どいつもこいつもサイドストーリー【短編集】

pino

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君には綺麗なままでいて欲しい【薗田詩音編】

3.親友のままでいい

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 僕が梓を好きになった理由は僕とは真逆だからだ。
 小学校低学年の頃、僕はこの中性的な見た目や、喋り方などでからかわれる事が多かった。それでも気にせず今の僕が完成したのだけれど、それは梓がいてくれたからだ。

 いつものように下校中に上級生にからかわれていた時だった。近所に住む梓と二人で帰っていたんだけど、梓がからかってきた子達から僕を庇ってくれたんだ。


「おい女男!お前本当は女なんだろー?」

「僕は男だ!変な呼び方しないで!」

「僕だって~!ダセェんだよ!髪も長いし!俺達が
切ってやるよ!」

「やめてよ!痛い!離してー!」


 綺麗に伸ばしている髪の毛を引っ張られて、痛くて涙が出た。抵抗したけど、当然上級生の力には勝てなかった。ここで一緒にいた梓がその子の手をぎゅっと握って睨んだ。


「おいおっさん。嫌がってんだからやめろよ」

「はぁ?何だよおっさんって!」

「俺らより年上だろ?ならおっさんじゃねぇか。それより詩音の髪を離せよ。抜けるだろうが」

「お前生意気だな!痛い目見せてやる!」

「梓!」

「上等だクソジジイ!てか詩音がハゲたらテメェらに責任取らせるぞ!育毛剤とかカツラ買わせるからな!」

「お前ちょいちょい変な事言ってくるんじゃねぇよ!みんなやっちまおうぜ!」


 そして僕と梓は数人の上級生にボコボコにされた。上級生達がいなくなった後、僕は怖くて痛くてずっと泣いていた。そんな僕を梓はずっと頭を撫でてくれていたんだ。梓だって殴られて痛いだろうに。


「良かったなー、ハゲてねぇぞ詩音!」

「ほ、ほんと?良かった……」

「本当だ。だからもう泣くなって。帰っておやつ食べようぜ」

「うう、梓、ごめんね。僕がこんなだから」

「何言ってんだ。お前悪くねぇだろ」

「だって、僕がもっと男らしかったら、こんな事されないのにっ」

「詩音は男だぞ。お前は綺麗な物が好きなんだろ?それだけで男じゃないっておかしいだろ」

「梓……」

「好きなんだったらもっと堂々としてろよ。だから俺はおやつが好きだから堂々と帰る!」

「あ、待ってよ梓!」


 ニッと笑って走り出す梓。
 この時の梓の言葉が僕を強くしてくれたんだ。
 僕も梓のようになりたい。梓のように、強くて堂々としていて、僕の好きな綺麗な物みたいに輝きたい。
 何を言われても堂々と。

 その後上級生達にされた話を親や葵くんに話したらすぐに動いてくれて、上級生達が親同伴で謝罪して来た。もちろん、ハゲてなかったから髪関連の請求はしていない。
 葵くんはこの頃から頭の回転が早くて、その上級生達がもう僕に手を出さないように裏で動いてくれた。どんな方法を使ったのかは教えてくれなかった。

 それから長い年月が経ち、僕はそのまますくすくと育って自身の綺麗にも磨きがかかった。身長も伸びてクラスでは高い方。そして影の努力で手に入れた抜群のスタイルで、周りからは持て囃された。
 綺麗を諦めなくて良かったと思ったよ。
 梓のあの言葉が無かったら髪も切って綺麗な物も捨てていたかも知れない。

 今の僕があるのは梓がいてくれたからなんだ。

 僕の好きな綺麗なもの。
 これからも大切にしたいと思っているよ。

 食堂のテラス席でお日様に照らされた梓と裕一くんはとても綺麗だった。二人共自然に笑って、とても良くお似合いだった。

 僕はそんな綺麗な二人の関係を大切にしようと思う。



 ✳︎完✳︎




 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 本編の方ではあまり語られる事のない三人のお話でした!
 薗田詩音と言う男は、容姿はまるでモデルのように細くて背が高く、手足が長いです。顔も小さくて、まつ毛が長くて垂れ目が特徴。甘い顔なので、女子から絶対な人気があります。そして話し方や性格にも特徴があって、本人も言う様に何事も華麗で美しく大胆にがモットーの気取り屋です。
 そんな彼が幼馴染の渡辺梓にずっと片想いをしていたのは本編の方ではチラッと出て来ます。その裏話的なのを書かせていただきました。
 三人は小さい頃からの幼馴染という間柄ですが、詩音と葵は後に城山高校の一位二位になるぐらいのスーパースターになります。だけど、梓だけは変わらずに平凡に生きて行くという。
 それぞれの恋愛ストーリーなんかも書きたいですね!

 ここまで読んで下さりありがとうございます!
 

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