未熟な欠片たち

pino

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1章

相談

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 律ん家を出たのはお昼前だった。律にはもっと一緒に居たいと言われたけど、澪の事で弘樹に相談しようと思って早く帰って来た。
 帰ってる途中で弘樹に電話をしたらこれから会えるらしいから近くのコンビニで待ち合わせをする事にした。


「遅くなってごめん」

「俺も今来たとこ。てか急に呼び出したの俺だし、来てくれてありがとうな」


 急いで来てくれたのか、髪が少し乱れていた。俺が言うとホッとしたように笑った。


「弘樹は何か食べた?まだなら奢らせてよ」

「まだだよ。どこに行こうか」


 落ち着いて話せる場所って言ったらファミレスかな。日曜日のこの時間は混んでそうだけど、仕方ないよな。


「あ、あそこのカフェはどう?軽食ならあるんじゃないかな」


 弘樹が指さしたのはチェーン店のカフェ。外から見た感じだと混んでなさそうだな。


「よし、あのカフェにしよう」


 二人で店に入って注文してから席に着く。予想通り席は空いていた。飲み物はすぐに受け取れたが、注文した軽食は後で店員さんが届けてくれるらしい。


「ところで相談って?」

「うん。澪の事なんだけど」

「うん」

「もう一度話し合おうと思ってるんだ。そこで弘樹に立ち会ってもらいたくて」

「それは構わないけど……実は金曜日の夜に澪に会ったんだ」

「まじ?何か言ってた?」

「夏樹の様子気にしてた。あと、和久井の事も」

「俺の事、まだ怒ってた?」

「うん。ずっと溜まってたみたいだよ。夏樹は気付いてないと思うけど、澪が好きになった人ってほとんどが夏樹を好きになるから。今までは仕方ないと思ってらしいけど、今回は虫の居所が悪かったみたい。あと、メッセージとかのタイミングが悪かったよね」

「そっか……やっぱり話し合ってもダメかなぁ」

「話し合うのはいいと思うよ。俺も二人には仲直りして欲しいと思ってるし」

「弘樹ありがとうっ!あとさ、まだ誰にも言ってないんだけど、律と付き合う事になったんだ」

「!」

「それもふまえて澪と話したいんだけど、大丈夫かな?」


 いきなりの付き合いました発言にさすがの弘樹も驚いていた。律の事好きかも~とは話したけどまさかこんなに早く付き合うとは思わないだろう。


「え、と……ごめん。驚いちゃった。あの、おめでとう」

「あ、ありがとう」

「うん。澪に話しても大丈夫だと思う。むしろ夏樹から話さないとダメだよね。それで更に怒るようなら俺から言うよ」

「弘樹ってほんと神!」

「それにしても急展開だね。学校でも二人はいつも一緒にいるけど、まさかもう付き合う事になってたとは」

「いやー、実はちょいちょい律はアピールしてたっぽいんだよね。俺が気付かなかったみたいで」

「ああ、なんとなく分かる気がする。和久井は初めから夏樹を見てたよね。俺凄い睨まれるもん」

「まじで?それ律に言うわ」

「俺は平気だけどさ、夏樹が幸せならそれで十分だよ」

「うん!俺今すげー幸せかも」


 幸せ報告をしていたら頼んでいたホットサンドが届いた。俺はピザ系ので、弘樹は野菜系のやつ。
 今日は澪の事を相談するつもりだったんだけど、律との話しになってちょっと楽しくなってしまった。少しだけ恋バナで盛り上がる女子の気持ちが分かった気がするぜ。


「澪はさ、夏樹の事が羨ましいんだと思うよ」

「律の事がか?」

「それもだけど、まずは綺麗な見た目と、それを嫌味に感じさせないサバサバした性格がさ。それによって人を惹きつける魅力。澪には無いものだから。澪には澪の魅力があるけど、本人にとってはコンプレックスだったりもするしね」

「あはは、俺の方が長く居るのに弘樹の方が澪の事を分かってるんだな」

「距離が近過ぎて分からない部分もあると思うよ。どちらかと言うと俺は第三者として見てるから、上辺しか分からないし。夏樹はね、優しいよ。その優しさは怠惰からくるものかもしれないけど、周りからしたらおおらかに感じて安心するんだ。澪は明るくて誰とでも話すよね。時には空気を読めないところもあるけど、それって誰にでも出来る事じゃないし、凄い才能だと思うんだ」

「俺ってそう思われてんだ……」

「今度はそれぞれの欠点を言ってあげる。夏樹はとにかく鈍感かな。正に今回澪と喧嘩した原因の一つだと思うし。澪の欠点は思い込みで行動するところだね。自分で思ったら突っ走る癖があるけど、もう少し冷静に行動できたらいいんじゃないかと思うな」


 さすが弘樹だ。俺達の事を良く分かってらっしゃる。確かに、俺がもう少し周りの人の気持ちとか自分の気持ちに早く気付けていたら違う展開になってたかもしれないよな。


「弘樹って俺たちの親か何か?」

「友達だよ。二人の事を偉そうに言ったけど、俺の欠点は二人の欠点を越えるものだよ」

「なになに?てか弘樹の欠点って無いだろ!」

「あるよ。欠点が無い人なんていないよ」

「優しすぎるとか?実際俺甘えちゃうし」

「ううん。俺は優しくなんかないよ。もっと暗くてじめっとしたものだよ」

「何か、なぞなぞみたいだな。一人でいること?いや、そんなの欠点とは言えないしなぁ。あーもぉ教えて!」


 いくら考えても弘樹の欠点なんて思い付かない。ホットサンドを食べながら微笑んでる弘樹は楽しそうに見えた。


「きっと分からないよ。そもそも欠点なんてのは考えようだしね。ある人から見たら長所だし、違う人から見たら短所になる事もある。だから欠点だからと言って悪い事とは限らないと思うよ」

「なんか難しいなぁ。でも弘樹に任せとけば大丈夫な気がする。俺は鈍感を直すよ」

「俺は可愛いくていいと思うけどね」


 クスクス笑う弘樹に言われても馬鹿にされてるとしか思えない。直すとは言ったものの鈍感ってどうやって直すんだ?
 それはさておき、本題に戻らなきゃ。


「澪と話すのさ、いつがいいかな?弘樹の予定もあるじゃん」

「俺はいつでも大丈夫だけど、澪ってバイト始めたんでしょ?土日はバイトだって言ってたよ」

「あ、ファミレス?受かったんだ」

「学校の近くのファミレスだって。澪に予定聞いてみようか?」

「いや、自分で聞く」

「そっか。じゃあ決まったら教えて」


 その後は飲み物を飲みながら最近のお互いの話しをして過ごした。弘樹とこんなにたくさん話すのは久しぶりな気がするな。
 基本的に弘樹は一人でいる事が多いし、誰かと話してるのを見ない。だから口数は少ない方だと思う。あ、これも弘樹が言う第三者目線なんだろうか。もしかしたらめちゃくちゃおしゃべりなのかもしれないな。


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