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鉄仮面の素顔【戸塚春樹編】
2.悪魔との出会い
しおりを挟む入学式を終えて、直登と教室に向かう。
その間に色々な話をした。普段俺は喋らないが、この時はいつもより口数が多くなってしまい、とても楽しいと思える時間だった。
「春くんって落ち着いてて大人っぽいねー。俺も見習わなくちゃ♪」
「直登はそのままでいいと思う。明るくて……綺麗だ」
「あら、春くんってば。俺の事を口説いてるのー?」
ニヤッと笑って顔を近付けて来る直登に、俺は驚いて後退りしてしまった。
すると直登はふふと笑ってまた歩き出した。
もう既に俺は目の前の天使に夢中だった。
教室まで行くと、これから一年間共に過ごすであろう生徒達で賑わっていた。黒板に貼られていた紙に席と名前が書いてあった。どうやら席は名前順とかじゃなく、ランダムらしい。
「あ、俺窓際の一番後ろだぁ♪ラッキー♪」
「席、離れてるな……」
「まぁずっとこれじゃないかもしれないし♪じゃあまたね春くん」
少しがっかりしながら自分の割り振られた席に着く。教室の中央の、前から二列目。黒板から近く、勉強するには最適の場所だな。
荷物の整理をしていると、担任になるであろう教師が入って来てホームルームが始まった。
騒ついていた教室内から静まり返ってみんな大人しく担任の話を聞いていた。
この城山高校は一応進学校だ。だから素行の悪そうな奴はいないだろう。落ち着いて授業が受けられそうで安心した。
「これから君達の担任になる玉山だー。早速だが、名前を呼ぶから返事をして立ち上がってくれ。みんなよろしくなー。そんじゃ出席番号一番からー。秋山ー」
時間がないから自己紹介は端折ったか。まぁそれだけなら誰でも出来る事だしな。
玉山先生が名前を呼ぶが、秋山と言う男は返事をしない。どういう事だ?周りもざわ付き始めて教室がうるさくなって来た。
「おーい秋山ー?えっと、秋山は後ろの方の……」
「ここかー!!」
「!?」
秋山と言う人物が返事をしない事にクラス中が不審に思ってたら、いきなり前の扉が開いて黒髪の柄の悪そうな男が入って来た。柄の悪いと言っても服装が乱れていて、目付きもやや吊り目だったからだ。指定のネクタイを付けてないし、シャツのボタンは半分ぐらいまで空いていて、正に不良そのもの。
そしてその男はつかつかと歩いて担任の所まで歩いて行った。
「いやー、参った!体育館行ったら入学式もう終わったとか言われてさー!んでクラス聞いたんだけど、道が分からなくてよー!あんた俺の担任だろ?よろしくな!」
これにも驚いた。俺だけじゃなく、クラス全体が騒めく程に。担任に、明らかに目上の人である人物に何て口の聞き方をするんだ!男は気にする様子もなく、唖然としている担任が持ってた紙を覗いて見ていた。
「なぁ俺の席どこー?」
「ハッ!お前まさか秋山か!」
「そうだけど。お、ラッキー♪後ろじゃん」
「コラァ!秋山!遅刻して来た上になんだその態度は!それと制服はキチンと着ろー、ネクタイはどうしたネクタイは!上級生でも外してる奴いないぞ!」
「うわっいきなり怒鳴るなよ!初めてだから迷ったのはしょーがねぇだろ!ネクタイは失くしたよ!朝から騒ぐなよ!」
変わらない秋山の態度にクラスはどっと笑った。みんな緊張していたからか、楽しそうに笑っていた。が、俺は笑えなかった。
あり得ない。この学校にこんな奴が入学していたなんて。ここってこんな奴が入れる程レベル低くないよな?
これが俺と秋山との出会いだった。
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