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2章
すれ違った人
しおりを挟む季節は夏。ジリジリと照らす太陽にミンミンと鳴く蝉の声。毎日暑くて学校に行くのも億劫で、早く夏休みになればいいのにと願う今日この頃。
そして時間の区切りを告げる鐘が鳴ると同時に静まり返った教室、いや校舎中が一斉に騒がしくなった。
そう、正に今は三日間に渡って行われる期末テストの二日目だったのだ。
「いやー終わった終わった!これであと一日だぁ!」
「夏樹、明日終わったらマキさんのところ行こうよ」
「いいね~!テストお疲れ様の打ち上げだな」
「マキさん、夏樹の事気に入ってるから喜ぶよ」
マキさんとは律の叔母さんで、旦那さんと二人で喫茶店を経営している人だ。律とたまに行ってる内にマキさん達と仲良くなれた。
「晴人さんのパンケーキ美味しいんだよなぁ♪今度作り方聞いていいかな?」
「いいと思うよ。教えてもらったら俺に作ってね♡」
期末テストがあったから最近律と放課後過ごす事を控えていたから明日以降が楽しみだった。
帰る為に律と廊下を歩いていると、会議室から出て来た生徒とすれ違った。その時一瞬目が合って、通り過ぎた時に振り向くけど、相手はそのまま歩いて行った。気のせいか?
「夏樹?どうしたの?」
「いや、知り合いかと思ったけど、気のせいみたいだ」
すれ違った生徒はもう見えなくなっていて、あまり気にしない事にした。
青い髪に、たくさんのピアス。緩く縛られたネクタイはだらしなく曲がっていた。知り合いかと思ったのは目を見た時だ。切れ長の鋭い目。小学校の時に少しだけ遊んだ友達に似ていたんだ。その友達は転校してしまったからそのあとはそれっきりだったんだけど、何故かさっきの人を見たら思い出した。
「えー、あんな危なそうな知り合いがいるの?ちょっと心配だなぁ」
「いや、目が似てただけで見た目は変わってたけど、多分人違いだろ」
律の言う通り、さっきの生徒はこの学校には珍しいヤンキーだった。俺の知ってるその人はヤンキーじゃなかったしな。
それよりも明日のテストの後の事だ。最終日は午前中で終わるからいっぱい遊べるんだ。マキさんの店でお昼食べてその後律と遊びに行くんだけど、まだ決めてないんだ。
「律は明日行きたいとこある?」
「あ、買い物行きたいかな。行きたい店があるんだけど、ちょっと付き合ってくれない?」
「いいよ。どこ?」
「秘密♡」
「何で!?」
「お楽しみって事で」
行き先を教えてくれないとか怪し過ぎるぞ。まぁ律だから変な店ではないと思うけど、俺も久しぶりに買い物したかったしちょうどいいや。
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