どいつもこいつもサイドストーリー【短編集】

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鉄仮面の素顔【戸塚春樹編】

4.鉄仮面と天使

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 ある日の昼休み。いつもなら俺と直登の二人で取っている昼食の席に何故か悪魔と、もう一人の悪魔、早川がいた。
 早川空。こいつの事は覚えている。入学式の日の朝、校門の所で大きな声で電話をしていた個性的な部類に入るであろう男だ。まさかの同じクラスで、しかも何故か一緒に昼食の席にいる。
 俺からしたら早川も秋山と同じくただの不良だ。あまり直登と関わらせたくないんだが、どうやら早川は秋山目当てでここにいるらしい。
 二人は何かと言い合っていて、うるさいのなんの。ただのどんぐりの背比べに過ぎないのだから無駄な言い合いは辞めればいいのに。


「直登の弁当っていつも上手そうだよな!母ちゃん?」

「ううん。自分で作ってるよ♪」

「まじ?女子力高!」

「料理好きだからね~。あ、明日は貴哉の分も作って来ようか?」

「マジで?やったー♪」


 直登が秋山の分の弁当を作るだと?俺は無意識に秋山を睨むけど、慣れたのか「またか」と言って嫌そうな顔をされるだけだった。


「春くんてば怖い顔しないのー。みんな仲良く♪ね?」

「……ああ」

「戸塚ってさー、何で俺の事そんな睨む訳?訳分かんねぇんだけど」

「そりゃ貴哉が目障りだからに決まってんだろー」

「んだと早川ぁ!テメェのが目障りじゃねぇか!」

「俺は戸塚に睨まれないもーん」

「クソ!何で俺だけ!」


 直登に気に入られてるからだよ。
 はぁ、よりによってどうしてこんな馬鹿なんかを……
 一緒にいると疲れるだけじゃないか。
 それでも天使は嬉しそうに笑っているから俺は好きにさせていた。


 その日の帰り道、直登にとうとう聞かれた。


「あのさ、春くんて俺の事好きでしょ?」

「……ああ」


 一瞬戸惑ったが、正直に答える事にした。
 すると直登はニヤッと笑って続けた。


「やっぱり。でも春くんも気付いてると思うけど、俺貴哉の事が好きなんだよね」

「どうして秋山なんかを?」

「理由は見た目が綺麗な所と面白い所かな。でも決め手はギャップかな~?」

「ギャップ?」

「そう♪貴哉ってヤンキーの癖に結構優しかったりするんだよ♪他にも意外な所があってさ~。でも空くんが邪魔なんだよね。いつの間にか貴哉と仲良くなってるし」

「…………」


 そうか。ちゃんと理由があって秋山の事が好きなんだな。俺に勝ち目はないのか……
 あんな馬鹿に負けるなんて悔しい。それに、あんなのといたら直登も幸せになれないんじゃないか?
 そう思ったら俺はそのままにはしておけなくなってしまった。


「直登の気持ちは分かった。でも言わせてくれ。好きだ。俺と付き合ってくれ」

「春くん……でも俺、貴哉の事が好きなんだよ?」

「それでもいい。俺が秋山の事を考えられなくする」

「へー、意外な所あるじゃん♪いいよ付き合おうか」

「……え」


 絶対断られると思ってたから、予想外な答えに頭が真っ白になった。
 俺が、直登と付き合える?


「あはは!何その顔~。俺の気持ち知ってて付き合うって事でしょ?それならいいよ」

「あ、ああ……」


 信じられない事が起きて、まだ混乱しているが、とりあえず良かったのか?
 

「言っておくけど、俺付き合ってるのを隠すのとか好きじゃないんだ。だからオープンにしていくけどいい?嫌なら今のうちに……」

「嫌じゃないっ!あ、ありがとう直登!」

「そう♪それじゃあこれからよろしくね春くん♪」


 ニコッと笑う天使は周りの人達をも振り向かせていた。
 それぐらい直登は綺麗だった。

 こうして俺と天使は恋人同士になった。




 ✳︎完✳︎


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
 鉄仮面こと戸塚さんのお話です!
 戸塚さんは見た目通り真面目で成績も常にトップです。そんな彼が恋をしたのは学年一の美少年、直登でした。本編では明らかになっておりますが、直登はちょっと癖のある男で、天使のような見た目に似合わず小悪魔のような性格をしています。
 だから今回戸塚さんの恋はとても可哀想なものになりましたね……
 そして、本編の主人公である貴哉を嫌う理由も書かせていただきました!貴哉は「何で睨むんだ」ぐらいにしか思っておりませんが。笑

 ここまで読んで下さった方々、本当にありがとうございます♡

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