの店でお昼食べてその後律と遊びに行くんだけど、まだ決めてないんだ。
「律は明日行きたいとこある?」
「あ、買い物行きたいかな。行きたい店があるんだけど、ちょっと付き合ってくれない?」
「いいよ。どこ?」
「秘密♡」
「何で!?」
「お楽しみって事で」
行き先を教えてくれないとか怪し過ぎるぞ。まぁ律だから変な店ではないと思うけど、俺も久しぶりに買い物したかったしちょうどいいや。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話
ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに…
結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
森光くんのおっぱい
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
「下手な女子より大きくない?」
そう囁かれていたのは、柔道部・森光の胸だった。
僕はそれが気になりながらも、一度も同じクラスになることなく中学校を卒業し、高校も違う学校に進学。結局、義務教育では彼の胸を手に入れることはできなかった。
しかし大学生になってから彼と意外な接点ができ、意欲が再燃。攻略を神に誓う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる