未熟な欠片たち

pino

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1章

二人でずっと

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 ベッドの中で律と抱き合ってお互いを感じ合っていた。暖かい温もり。誰かとこうしている事がこんなに安心するなんて思いもしなかった。


「律は俺を必要としてくれてるけど、俺にとっても律は必要なんだ」

「?」

「律と会う前までの俺ってめんどくさがりで何かに一生懸命になる事ってなかったんだ」

「そうなの?」

「でもさ、律の事になると何かしてやりたいって思っちゃうんだよな。ほっとけないって言うか、澪や弘樹とは違う気持ちになるんだ」

「特別って事?」

「うん。知らない間に律にすげー影響受けてたみたい」

「それなら嬉しいな。もっと夏樹が俺色に染まったらいいのに」

「もう染まってるっての」

「もっとだよもっと。例えば心だけじゃなくて体もとか」

「体も?」

「キスの先、してみない?」

「はぁ!?」

「えー、だめぇ?」

「それって、いや、この場合どうやるんだ?」


 正直、キスの先が何なのかは分かる。だけど、男同士で出来るものなのか?いや、無理だろ。


「俺も良く知らないけど、夏樹としたいなぁって♡」

「知らないのに出来るのか?」

「自然に出来るんじゃない?」

「いや、何か怖い」

「夏樹は俺としたいって思わないの?」

「う……キスはしたい」

「セックスは?」

「ハッキリ言うな!」

「うーん、分かったよ~。夏樹がしたいって思ってくれるまで待つよ」

「本当か?何か、ごめん」

「ううん、謝らないでよ。代わりにチューはいっぱいするんだから♡」


 そう言って早速濃いキスをされた。
 大分慣れたけど、律はいつも自然にしてくるんだよな。手慣れてるっていうの?て事はその先も経験済み?だからしたがってるのか。あれっなんだこの心のモヤモヤは!


「んんっ……はぁ!なぁ律!」

「なにー?」

「律はキスの先を誰かとした事があるのか?」

「あるけど、なんで?」

「いや、なんでもないっ」


 やっぱりあるんだ!俺は律の顔が見れなくなって、背中を向けると、すぐに後ろから抱きしめられた。


「夏樹?怒ってるの?」

「怒ってないっ!離れろ」

「どうして?離れたくないよ」


 モヤモヤがバレたくなくて突き放す言い方になってしまった。それに律は更に強く抱き締めて来て、震えた声を出していた。


「……離れろなんて言って悪かったよ。なんかさ、律が他の人とそういうのしたんだって思ったら、なんか……嫌だなって」

「それって、ヤキモチ?」

「そうみたいだ」

「嬉しい♡夏樹がヤキモチやいてくれたー♡」

「何で喜ぶんだ?」

「だって嬉しいんだもん♪ちなみに最後まではしてないよ。出来なかったが正解かな」

「そうなのか?」

「うん。だって上辺だけの好きだったから、直前になって気持ち悪くなっちゃったの。だから俺も夏樹と一緒で初めてなんだよ♡」

「そ、そっか!なら早く言えよな!俺のモヤモヤ返せ」

「返しませーん。ねぇ夏樹、これから一緒にいっぱい初めての事しよう!」

「いいぜ。例えば?」

「セックス」

「ほ、他には?」

「旅行とか行きたいな」

「いいね♪海とか行きたい」

「あと、遊園地にも行きたいし、映画も観に行きたい」

「やる事たくさんあり過ぎて忙しくなりそうだな」


 律とこれからの話をして盛り上がってつい夜更かしをしてしまった。とても楽しい時間だった。
 きっと律とはこの先もずっと一緒にいるだろう。それなら今日話した事だって全部出来るはずだ。時間掛かってもいい。律が俺としたい事は極力叶えてあげよう。
 なるべく律が笑顔でいられるように。



✳︎1章 完✳︎








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