27 / 52
1章
お風呂
しおりを挟むそれからしばらくして律も落ち着いたので俺達は帰る事にした。今は人に会いたくないって言うから俺の家だと親がいるので律の家に行く事になったので、母さんにはクラスメイトとの焼肉の後に盛り上がってそのまま泊まる事になったとメッセージを送っておいた。
俺と律は人目も気にせず手を繋いで歩いた。当たり前のように、普通の事のように。
マンションに着いて部屋に入るなり抱き締められた。
「律、ここ玄関だぞ」
「離れたくない」
「離れないから大丈夫だから」
甘えてくる律を引っ張りながら部屋に上がる。律の部屋に行き、とりあえず風呂を借りようとした。
「風呂借りるぞ?俺焼肉臭いだろ」
「一緒に入りたい」
「えっそれは……」
「お願い夏樹」
「うう……」
これはたまに言われていた事。恥ずかしいからといつも断っていたけど、今日ばかりは断りずらい。かと言って一緒に入るのも心の準備がまだ出来てない。
「夏樹の全部が見たい」
「はぁ、分かったよ」
「いいの?」
「いいけど、恥ずかしいからあんま見るなよ」
「分かった!すぐにお風呂沸かす!あ、着替え用意するね」
一緒に入れるとなった途端に律は元気になり、テキパキと動き始めた。さっきまでは俺にベッタリくっついていたのに、これで元気になってくれるなら良かったのかもな。
律の家にはよく泊まりに来ていたので下着など最低限の俺の物はあったから助かった。
しばらくしてお風呂が沸いたのを知らせる音楽が聞こえた。
「夏樹ー、お風呂沸いたよー」
「ああ」
「脱がせてあげようか?」
「自分で脱ぐ!」
てか律は普通にしてるけど、恥ずかしくないのか?体育で着替えるのとは訳が違う。風呂だぞ風呂!全裸になるんだぞ?
「ん、じゃあ先に行ってるよ」
そう言って縛っていた髪を解いて普通に脱ぎ始める律。ダメだ直視出来ない。何だろうこの感情は。男同士なのに、すげぇ恥ずかしい。
「夏樹、早く~」
すっかり全裸になった律は俺を急かしながら浴室に入って行った。よし、俺も腹を括るか。
制服を脱いで浴室へ足を踏み入れる。
「夏樹、おいで。洗ってあげる」
「い、いいよ!自分で洗えるから」
「洗いっこしたかったなぁ」
「あのさ、律は恥ずかしいとかないの?俺すげー恥ずかしいんだけど」
「少しはあるよ。でもそれよりも一緒に入りたいから大丈夫」
「少しって、誰かと入るの慣れてるのか?」
「それはないよ。物心ついた頃からずっと一人で入って来たよ。誰かと入るのは律とが初めて」
「そっか」
「それよりも早く洗って入らないと風邪引いちゃうよ」
「あーもう、どうにでもなれっ」
確かにいつまでも恥ずかしがってたら浴槽に入れないな。俺は律に言われた椅子に座り、洗ってもらう事にした。全裸の律とか何か色っぽく見えてヤバい。既にシャワーでお湯を浴びてて濡れてるから余計に色っぽかった。
「お前イケメン過ぎ」
「夏樹もね。肌白くて綺麗だよね」
俺の腕をゴシゴシ洗いながらそんな事を言う。てか誰かに洗ってもらうってくすぐったいな。
「律、くすぐったいよ。やっぱり自分でやる」
「えー、じゃあ次俺を洗って♡」
律が使っていた体を洗うスポンジを取って洗っていると律が甘えて来た。それなら構わないかな。
自分が終わった後に、ボディソープを付け直して洗ってあげた。
「はいはい。動くなよー」
「わーい♪」
「子供かよ。ほらじっとして」
「あは、本当だ♪くすぐったいね」
「自分の体じゃないから加減が難しいな」
俺だって誰かとお風呂に入るのはデカくなってからは初めてだ。澪とは小学校高学年まで入ってたりもしたが、兄弟みたいな感覚だからこんな風に洗い合ったりした事なんかない。
