未熟な欠片たち

pino

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1章

話し合い

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 放課後、律と二人で授業をサボったので担任に呼び出されて職員室に来ていた。本当は弘樹と三人で話し合いたかったんだけど、弘樹を待たせる訳にはいかなかったのでとりあえず弘樹には何も言っていない。

 それよりも今は目の前にいる、鬼の様な形相の担任をどうにかしなくてはならない。中年男性で眼鏡をかけている俺達の担任は、怒ると小言がうるさいと有名だった。
 

「まったくお前らは、先週体育の授業も遅刻したそうじゃないか!」

「ごめんなさい。もうしません」

「理由を言いなさい」

「体育の時は違う廊下から行ったら道に迷ってしまったからです。今日は二人で昼寝したら寝過ごしてしまったからです。次からは目覚ましかけます」


 俺が考えた言い訳を話すと、担任はプルプル震えて怒るのを我慢しているようだった。このまま誤魔化し切れるかな。


「昼寝ってお前は赤ちゃんか!……和久井、本当にそうなのか?」

「はい。道に迷った時はすぐに近くにいる先生方に聞くべきでした。今日の件も天気が良かったからつい、反省してます」

「はぁ、いいか?新学期始まったばかりでいつまでも浮かれてるんじゃないぞ。こういうところから周りと差が出てきて……」


 その後も担任の説教はしばらく続いた。結局、それぞれ反省文を作文用紙一枚分、明日までに書く事になってしまった。
 解放される頃には既に校舎が静まり返っていた。


「はぁ、あんなに怒られると思わなかった。あの人、一時間ぐらいずっと喋ってなかった?」

「俺のせいで怒られてごめんね」

「お互い様だろ。反省文書くのに作文用紙買って帰らなきゃだな」

「反省文あるから今日の電話は厳しいかな」

「そうだな。俺、文章書くの苦手だから時間かかるし。そうだ、弘樹には明日の放課後空けとくように言っとくな。律も平気だよな?」

「うん。ありがとう」


 忘れない内に弘樹にメッセージ送っとこ。
 帰りに本屋で作文用紙を買ってそれぞれ家に帰る。にしてもいきなり反省文を書く事になるなんて、母さんに知られたら怒られそうだな。もうしばらくはちゃんと授業に出よう。
 

 次の日、休み時間に律と話してるとクラスのやつが話し掛けて来た。


「二人とも、金曜日の放課後暇?」

「特に予定はないけど、どうした?」

「そっか~、実はクラスのみんなと親睦を深めようって話しててカラオケなんかどうかなって。二人も参加でオーケー?」

「へー、楽しそう。なぁ律行こうぜ」

「うん。夏樹が行くなら俺も参加するよ」


 クラスのみんなとはたまにチラッと話すだけだから、そういう場で仲良くなるのもいいな。律も一緒だし、楽しそうだ。弘樹は行くのかな?


「そんな話が出てたなんて知らなかった」

「俺も初めて知ったよ。結構来るのかな」

「俺、大勢で賑わうの好きなんだよね。律は?」

「賑やかなのは苦手かな」

「そんな感じする。もし嫌だったら二人で抜けようぜ」

「あは、それも楽しそうだね」


 中学の時もよくみんなと集まって澪と二人で騒いだな。今回は澪はクラスが違うから居ないけど、また新しいメンバーってのもいいな。
 
 放課後になり、弘樹が鞄を持って話し掛けて来た。


「夏樹お待たせ」

「おう、律ー?行こうぜ」

「うん」

「話って、三人でするの?」


 弘樹には話の内容は言ってない。律もいる事に不思議そうに聞いて来た。


「うん。大事な話だからあまり人がいない所に行こう」


 それから弘樹は俺たちに黙ってついて来た。きっと弘樹の事だから大体の話の内容は勘付いてると思う。あー、なんか緊張してきた。
 着いたのは学校から少し離れた所にある公園。この前律と行った公園とは違って少し大きくて、子供が遊ぶ遊具や、草野球ぐらいならできる広さのグラウンドもあった。
 俺たちは誰も居ない机付きのベンチに座って話す事にした。


「和久井の表情を見るとあまり良い話じゃなさそうだね」


 弘樹が笑顔のまま言った。良い話か悪い話かは展開次第になるだろう。実際今の弘樹が俺の事をどう思っているかは分からないし。
 どう話を切り出したらいいか分からなかったので、単刀直入に聞く事にした。


「俺の勘違いかもしれないんだけど、弘樹ってさ俺の事好きなのか?」

「うん。好きだよ」

「えっと、その、俺とギューってしてチューってしたいって言う好きなのか?」

「へ?」

「夏樹っ」


 俺のいきなりな発言に、弘樹は目を点にして驚き、律は少し怒っていた。


「だ、だって何て言ったらいいか分からなかったんだ!」

「あはは、夏樹らしいね。和久井の前だから言いづらいけど、夏樹の言う通りギューってしてチューってしたい好きだよ」

「やっぱりそうなのか」

「高城くん!夏樹の彼氏は俺だからっだからっ」

「うん。分かってるよ。だから二人の邪魔はしないようにしてたつもりだけど、もしかして好きでいる事も許されないの?」

「それは大丈夫!だけど、今までみたいに俺を甘やかすのは辞めて欲しいんだ。少し寂しいけど、俺の事も澪と接するみたいにして欲しい」

「うん。分かった。夏樹が言うならそうする。これで和久井も満足かな?」

「…………」

「弘樹、いきなりこんな話してごめんな。このままじゃお互いの為にならない気がするんだ」

「そうだね。俺の方こそ困らせちゃったみたいでごめんね。夏樹、お幸せにね」

「ああ、ありがとう」

「じゃあ俺は先に帰るから。またね夏樹」


 終始笑顔だったけど、弘樹大丈夫かな。後で澪にフォローしてもらおうかな。
 残された俺達はしばらく座ったままそこにいた。


「律、これでいいか?」

「……高城くんて」

「ん?」

「高城くんてズルい」

「はぁ?何で?」

「ワガママ言う俺と違ってあっさり引いたりして大人だったじゃん。ズルいよ」

「まぁ、弘樹らしいっちゃ弘樹らしいかな」


 弘樹はあまり自分の意見を言わない。聞けば答えるけど、自分からは話して来ない。それは昔から変わらない事。今日の弘樹も淡々と俺の話を聞いてあっさり済ませてしまった。
 

「夏樹ありがとう。俺も約束守るから」

「ん、じゃ帰ろうか」


 最後に律が照れたようの笑ったから、俺は律の頭を撫でて立ち上がった。
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