どいつもこいつもサイドストーリー【短編集】

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やっぱり好き【犬飼誠也編】

2.ランチ

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 茜ちゃんとの初めてのランチ。
 事前に調べておいたカップル向けのお洒落なカフェは、白を基調にした作りで置いてある物とかも可愛い物や小洒落た物が多く、一つ一つの席が個室のような作りになっていて、二人の世界に入るのに最適な空間だった。
 
 そう、茜ちゃんと良い雰囲気を作る為に探したカフェなのに……何故か今、大人数の野郎共で賑わっていた。


「へー、なかなかセンスあるじゃん。今度茜と二人で来よーっと♪」

「犬飼は女子が好きそうな物は詳しいな」


 おいっ!桃山の為に見つけた店じゃねぇんだよっ!茜ちゃんと俺の為だ!
 茜ちゃんはのほほんと周りに置いてある物を見て笑ってるし!可愛いな!


「雰囲気は良いんじゃない?問題は味だよね~」

「ボンボンには大抵の味は庶民の味に感じるだろうな」


 うん!来ると思ったよ一条!最近茜ちゃんと仲良いもんな!料理の味は俺も知らねぇ!
 そしてお前もな吉乃!いつの間にか一条とラブラブになってやがった謎大き我が友よ!


「やっちまったな伊織!来る時マック食うんじゃなかった!」

「だなー。腹減り過ぎて我慢できなかったもんなぁ。まぁ貴哉の分は俺が出すし好きなの食えよ♪」


 正直お前らが来たのには驚いたぜ!秋山はすっかり俺の事許してくれてるみたいで安心したぜ!
 そして桐原は私服姿までカッコいいな!俺もなかなかだと思うけど、お前には負けるぜ!


「ねぇ、この状況何!?みんな見事にカップルなんだけど!」
 
「ああ、俺も思った。俺らすげぇ浮いてね?」


 ボックス席を二つ使ってんだけど、俺の対面して座ってるのは茜ちゃんカップル。そしてもう一つのボックス席に吉乃カップルと桐原カップル。  
 それで必然的に俺の隣には七海ちゃんがいる。七海ちゃんはそんな状況に、ブスッと怒ってるけど、それは俺が一番思ってるよ……
 茜ちゃんとデートだから下調べまできっちりして、服も昨日新調して、今日という日をどんなに待ち焦がれたか!
 その結果が何だ!見事に三つのカップルの交流場になってるじゃねぇか!


「あ、犬飼、ここのオススメは何だ?メニューがたくさんあって迷ってるんだ」

「えっ!茜ちゃん嫌いな物ある~?」


 目の前にいる茜ちゃんに聞かれて気持ちを切り替えて対応する。もちろんオススメを聞かれると思ってこの店の人気メニューは調べてある。
 茜ちゃんが広げていたメニューを覗き込みながら話題を広げていると、茜ちゃんの隣に座る黒い男が答えた。


「茜は彼氏いるのに手ぇ出そうとしてる男が嫌いだ。覚えとけ」

「「!!」」


 桃山に低い声で言われて俺と七海ちゃんはビクッと反応してしまった。
 茜ちゃんはそんな俺達を見てため息をついて桃山に言った。


「おい変な事を言うなよ。喧嘩しないって約束破る気か?」

「喧嘩なんかしないよーん♪犬飼が茜の好み知りたがってたから教えてあげたの♪感謝して欲しいぐらいだぜ~♪」

「えっと、好みって言っても食べ物の好みを教えてくれ」

「俺は何でも食べられるぞ♪好き嫌いするのは嫌なんだ」

「そうなんだぁ~!二之宮らしいね。俺は野菜全般苦手~。あと魚も~」

「七海ちゃん好き嫌い多そうだよな」

「え、てか野菜も魚もダメって普段は何を食べてるんだ?まさか肉?」

「お肉は好きだよ♪あとパスタとか好きー」

「あ、ここのオススメはパスタだよ。あとオムライスも」

「ほんとー?じゃあパスタにしよーっと♪ナポリタンにしよっかな~♪」

「パスタか。今は米の気分だから俺はオムライスにしよう」

「俺グラタン」

「あーはいはい。じゃあ俺もオムライスにしよっかな?」

「じゃあって何だよ?茜の真似する気か?」

「ち、違ぇよ!この店のオススメだからだよ」


 くそー!桃山がいちいち突っかかって来るなぁ!ここで良いムードを作りたかったのにこれじゃ茜ちゃんとまともに話せやしねぇ!
 
