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1章
説得
しおりを挟む三人で話し合ってから三日が経つが、弘樹とは教室で見かけても話をしていない。近くを通ったりしたら挨拶ぐらいはするけど、必要最低限のもので何だか変な感じだった。
「夏樹、今日はクラスの半分ぐらいが参加するみたいだよ」
「そうなんだ。結構集まるんだな」
そう、今日はクラス会が開かれる金曜日。カラオケの前にファミレスでご飯を食べるらしく、ファミレスに各々集合する予定だ。
「おーい、間宮~」
「あれ、田辺?どうした?」
名前を呼ばれて振り向くと弘樹の後ろの席の田辺がお願いと両手を合わせて来た。
「頼む!弘樹を説得してくれ」
「弘樹を?」
「今日の集まり、初めは参加する予定だったんだけど、いつの間にか不参加になってたんだよ~。聞いても行けないの一点張りでさぁ。間宮って弘樹と仲良いんだろ?頼むよ~」
「田辺くん、本人が行けないって言ってるなら無理に誘うのは良くないんじゃないかな」
「うおっ和久井ってば冷てー!だってぇ、弘樹にも参加して欲しかったんだよ」
「田辺ってさ、良いやつだな。分かった!俺が話してみる」
「夏樹!」
「普通に話すだけだ。それぐらいいいだろ?」
「いいけど……」
「サンキュー間宮~♪」
俺は田辺と一緒に本を読む弘樹に声をかけに行った。
「弘樹、ちょっといいか?」
「……どうしたの?」
「実は田辺に今日弘樹が参加しないって聞いてさ」
弘樹はチラッと田辺の方を見て、すぐに俺に向き直りニコッと笑った。
「うん。用が出来たんだ」
「そっか、少し顔出すだけでもダメか?カラオケはご飯の後らしいから、用が終わってからでもさ」
「弘樹少しでいいからさ、お願い!」
「田辺、夏樹を巻き込むなよ。はぁ、夏樹が言うなら顔出すよ」
「やったぁ♪間宮様々~♪」
「ありがとうな弘樹」
「うん」
その後弘樹はまた本を読み始めた。喜ぶ田辺を見ると、弘樹に懐いてるみたいだな。
「なぁ、田辺は弘樹と仲良くなりたいのか?」
「うん!でもなかなか冷たくて、前に間宮と笑顔で話してるの見たから俺も笑ってもらいたいなぁって」
「弘樹と俺は幼馴染だからな。弘樹ってあまり人付き合いしないんだ。でも優しいからきっと仲良くなれるよ。頑張れ」
「間宮に言われたら勇気出て来た!また相談乗ってよ~」
田辺は本当に明るいな。田辺みたいな人が弘樹の側に居てくれたら凄くいいと思う。
それから俺は田辺と別れて、じーっとこちらを見ている恋人の元へ戻る。
「お帰り夏樹!大丈夫だった?」
「うん。少しだけ顔出すって。元々弘樹はそういうの参加しないタイプなんだよ。でも田辺が仲良くしたそうだから応援したくなった」
「そっか。田辺くんっていつも高城くんに話し掛けてるもんね」
「時間は掛かるだろうけど、田辺なら大丈夫だろ」
「それよりも夏樹、今週末はどうする?」
「どうするって?」
「俺はまた夏樹と一緒に過ごしたいと思ってるんだけど」
あ、お泊まりの事か。そうだ、今度はパスタを作ろう。チラッと母さんに聞いたらパスタは誰でも簡単に出来るみたいだ。
「俺も律と一緒に居たいよ。なぁ、何パスタがいい?」
「作ってくれるの?嬉しい!パスタなら何でも好きだよ」
「じゃあ俺の好きなミートソースな!」
「楽しみだなぁ。じゃあ俺はサラダを作ろうかな」
楽しそうに笑う律、あれから弘樹の事を言う事はなくなった。こうして笑って楽しく過ごせている。澪がここに来る回数も減って、今ではお昼は律と二人で過ごしている。
うん。とても平和だ。
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