どいつもこいつもサイドストーリー【短編集】

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君には綺麗なままでいて欲しい【薗田詩音編】

1.親友への恋心

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 僕の名前は薗田詩音。城山高校に通う高校一年生だ。城山高校を受けた理由は親友である神凪葵と、渡辺梓も受けたからである。それともう一つ!この城山高校は文化部が強いのだ!そして数ある文化部の中でも私の興味を引いたのは、城山高校最大級の部員数を誇る演劇部だ。
 城山高校の演劇部はかなり本格的で、中学三年生の時の文化祭で公演された舞台を見てから僕は大ファンとなった。
 みんな生き生きとしていて、とても輝いて見えた。僕もあんな風に輝きたい!いや、みんなを輝かせたい!そう強く思い城山高校を受験し、見事合格したのだ。


「いやぁ!さすがは城山高校の演劇部だね!今日の部活紹介は最高だったね♪」


 幼馴染である葵くんと梓と帰宅中、僕は午後にあった先輩方の部活動紹介の感想を熱弁していた。
 それに二人は呆れたような反応を見せていた。どうやら二人共部活動には興味がないみたいなんだ。一緒にやりたかったのだけれど仕方ないね。


「詩音は華があるし、いいんじゃないのか。頑張れよ」


 肩よりやや少し長めの黒髪を一本に束ねている端正な顔立ちの男が神凪葵だ。葵くんは基本的に無表情で、怒っているような口調をしているけれど、本当は情に厚い優しい人間だって事を僕は知っている。ちなみに城山高校には主席で入学。新入生代表演説も卒なくこなした優等生だ。


「俺寝てたから全然分かんねぇや。とにかく頑張れよ~」


 ぼんやりどこかを見ながら興味無さそうに言うこのメガネ男子は中山梓。いつも寝癖を付けていて、お洒落とかとは無縁な男。何に対しても淡白な性格をしていて、長年の付き合いである僕でも、彼が何かに夢中になっているのを見た事がないぐらいにやる気を出さない。葵くんや僕とは逆の性格だね。


「二人共!せっかく高校生になったのだから楽しもうじゃないか!」


 そして僕、薗田詩音は三人の中では一番派手だと自負している。それは見た目も中身もだ。せっかく生まれ持ったこの美貌を生かさない訳にはいかないと、物心ついた頃から自分磨きを怠らなかったのだ。その結果、王子とか芸能人とか言われるようになった。中身も元々の性格もあって、とにかく目立つ物が好き。インパクトのある物なら尚良し。何事も華麗に美しくそして大胆にがモットーで生きて来た。

 二人にはこうして呆れられる事も多いが、一番僕の事を理解してくれているいい友達なんだ。僕はこの二人の事が大好きなのだ。


「楽しむね~。そういやクラスに面白ぇ奴がいたんだわ」

「何?梓が他人に興味を示しただと?話を聞こう」


 メガネ男子の梓はニヤニヤしながらそんな事を言い出した。残念だけど、僕達三人はクラスがバラバラになってしまったのだよ。僕は悲しんでいたけれど、二人は全然平気そうなんだ。


「風間裕一っていう隣の席の奴なんだけどよ、俺が授業中寝てたら起こしてくるのさ。ウザかったから次起こしたら殴るぞって言ったら楽しそうに笑ってやがんの。その後もしつこくからかってきやがってよ。そんな奴初めてで俺まで笑っちまったわ」

「ほう、梓を相手に度胸のある奴だな。是非会ってみたいな」

「梓、授業中に眠るのは感心しないな?」

「あ?別にいいじゃねぇか。俺授業点とかいらねぇし。いつ退学になってもいいし」

「梓……」

「まぁ梓もそんな事を言うな。卒業後、家を継ぐにしろ高校ぐらいは出ておいた方がいいからな」

「面倒くせぇけど、親が金出してくれてるし卒業はするつもりだよ~。眠かったら寝るけどな」


 梓の話を聞いて葵くんは普通にしていたけど、僕は内心は動揺していた。
 今梓が同じクラスになった子の話をして笑っていたからだ。
 先にも説明した通り梓は何事にも無頓着で興味を示さないんだ。それなのに、笑いながら彼の事を話すなんて信じられなかった。

 そう、僕が動揺した理由は、小さい頃からずっと梓に恋をしているからだ。

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