未熟な欠片たち

pino

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1章

二人で過ごす朝

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 目が覚めると目の前にイケメンが寝ていて、少し驚いた。そうだ、昨日から律ん家に泊まってたんだ。
 にしてもほんとかっこいいよなぁ。俺もこういう顔ならもっとモテてたかなぁ。とか考えてたら律も目を開けて、ニコッと笑って抱きついてきた。


「おはよう夏樹♡」

「おはよ律」

「起きたら夏樹がいるの幸せ~」

「よし、朝食作る!少し待ってて」

「俺も行くー」


 顔を洗って歯を磨いてキッチンに立つ。律も俺の後をついて来て横にいる。
 広いキッチンだったので、道具を見つけるのに苦労した。まず、まな板と包丁、それから鍋を用意して、冷蔵庫から昨日買った味噌と豆腐を取り出して台の上に置く。あと、ワカメを入れるんだけど乾燥している物を仕上げに入れる予定だ。


「夏樹の手料理が食べられるなんて嬉しいなぁ」

「味噌汁だけな。あ、レトルトのご飯チンしてくれる?」

「はーい。他にはやる事ある?」

「テーブル拭いて、箸とか用意しといてくれ」

「任せて」


 調理器具もだけど、食器類など白で統一されていて、棚に綺麗に並べられている。それとキッチンの感じからしてあまり使われていないみたいだった。


「なぁ律は料理しないのか?」

「しないよ。ここを使うのはお手伝いさんが夕飯を作ってくれる時だけかな」

「こんな広くて綺麗なのに勿体無いな」

「そうだ、夏樹が来たら作ってよ。練習中なんでしょ?」

「うん。いいけど、律ってあまり食べないんだよな?」

「夏樹が作ってくれるなら食べるよー」

「そっか。律の好きな食べ物って何?次作るよ」

「そうだなぁ」


 律と話しながら作業を続ける。もうあとは鍋を煮立たせて味噌を溶かすだけだ。次は目玉焼きとソーセージをフライパンで焼くだけ。これ、俺の好きな朝食メニューな。


「好きな食べ物はパスタかな?」

「パスタ俺も好きー!今度母さんに教わるから一緒に作って食べようぜ」

「うん!凄く嬉しいし、楽しみだよ」


 本当に嬉しそうに笑う律に、俺まで嬉しくなる。このままずっとこんなのが続けばいいんだけど、澪の件があるから少しモヤモヤするんだ。
 テーブルに出来上がった朝食を並べてお互い向かい合う形で座って二人で手を合わせた。


「いただきます」

「はい召し上がれ」


 自分が作った物を食べてもらうって何か緊張するな。母さんたちに食べてもらった時は緊張しなかったんだけど、変だな。


「夏樹!お味噌凄く美味しいよ!」

「そうか?良かった良かった」

「目玉焼きも少し焦げてていい感じだね」

「このくらいなら意外と出来ちゃうものだな。面倒なのは片付けだな」


 昨日の朝、母さんに片付けるまでが料理だと教わり、食器を洗って棚に戻したりしたが、結構大変だった。


「一緒に片付けよう。そうすれば早く終わるよね」

「サンキュー。なぁ相談なんだけどさ」


 ずっとモヤモヤしてるのも嫌だから澪の事を話してみようと思う。


「なに?」

「澪の事なんだけどさ、どうしたらいいかな?」

「澪くんか……あれから何かあった?」

「何もない。俺と律が付き合った事も知らない。てかこれは誰も知らない事だな」

「それなんだけど、夏樹はみんなに隠したい?」

「え、何で?」

「やっぱり男同士だし、抵抗ある人とかいると思うから。俺は隠したくないけど、夏樹が隠したいならそうするよ」

「そっか。いろいろ大変なんだな。でも知られてもいいと思う。俺、嘘とか下手だし」

「正直で良い事だね。じゃあ自分達からは言いふらさないで聞かれたら答えるぐらいでいいんじゃないかな?澪くんにもその内知られると思うけど、夏樹は堂々としていればいいと思うよ」

「俺から言わなくても大丈夫かな?」

「……夏樹は澪くんとまた仲良くしたい?」

「そりゃ仲良くしたいよ」


 澪は一番最初の友達で、一番長い付き合いだからな。そんな中でも喧嘩なんかした事がないぐらいずっと一緒に居た存在だ。出来る事なら仲直りしたい。


「ならもう一度話し合った方がいいかも。その時に俺達の事も伝えて。まず、澪くんが何に対して怒っているのか、それに対して夏樹は何が出来るのか。嫌じゃなければ俺も立ち会うよ。高城くんでもいいと思うし」

「確かに、この前はお互いカッとなって話し合いどころじゃなかったからな。うん。律の言う通りもう一度話し合ってみる!今度は冷静に話せるようにするよ」

「うん。それがいい」

「立ち会いは弘樹の方がいいかもな。澪が怒ってる理由は大体分かるし、律がいたら逆効果になるかもだしな」

「そうだね。なら高城くんに頼もう。何かあったらすぐに言ってね」


 ニコッと笑って背中を押してくれる律は俺が作った朝食を全部食べてくれた。少食なのに朝から頑張ってくれたんだろう。話を聞いてくれた事もだけど、その事が密かに嬉しかった。




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