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やっぱり好き【犬飼誠也編】

4.帰りの電車

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 映画を観終わった後、俺はこの後予定していたディナーをする店にはみんなを連れて行かずにそのまま解散する事を伝えた。

 映画の席も結局茜ちゃんとは離れ離れ。茜ちゃんと秋山を隣同士にして、それを挟むかのように桐原と桃山がそれぞれのパートナーの隣に座っていた。だから俺と七海ちゃんは端っこに座った。

 はぁ、本当今日何してんだろ俺。
 茜ちゃんにはずっと桃山が張り付いていて全然話せなかったし、他のカップルも堂々といちゃついてて羨ましいし。
 こんな事になるなら家で大人しくしてた方がマシだったぜ。

 みんなで駅へ向かう途中、それぞれのカップルの最後尾を俺は七海ちゃんと歩いていた。


「みんなしてイチャイチャしちゃってさ~!今日の予定立てたのって誠也でしょ?何でこんなメンツ集めたの?」

「元々茜ちゃんと二人だと思ってたんだよ。待ち合わせ場所に来てみたら桃山がいて、更に他のカップルも現れて……」

「浅はかだね。二之宮と二人でデート出来る訳ないでしょ。狂犬が付いてるんだから」

「なぁ、七海ちゃんってさ、もしかしたらだけど、茜ちゃんの事好き?」

「っそんな訳ないでしょ!!どうして俺が二之宮なんかっ!!」

「え、そうなの?今日の七海ちゃん見てたらそうなのかなって」

「……二之宮の事は嫌いじゃない!それだけ!」


 明らかにさっきまでとは違う取り乱した感じで必死に否定しようとしていた。まぁ七海ちゃんが茜ちゃんを好きってのは不思議な感じだけど、実際茜ちゃんをいじめてた俺も好きになったんだし変には思わないけどな。
 七海ちゃんは隠したいらしいな。


「そっか。俺さ、絶対茜ちゃんを振り向かせてやると思ってるんだけど、今日の茜ちゃん見てたらやっぱ無理なのかなって。茜ちゃんは俺の事を友達としか思ってなさそうだし」

「えー、そんな事ないよぉ?誠也かっこいいもんっ!……て言ってもらいたい?けど残念!俺誠也にはもう素で行くから」


 一瞬だけ、前のような可愛い七海ちゃんだったから驚いたけど、すぐにまた冷たい七海ちゃんに戻った。
 俺に冷たい理由が初めは分からなかったけど、今ならなんとなく分かる。お互い茜ちゃんを好きだからだろう。きっと七海ちゃんは俺の事もライバルだと思ってるんだ。


「七海ちゃんはすげぇや。人によっていろんな自分を見せられるんだから。さすが演劇部エースだな」

「別に凄くなんかない。俺だって好きでぶりっ子やってる訳じゃないもん」

「そうなの?でも可愛いし似合ってるよ?」

「それ誠也に言われてもなぁ~」


 そう言って前を歩く茜ちゃんに目をやる七海ちゃん。こうして訳を知ってしまえばとても分かりやすかった。俺と違って隠したいみたいだけど、想いは伝えないのか?


「誠也こそ凄いよ。堂々と二之宮に好きだって言えるんだから……俺ももっと素直になれたら……」

「やっぱり茜ちゃんの事を好きなんじゃ?」

「違うって言ってるだろ!」


 プリプリ怒り出す七海ちゃん。俺に対しての態度の原因が分かればもう怖くはない。
 
 みんなで駅に着いて電車に乗ってそれぞれの家路へ向かう。
 最初に降りるのは茜ちゃんと桃山だ。
 俺は特に茜ちゃんと話す事なく一人でドアの所に立っていた。

 今日は茜ちゃんとのデートに失敗したけど、これで良かったんかなって思う。諦める訳じゃないけど、ちょっと冷静になれた感じ?
 そもそもあの真面目な茜ちゃんが本命と付き合ってんのに他の奴の相手なんかする訳ねぇんだ。

 窓の外の景色を見てたら、後ろから「犬飼」と声を掛けられて振り向くとニッコリ笑う茜ちゃんがいた。
 あれ?茜ちゃんは桃山と椅子に座ってた筈だけど……座ってた筈の場所を見ると、桃山が足を組んで不機嫌そうに一人で座っていた。


「茜ちゃんどーしたの?」

「安心してくれ、湊にはちゃんと言って来たから。俺達はもうすぐ降りるし、今日誘ってくれたお礼がしたいってな」

「えー、そんなのわざわざいいのに!」

「いや、勝手に人を呼んだ事も謝りたかったんだ。犬飼とはあまり話せなかったし本当に申し訳ない」


 困ったように笑う茜ちゃん。そんな顔させたくないのに!俺は一生懸命平気だよと伝えると、茜ちゃんは肩に掛けてたショルダーバッグから綺麗にラッピングされた手の平サイズの紙袋を出して俺に渡して来た。中には小さい箱が入ってる感じ?
 えっ!何コレ!?


「これは誘ってくれたお礼だ。大した物じゃないけど受け取ってくれ。今日は楽しい時間を本当にありがとう。また一緒に遊ぼうな♪」

「茜ちゃん♡いや、俺も茜ちゃんと……みんなと遊べて楽しかった!また予定立てるから絶対遊ぼうな♪」


 その後茜ちゃんは桃山の所へ戻り、二人で到着した目的の駅で降りて行った。

 あ、茜ちゃんにプレゼント貰っちゃった♡今すぐにでも開けたい気分だったけど、まだみんながいるし家に帰ってからのお楽しみにしておく事にした。

 茜ちゃんは本当にしっかりしていて真面目だよな。ちゃんと挨拶していくなんてさ。
 それにやっぱり笑顔が可愛い♡

 あー、やっぱ茜ちゃんの事辞められねぇなぁ。
 茜ちゃんに本命がいてもいい。俺は茜ちゃんにとって二番目でもいいって思っちまった。

 てか俺が何かプレゼントしたかったなぁ~。
 茜ちゃんって何が好きなんだろ?
 今度何が好きなのか聞いてみよう♪
 
 俺は好きな人の事を考えてとても幸せな気分になった。やべ。顔ニヤけちまう♡

 そして少し離れた所に一条と立っている吉乃にドン引きされた顔をされて、一瞬で我に返って緩んだ顔を引き締めて俺も家に帰った。




 ✳︎完✳︎





 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 はい来ました!桃太郎ファミリーのお話!笑
 裏方リーダー犬飼誠也は、見た目の華やかさと柔らかい話し方で意外とモテるキャラだったりします。中身は知能的で、とても頭が良いです。いつも猿野と雉岡と悪さをしていましたが、もう卒業して今では良い子ちゃんになりました!
 本編の話的には球技大会後の週末のお話です。
 果たして茜ちゃんと結ばれる日は来るのでしょうか!?
 実は私事ですが、桃山が相手だと引き離すのに結構大変なんです。笑
 桃山は唯我独尊系なので、自分の物は自分の物。それに手を出す奴には容赦しない。そんなキャラなので……。伊織も恋人には同じタイプなんですが、桃山の方がやり方などが何倍も危険なのです。
 そして、敢えて茜ちゃんからのプレゼントは何だったのか書かなかったのですが、実は決めてあります♪これは本編で出せたらなと思っていますので、どこで出てくるのかお楽しみに⭐︎

 ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございました(^ ^)


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