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One more time.【野崎楓編】
2.嬉
しおりを挟むそれから一週間が過ぎたある日、部屋で寝ようかとベッドの中でスマホをいじってたら貴哉から着信があった。
俺は内心ドキドキしながら出る。
すると、懐かしい貴哉の声がした。
『楓ー?ちょっと話せるかー?』
「ああ、どうしたんだ?」
『聞きてぇ事があるんだけどよー』
貴哉が俺に聞きたい事って何だろう?
俺は寝転がってた体を起こして電話に集中する。
高校に入ってから貴哉に会ったのは一度だけ。つい最近だけど、その時は彼氏と一緒にいたな。でも、俺が貴哉を見かけたのなら何度もある。
光陽高校と城山高校は比較的近くにあるから、よく城山高校の制服を着た生徒達を見掛ける事があって、その中に貴哉もいた。
そして見掛ける時は必ず同じ男が一緒にいた。
見た目はチャラそうな明るい茶色の長い髪してる、女子とかにモテそうなタイプ。
いつも仲良く二人乗りしてるんだ。まさか付き合っていたなんて……
だから俺もタイミングさえ間違えなければ今頃貴哉を乗せてあの自転車を漕いでたのは俺だったのかなとか考えたりもした。
いや、もう過去の事を考えるのはよそう。
今はお互い恋人もいるんだしな。
「何だ?言ってみ」
『光陽に荻野拓って奴いるー?』
「荻野拓?いや、知らねぇな。そいつがどうしたんだ?」
『ちょっとダチがそいつに嫌がらせされてて困っててよ。どんな奴か知りたかったんだ。知らないなら悪かったな~。んじゃまたな!』
「あ、明日荻野って奴の事探してみようか?そんでどんな奴か調べるよ」
貴哉が電話を切ろうとしたのに俺は焦って話を繋げようとしていた。
久しぶりに貴哉に頼られて嬉しかったんだ。
それと、もう少し話していたかった。
『まじー?それ助かるわー。やっぱ頼りになるな楓は』
「はは、それぐらいお安いご用だっての。それよりいいのか?こんな時間に俺と電話して。彼氏に怒れるんじゃないのか?」
『何で早川が怒るんだ?楓は彼氏に怒られるのか?』
「いや……そう言う訳じゃねぇけど」
はは、貴哉にとって俺は恋愛対象じゃないって事ね。てか俺は恋に貴哉と電話したなんて言わないけどな。
『何か、電話とかするの久しぶりだな』
「え、ああそうだな。貴哉から着信あってビビったし」
『あはは、何でビビるんだよ~?楓が俺にビビるとか無いわ~』
「俺を何だと思ってんのよ。てか貴哉寝なくて平気?どうせ毎日寝坊してるんだろ?」
『おっさすが楓~♪良く分かってんじゃん♪』
「おいおい、城山って遅刻とか厳しいだろ?大丈夫なのか?」
『平気平気~♪早川が迎えに来て起こしてくれっからさ~』
「……そうなんだ」
あ、聞かなきゃ良かったな。
そうか、彼氏に迎えに来てもらって起こしてもらってるのか。仲良いんだな。
『んでもそろそろ寝るかなー?そんじゃ荻野の事よろしくな~』
「了解。おやすみ」
本当はもう少し話していたかった。
やっぱり貴哉はいいな。話してて楽しい。なんてゆーの?天然だよなあいつ。そこもまた可愛いって言うか……
いや、これ以上はヤバいな。
俺はふと恋の事を思い出して首を横に振って寝ようとベッドに再び潜り込む。
でも思い出すのは貴哉だった。
俺の中では諦めたつもりだったけど、久しぶりに会って仲直りした事で貴哉への想いがまた溢れそうで怖い。
叶うはずのない気持ちなのに。
とにかく今は頼りにしてくれた貴哉の為に荻野って奴を探してみよう。
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