初めは変な感じだったけど、慣れると悪くないな。
「よし、洗えた。髪は自分でいいよな」
「えー、洗って欲しいな」
「はぁ?目に入っても知らないぞ」
「瞑ってるから大丈夫だよ」
律が甘えん坊なのは分かってたけど、ここまでとは。人の頭を洗うのは直接触れるからか難易度が高かった。体を流した後もう一度頭からシャワーを掛けてもらっていざ挑戦。
あ、律の毛ってふわふわで柔らかい!見た目でも長くて綺麗な髪なのは分かるけど、触って初めて分かった新事実に俺は少し嬉しかった。
いろんな角度で洗ってみたけど、律の前に来てお互い向かい合う形で洗うのが一番洗いやすかった。
「律の髪って綺麗だよな。手入れとかしてるのか?」
「んーん。特にしてないよ。美容室には月に一回行ってるけど、そこでトリートメントしてもらってるぐらいかな」
「十分やってんじゃん!俺なんてニ、三ヶ月に一回だぞ。トリートメントなんてやってもらった事ないし」
「凄く気持ち良いからやってもらいなよ。ヘッドスパもオススメ」
「金持ちは違うな」
「……夏樹」
「なに?ってうわっ」
モシャモシャと律の頭を洗うのに夢中で思ったより近付いていたのか、いきなり胸にキスをされて驚いた声が出てしまった。
「何すんだよっビックリしたなー」
「だって目の前にあったから♡」
「だからってそんなとこ……もういい流すぞ!」
恥ずかしくてさっさと終わらせようと律の髪を流してあげる。そしてそのあとは各々自分で済ませて二人で湯船に浸かる。男子校生二人が入ってもまだ余裕のある浴槽に俺は大満足だった。
「いやーいつ入ってもいいよな~律ん家の風呂って」
「そう?一人だと広過ぎるよ」
「確かにな。掃除とか大変そうだな」
「掃除はとても大変。嫌いじゃないからいいけど、普通の男性だったらもっと汚くしてるんじゃないかな」
「律って綺麗好きだもんな。お手伝いさんだって週ニだから他は全部律がやってるんだろ?」
「うん。掃除と洗濯は好き。料理は全くやらないけどね」
へへと笑う律。ほぼ全部自分でやっている律は同年代からしたらかなり大人だろう。
普通の俺達男子校生なら親がやってくれて当たり前ってのがあるから心から凄いなと思う。
最近の俺は母さんに料理教えてもらってるけどな。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
純粋な男子高校生はヤクザの組長に無理矢理恋人にされてから淫乱に変貌する
麟里(すずひ改め)
BL
《あらすじ》
ヤクザの喧嘩を運悪く目撃し目を付けられてしまった普通の高校生、葉村奏はそのまま連行されてしまう。
そこで待っていたのは組長の斧虎寿人。
奏が見た喧嘩は 、彼の恋人(男)が敵対する組の情報屋だったことが分かり本人を痛めつけてやっていたとの話だった。
恋人を失って心が傷付いていた寿人は奏を試してみるなどと言い出す。
女も未体験の奏は、寿人に抱かれて初めて自分の恋愛対象が男だと自覚する。
とはいっても、初めての相手はヤクザ。
あまり関わりたくないのだが、体の相性がとても良く、嫌だとも思わない……
微妙な関係の中で奏は寿人との繋がりを保ち続ける。
ヤクザ×高校生の、歳の差BL 。
エロ多め。
珍しい魔物に孕まされた男の子が培養槽で出産までお世話される話
楢山コウ
BL
目が覚めると、少年ダリオは培養槽の中にいた。研究者達の話によると、魔物の子を孕んだらしい。
立派なママになるまで、培養槽でお世話されることに。
ショタ18禁読み切り詰め合わせ
ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる