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1章
戸惑い
しおりを挟む澪と仲直りした後、家に帰ってから律と弘樹にメッセージを送った。
『澪と仲直り出来た。心配かけてごめんな』
すると、律からすぐに返事が来た。
『それは良かった。今電話出来る?』
そう言われたから返信する代わりに俺から電話を掛けた。
『もしもし』
「あ、心配かけて悪かったな。なんか澪の方から謝って来たよ」
『ほんと?じゃあすぐに仲直り出来たんだね。安心したよ』
「金曜日にさ、弘樹が澪に説教してくれたらしいんだ。それが効いたみたいでさ」
『そっか』
「そうだ、弘樹と澪には律と付き合ってる事話したんだ。弘樹は驚きつつも喜んでくれて、澪も何か喜んでたよ」
『高城くんが喜んでたの?』
「うん。意外だった?弘樹はさ、俺の事大好きだから幸せになってもらいたいんだって」
『それ、本人が言ってたの?』
「うん。何かおかしいか?」
『いや、気になっただけだよ。澪くんと仲直りしたって事は明日から朝は澪くんと一緒かな?』
「そうなるな。あ!この後夕飯食べたらまた澪ん家に行くんだった!夜またメッセージするよ」
『うん。待ってるね。行ってらっしゃい』
電話を切ってリビングに向かう。気のせいか?最後の方の律、元気がなかった気がする。とりあえず夕飯食べよっと。
律との電話中に弘樹からもメッセージが来てて、喜んでもらえたみたいだった。弘樹のおかげだもんな~。後でお菓子でも買ってあげるか!
夕飯食べた後、お風呂に入って再び澪の部屋。澪も一通り終わったみたいで、既に部屋でドーナツを食べていた。
「おかえり夏樹~」
「美味しそうな物食べてんじゃん。てかバイト受かったんだって?おめでと」
「そうなんだよ♪今度遊びに来てー」
残りのドーナツを俺に差し出して、また違うお菓子の袋を開け出した。ほんと良く食べるな。肉じゃが食べたんだよな?
「基本土日メインで、平日はたまにシフト入れる事にしたよ。土日の方が時給いいからね」
「食べ物の為に土日犠牲にするとか澪らしいわ」
「まぁね♪ねぇねぇ、律くんとの馴れ初め聞かせてよー♡」
「馴れ初めって……金曜日に一緒に帰って、それでそん時に、アレだよそうなった訳だ」
「もーそこが詳しく聞きたいんじゃんっ!どっちから?」
「律、かな?」
「羨ましい~!俺もイケメンに告白されたいなぁ」
「何言ってんだ。結構告られてたろ澪は」
「イケメンにはされた事ないよ」
「…………」
「イケメンに告白されたい!」
「なぁ、そのイケメンじゃなきゃダメなのか?次は中身で選ぶとか」
「何言ってんの!まず見た目でしょ見た目!」
「ふーん。俺が律を好きかもって思ったのって、電話してからなんだよな。だから顔よりも話して好きになった気がするんだ」
「そりゃ一緒に居て楽しいとかも大事だけどさ、はぁ、夏樹はいいよね」
お菓子をボリボリ食べながら溜息を吐く澪。澪の好みは王道のイケメンだ。中性的な俺でもなく、和風な弘樹でもなく。誰からも認められるイケメン、正に律だ。中身の好みは聞いた事がない気がするな。
「澪の彼氏になったやつ大変そうだよな」
「いきなりディスらないでよ」
「だって、常に見た目を気にしてないといけないんだろ?イケメンじゃないと好きになってくれないとか可哀想じゃん」
「そう言う訳じゃないけど……でも言われてみればそうかもね」
「てかさ、隠れイケメンとかもいるんじゃね?磨いたら光る原石みたいな。そういうの見つけて澪が磨いてやりゃいいじゃん」
「うーん。それも悪くないかも?」
「今まで澪が振って来た中にもいるかもな隠れイケメンが」
「隠れイケメンかぁ」
「なぁ弘樹は?」
「ヒロくんが何?」
「弘樹なら大事にしてくれそうじゃん。優しいし、イケメンだし」
「あはは!ヒロくんは無いでしょ!確かにイケメンだけど、ヒロくんは無いよ~」
「何で?悪くないと思うんだけどな」
「夏樹ってさ、時々残酷だよね。そう言うところもイケメン心をくすぐるのかねぇ」
「俺が残酷だと?聞き捨てならん!」
「鈍感くーん」
鈍感。今日弘樹にも言われた言葉だ。正直どこが鈍感なのか分からない。今の発言の中に鈍感なところなんかあったのか?あ、幼馴染だから恋愛対象にはならないって事か?
「良くわかんねぇけど、それ弘樹にも言われたんだよ。気を付けようとは思うんだけど難しいのな」
「まぁこの件に関してはヒロくんもヒロくんなところがあるからね~」
「弘樹も関係あるのか?」
「もー、ヒロくんに怒られちゃうかもだから俺が言ったって言わないって約束してくれる?」
「するする」
この言い方だと弘樹の秘密か?もしかしたら、弘樹の欠点が聞けるのかもしれない。
「ヒロくんはイケメンでモテるよね?でも誰とも付き合わないのは不思議だね?」
「うん。ただ単に好きになれなかっただけかもだけどな」
「それ!散々告白されて来てるのに、一人も好きになれなかった理由!そーれーはー」
「それは?」
中々次の言葉を発しない澪はじっと待つ俺を見てニヤリと笑った。じれったくなって、少し睨むとえへへと笑って答えた。
「ヒロくんは夏樹の事がずっとずーっと前から好きだからだよ」
「うん。それは知ってるけど?それが何で他を好きにならない理由なんだ?」
「ちがーう!夏樹が思ってる好きじゃないの!幼馴染としてじゃなくて、ギューってしてチューってしたくなる好きなの!」
ギューってしてチューって、それってまるで律が俺にするやつみたいじゃん。いやいや、弘樹が俺をそんな目で見てるとかあり得ないだろ。
「そんな訳ないだろ。だって、弘樹にも俺が律と付き合った事話したけど、おめでとうって言ってくれたぜ?」
「ヒロくんてばまた……その時、夏樹の幸せがとか言ってなかった?」
「言ってた。俺が幸せなら十分って」
「やっぱりね。俺は結構前から気付いてたからヒロくんに聞いたんだよ。夏樹に告白しないのかって。そしたら、この気持ちを伝えるつもりはない、俺じゃ夏樹を幸せに出来ないからって」
「……え、マジなのか?」
「だから本当だってば!固く口止めされてるけど、バレバレなんだよ。気付いてないのは夏樹だけだと思うよー」
ちょっと待て。弘樹が俺の事を好きだと?それも恋愛対象としての好き?待て待て待て!いつから?なんで?
ヤバい、少し考えただけでも思い当たる節はたくさんある……
「嘘だろ、俺今まで弘樹に無神経な事言ってたりしたじゃん」
「それは気にしなくていいでしょ。ヒロくんが望んだ展開なんだし。これからも普通に友達としていればいいんじゃない」
「あ、だから律が睨んだりしてるのか」
「うわぁ、律くんならやりそうだね~。俺に対しても壁があるもん。夏樹を守る鉄壁のシールド!俺もイケメンに守られたいよぉ」
「なぁ、俺明日から弘樹にどう接したらいいんだ?」
「だから普通にしてればいいんだって。ヒロくんは夏樹の事が好きでも、側にいるだけでいい、夏樹が笑顔でいればそれでいいって考えなんだから。くれぐれも俺が話した事は言っちゃダメだよ!」
「それは分かったけど……」
澪の事でモヤモヤしたと思ったら今度は弘樹の事でモヤモヤする。普通にしてればって言っても普通に出来るか不安で仕方ない。
どうりで弘樹が俺に激甘な訳だよ。俺はそれの本当の意味も知らずに平気で甘えて来たっていうのか。
てか弘樹も何で言わなかったんだ?いや、言えねぇか。
とりあえず普通にいつも通りにするのを心掛けよう。
自分に言い聞かせるが、出来る自信は無かった。
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