18 / 32
君には綺麗なままでいて欲しい【薗田詩音編】
3.親友のままでいい
しおりを挟む僕が梓を好きになった理由は僕とは真逆だからだ。
小学校低学年の頃、僕はこの中性的な見た目や、喋り方などでからかわれる事が多かった。それでも気にせず今の僕が完成したのだけれど、それは梓がいてくれたからだ。
いつものように下校中に上級生にからかわれていた時だった。近所に住む梓と二人で帰っていたんだけど、梓がからかってきた子達から僕を庇ってくれたんだ。
「おい女男!お前本当は女なんだろー?」
「僕は男だ!変な呼び方しないで!」
「僕だって~!ダセェんだよ!髪も長いし!俺達が
切ってやるよ!」
「やめてよ!痛い!離してー!」
綺麗に伸ばしている髪の毛を引っ張られて、痛くて涙が出た。抵抗したけど、当然上級生の力には勝てなかった。ここで一緒にいた梓がその子の手をぎゅっと握って睨んだ。
「おいおっさん。嫌がってんだからやめろよ」
「はぁ?何だよおっさんって!」
「俺らより年上だろ?ならおっさんじゃねぇか。それより詩音の髪を離せよ。抜けるだろうが」
「お前生意気だな!痛い目見せてやる!」
「梓!」
「上等だクソジジイ!てか詩音がハゲたらテメェらに責任取らせるぞ!育毛剤とかカツラ買わせるからな!」
「お前ちょいちょい変な事言ってくるんじゃねぇよ!みんなやっちまおうぜ!」
そして僕と梓は数人の上級生にボコボコにされた。上級生達がいなくなった後、僕は怖くて痛くてずっと泣いていた。そんな僕を梓はずっと頭を撫でてくれていたんだ。梓だって殴られて痛いだろうに。
「良かったなー、ハゲてねぇぞ詩音!」
「ほ、ほんと?良かった……」
「本当だ。だからもう泣くなって。帰っておやつ食べようぜ」
「うう、梓、ごめんね。僕がこんなだから」
「何言ってんだ。お前悪くねぇだろ」
「だって、僕がもっと男らしかったら、こんな事されないのにっ」
「詩音は男だぞ。お前は綺麗な物が好きなんだろ?それだけで男じゃないっておかしいだろ」
「梓……」
「好きなんだったらもっと堂々としてろよ。だから俺はおやつが好きだから堂々と帰る!」
「あ、待ってよ梓!」
ニッと笑って走り出す梓。
この時の梓の言葉が僕を強くしてくれたんだ。
僕も梓のようになりたい。梓のように、強くて堂々としていて、僕の好きな綺麗な物みたいに輝きたい。
何を言われても堂々と。
その後上級生達にされた話を親や葵くんに話したらすぐに動いてくれて、上級生達が親同伴で謝罪して来た。もちろん、ハゲてなかったから髪関連の請求はしていない。
葵くんはこの頃から頭の回転が早くて、その上級生達がもう僕に手を出さないように裏で動いてくれた。どんな方法を使ったのかは教えてくれなかった。
それから長い年月が経ち、僕はそのまますくすくと育って自身の綺麗にも磨きがかかった。身長も伸びてクラスでは高い方。そして影の努力で手に入れた抜群のスタイルで、周りからは持て囃された。
綺麗を諦めなくて良かったと思ったよ。
梓のあの言葉が無かったら髪も切って綺麗な物も捨てていたかも知れない。
今の僕があるのは梓がいてくれたからなんだ。
僕の好きな綺麗なもの。
これからも大切にしたいと思っているよ。
食堂のテラス席でお日様に照らされた梓と裕一くんはとても綺麗だった。二人共自然に笑って、とても良くお似合いだった。
僕はそんな綺麗な二人の関係を大切にしようと思う。
✳︎完✳︎
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
本編の方ではあまり語られる事のない三人のお話でした!
薗田詩音と言う男は、容姿はまるでモデルのように細くて背が高く、手足が長いです。顔も小さくて、まつ毛が長くて垂れ目が特徴。甘い顔なので、女子から絶対な人気があります。そして話し方や性格にも特徴があって、本人も言う様に何事も華麗で美しく大胆にがモットーの気取り屋です。
そんな彼が幼馴染の渡辺梓にずっと片想いをしていたのは本編の方ではチラッと出て来ます。その裏話的なのを書かせていただきました。
三人は小さい頃からの幼馴染という間柄ですが、詩音と葵は後に城山高校の一位二位になるぐらいのスーパースターになります。だけど、梓だけは変わらずに平凡に生きて行くという。
それぞれの恋愛ストーリーなんかも書きたいですね!
ここまで読んで下さりありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後
pino
BL
どいつもこいつもかかって来やがれ5th seasonのその後の話です。
秋山貴哉は口悪し頭悪しのヤンキーだ。無事文化祭をやり遂げたけど、実はまだやり残した事があった。
二年でフェミニンな男、小平七海との約束を果たす為に遊ぶ約束をするが、やはりここでも貴哉は遅刻をする事に。寝坊しながらも約束通りに七海と会うが、途中で貴哉の親友で真面目な性格の二之宮茜と、貴哉の元彼であり元チャラ男の早川空も合流する事になって異色のメンバーが揃う。
他にも貴哉の彼氏?桐原伊織の話や元チャラ男の早川空の話もあります。
5thの新キャラ、石原類、浅野双葉も登場!
BLです。
今回の表紙は褐色肌キャラの浅野双葉くんです。
こちらは5th seasonのその後となっております。
前作の続きとなっておりますので、より楽しみたい方は、完結している『どいつもこいつもかかって来やがれ』から『どいつもこいつもかかって来やがれ5th season』までを先にお読み下さい。
貴哉視点の話です。
※印がついている話は貴哉以外の視点での話になってます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる