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1章
お風呂
しおりを挟むそれからしばらくして律も落ち着いたので俺達は帰る事にした。今は人に会いたくないって言うから俺の家だと親がいるので律の家に行く事になったので、母さんにはクラスメイトとの焼肉の後に盛り上がってそのまま泊まる事になったとメッセージを送っておいた。
俺と律は人目も気にせず手を繋いで歩いた。当たり前のように、普通の事のように。
マンションに着いて部屋に入るなり抱き締められた。
「律、ここ玄関だぞ」
「離れたくない」
「離れないから大丈夫だから」
甘えてくる律を引っ張りながら部屋に上がる。律の部屋に行き、とりあえず風呂を借りようとした。
「風呂借りるぞ?俺焼肉臭いだろ」
「一緒に入りたい」
「えっそれは……」
「お願い夏樹」
「うう……」
これはたまに言われていた事。恥ずかしいからといつも断っていたけど、今日ばかりは断りずらい。かと言って一緒に入るのも心の準備がまだ出来てない。
「夏樹の全部が見たい」
「はぁ、分かったよ」
「いいの?」
「いいけど、恥ずかしいからあんま見るなよ」
「分かった!すぐにお風呂沸かす!あ、着替え用意するね」
一緒に入れるとなった途端に律は元気になり、テキパキと動き始めた。さっきまでは俺にベッタリくっついていたのに、これで元気になってくれるなら良かったのかもな。
律の家にはよく泊まりに来ていたので下着など最低限の俺の物はあったから助かった。
しばらくしてお風呂が沸いたのを知らせる音楽が聞こえた。
「夏樹ー、お風呂沸いたよー」
「ああ」
「脱がせてあげようか?」
「自分で脱ぐ!」
てか律は普通にしてるけど、恥ずかしくないのか?体育で着替えるのとは訳が違う。風呂だぞ風呂!全裸になるんだぞ?
「ん、じゃあ先に行ってるよ」
そう言って縛っていた髪を解いて普通に脱ぎ始める律。ダメだ直視出来ない。何だろうこの感情は。男同士なのに、すげぇ恥ずかしい。
「夏樹、早く~」
すっかり全裸になった律は俺を急かしながら浴室に入って行った。よし、俺も腹を括るか。
制服を脱いで浴室へ足を踏み入れる。
「夏樹、おいで。洗ってあげる」
「い、いいよ!自分で洗えるから」
「洗いっこしたかったなぁ」
「あのさ、律は恥ずかしいとかないの?俺すげー恥ずかしいんだけど」
「少しはあるよ。でもそれよりも一緒に入りたいから大丈夫」
「少しって、誰かと入るの慣れてるのか?」
「それはないよ。物心ついた頃からずっと一人で入って来たよ。誰かと入るのは律とが初めて」
「そっか」
「それよりも早く洗って入らないと風邪引いちゃうよ」
「あーもう、どうにでもなれっ」
確かにいつまでも恥ずかしがってたら浴槽に入れないな。俺は律に言われた椅子に座り、洗ってもらう事にした。全裸の律とか何か色っぽく見えてヤバい。既にシャワーでお湯を浴びてて濡れてるから余計に色っぽかった。
「お前イケメン過ぎ」
「夏樹もね。肌白くて綺麗だよね」
俺の腕をゴシゴシ洗いながらそんな事を言う。てか誰かに洗ってもらうってくすぐったいな。
「律、くすぐったいよ。やっぱり自分でやる」
「えー、じゃあ次俺を洗って♡」
律が使っていた体を洗うスポンジを取って洗っていると律が甘えて来た。それなら構わないかな。
自分が終わった後に、ボディソープを付け直して洗ってあげた。
「はいはい。動くなよー」
「わーい♪」
「子供かよ。ほらじっとして」
「あは、本当だ♪くすぐったいね」
「自分の体じゃないから加減が難しいな」
俺だって誰かとお風呂に入るのはデカくなってからは初めてだ。澪とは小学校高学年まで入ってたりもしたが、兄弟みたいな感覚だからこんな風に洗い合ったりした事なんかない。
初めは変な感じだったけど、慣れると悪くないな。
「よし、洗えた。髪は自分でいいよな」
「えー、洗って欲しいな」
「はぁ?目に入っても知らないぞ」
「瞑ってるから大丈夫だよ」
律が甘えん坊なのは分かってたけど、ここまでとは。人の頭を洗うのは直接触れるからか難易度が高かった。体を流した後もう一度頭からシャワーを掛けてもらっていざ挑戦。
あ、律の毛ってふわふわで柔らかい!見た目でも長くて綺麗な髪なのは分かるけど、触って初めて分かった新事実に俺は少し嬉しかった。
いろんな角度で洗ってみたけど、律の前に来てお互い向かい合う形で洗うのが一番洗いやすかった。
「律の髪って綺麗だよな。手入れとかしてるのか?」
「んーん。特にしてないよ。美容室には月に一回行ってるけど、そこでトリートメントしてもらってるぐらいかな」
「十分やってんじゃん!俺なんてニ、三ヶ月に一回だぞ。トリートメントなんてやってもらった事ないし」
「凄く気持ち良いからやってもらいなよ。ヘッドスパもオススメ」
「金持ちは違うな」
「……夏樹」
「なに?ってうわっ」
モシャモシャと律の頭を洗うのに夢中で思ったより近付いていたのか、いきなり胸にキスをされて驚いた声が出てしまった。
「何すんだよっビックリしたなー」
「だって目の前にあったから♡」
「だからってそんなとこ……もういい流すぞ!」
恥ずかしくてさっさと終わらせようと律の髪を流してあげる。そしてそのあとは各々自分で済ませて二人で湯船に浸かる。男子校生二人が入ってもまだ余裕のある浴槽に俺は大満足だった。
「いやーいつ入ってもいいよな~律ん家の風呂って」
「そう?一人だと広過ぎるよ」
「確かにな。掃除とか大変そうだな」
「掃除はとても大変。嫌いじゃないからいいけど、普通の男性だったらもっと汚くしてるんじゃないかな」
「律って綺麗好きだもんな。お手伝いさんだって週ニだから他は全部律がやってるんだろ?」
「うん。掃除と洗濯は好き。料理は全くやらないけどね」
へへと笑う律。ほぼ全部自分でやっている律は同年代からしたらかなり大人だろう。
普通の俺達男子校生なら親がやってくれて当たり前ってのがあるから心から凄いなと思う。
最近の俺は母さんに料理教えてもらってるけどな。
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