 
「茜~!この後映画観るんだろー?何の映画だぁ?」


 ここで違う席にいた秋山が割って入って来た。秋山は本当に良く茜ちゃんに懐いてる。演劇部で仲良くなったんだろうけど、今では秋山の立ち位置が羨ましく思う。
 俺も秋山みたいに茜ちゃんと仲良くなれていたら。いや、今は仲良くしてくれてるけど、出来れば桃山と付き合う前とかだったらワンチャンあったのかなって思うんだ。


「ああ、それは犬飼が決めてくれてるんだ。な?犬飼?」

「え?ああそだよ。風の彼方にって言う映画だ」


 茜ちゃんに話を振られてハッとする。
 俺が事前に調べておいた今人気の恋愛映画の題名を言うと、秋山は分からないと言った顔をしていた。秋山は恋愛映画とか見なそうだし興味なさそうだもんな。


「あ?何だそれ?伊織知ってっか?」

「知ってる。今ちょー人気じゃん。特に女子にな」

「女子ぃ?それ男8人で観ていいものなのかぁ?」

「あはは、確かに変な目で見られるかもね~♪俺それよりもデンジャーズが観たいなぁ~」

「アクション系か。俺もそっちのが興味あるわー。前作を観たけど、面白かったよ」


 一条と吉乃が全く違うジャンルの映画を持ち出して来た!そりゃ男だけで観るならそっちのが盛り上がるだろうよ!でも俺は茜ちゃんと良い雰囲気にする為に恋愛映画を観たいんだ!


「デンジャーズ!知らねーけど、面白そうだな!俺もそっちがいい!」

「俺は風彼の方が観たいな~。俳優の天音くんが出てるから~♡きゃー♡」

「あまねくん?」

「貴哉は無知過ぎ。ほらこの人だよ。戸叶天音とかの あまね。大人気若手俳優」


 また頭にハテナを浮かべてる秋山に桐原がスマホで画像でも出して見せてるのか二人で近寄ってイチャイチャしてた。羨ましいぜ!


「へー!こいつが天音くんかぁ~。そういやテレビで見た事あるな。母ちゃんが息子にしたいって言ってた。七海はこいつが好きなのか?」

「好きー♡あとねぇ、教師役で桐咲ナツヤも出てるんだよぉ♡」

「桐咲ナツヤ……あ!」

「貴哉」


 秋山が俳優な桐咲ナツヤって名前を聞いて何かを思い出したような反応をしていた。それを桐原が笑顔で首を傾げて見ていた。


「ああ!桐咲ナツヤの事も母ちゃんが好きだって言ってたな~ってさ!ふーん、そっかぁ。やっぱり俺、風のなんとかっての観たい!」

「俺も興味あったからそっちが観たい」


 おお!桐原カップルがこっちに着いた!てか茜ちゃん以外は他の映画観てくれてもいいんだよ。そっちの方が都合がいいしな。


「そんじゃあ俺と吉乃はデンジャーズ観ようかぁ♪映画館とか初めてだからワクワクするなぁ♪」

「え、一条、映画館初めてなの?」

「うん!映画とかは家にあるシアタールームで観れるからわざわざ行った事ないよ?」

「家にシアタールーム!金持ちは違ぇなぁ!」

「茜ぇ、俺達も二人で違うの観ようぜ~?てか映画とかダルいしホテルでも行こうぜ♡」


 桃山は相変わらずとんでもない馬鹿だな!ホテルは俺の予備プランに入っているんだよ!最後のディナーで上手く行ったら誘おうと思ってたのに!


「湊、和を乱すな。俺もみんなとその映画を観るぞ。犬飼が調べてくれたんだからな」

「茜ちゃん……♡」


 茜ちゃんが桃山の誘いを断って俺の意見を選んでくれた事に感動していると、みるみる桃山の表情がテレビで良く見る指名手配犯のような人相になって行った。
 俺はあまりそっちを見ないように天使茜ちゃんの笑顔に癒されていた。


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