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2章 球技大会
※ キレていいか?
しおりを挟む※伊織side
球技大会で今日はどこもかしこもスポーツやってる奴らばっかだった。
俺は同じクラスの那智とバスケを選んだ。ちなみに怜ちんはバレー。怜ちんは運動得意じゃねぇから今日を凄く嫌がっていた。
去年とかは掛け持ちで他の競技も出たんだけど、それだと試合の都合上、ダブルブッキングになる可能性が出て来る為今年からは一人につき一競技となった。
そんなこんなで俺と那智の活躍で俺ら2Bは順調に勝ち進んで、次は決勝だ。
そして今はその決勝でやり合う事になる相手同士が試合をしていた。
三年B組対一年A組。これには笑ったな。一年A組は貴哉のクラスだ。そしてバスケには早川が出ている。途中で勝負したいと挑発しといたんだけど、その効果か?まさか本当に勝ち残るなんてな。
そして決勝でやり合う相手が決まった。1Aだ。こりゃ面白い事になった。
両チーム共連戦の後なので、30分の休憩後に試合が始まる事になったから、俺は愛しの貴哉の所へ行く事にした。
貴哉にこれ教えたらどんな顔するかな?
正直貴哉はまだ早川の事を好きだと思う。てか早川もだろ。あの二人はまだ両想いだ。形だけだと、貴哉と付き合ってるのは俺、貴哉と早川は友達に戻ったらしい。
んなの二人の強がりに決まってる。
また貴哉を取り合ったり揉めたくねぇから大人しくしてるけどよ、内心は苛立ってんだ。
せっかく貴哉を俺だけの物に出来たってのに、他の男の事を想ってるのはやっぱり気にくわねぇ。
だからと言って貴哉に当たる事なんか出来ねぇし、早川の前ではイチャつくの禁止されてるし、この球技大会のバスケがいい口実になるなと思った。
貴哉の前で早川を全敗させりゃいい。ダセェとこ見せて恥でもかかせてやろうと思ってんだ。
早足で貴哉がいるであろうテニスコートに行くと、何だか盛り上がってた。俺と那智がいるバスケが一番盛り上がるかと思ってたけど、こりゃ驚いたな。
試合を終えた生徒達だろうか、テニスに出てる人数を遥かに上回る観客達だ。その人混みを掻き分けて中に行くと、ちょうどコートの真ん中で貴哉と貴哉の相方の藤野が笑顔で抱き合っていた。
キレていいか?
俺に気付いた周りの奴らから小さな悲鳴が聞こえたけど、そんなのはどうでもいい。俺はフェンスの中に入り、コートに近付く。
そして貴哉が俺に気付いて笑顔で駆け寄って来た。
めちゃくちゃ嬉しそうに笑ってやがる!可愛い過ぎだもう!
「伊織ー!見てたか!?俺のかっこいい所!」
「え?いや、今来たばっかだけど……てかさっき抱き合ってなかった?」
藤野を睨みながら言うと、貴哉が壁になり教えてくれた。
「あれは勝利を噛み締めてたんだ!藤野にキレたら許さねぇぞ!」
「勝利?あ、勝ったのか!おめでとー♪」
チラッと相手チームを見ると、二之宮が地面に座って苦笑いしていた。そうか、二之宮とやってたのか。元テニス部の二之宮を破るなんてやるじゃん!
「いやー、まさか秋山と藤野に負けるとは思わなかった。本当に二人は凄くいいチームだ」
「茜もなかなかだったぜ♪よっしゃー!食券ゲットー!」
「食券って、まさか決勝戦だったのか!?」
「そうだぜ♪俺、決勝まで残ったってメッセージしたじゃん。だから見に来てくれたのかと思ったけど」
「悪い。バスケの試合見てて気付かなかった。でもマジですげぇじゃん!練習ん時一番ヤバかった癖になぁ♪」
「大事なのはチームワークだ♪藤野のお陰で優勝出来たんだ♪藤野やったなぁー♪」
貴哉が俺から離れて再び藤野に抱き付こうとしていた。けど、藤野はそれをサッと避けて貴哉は転びそうになっていた。
「あっぶねぇなぁ!何で避けるんだよっ!」
「危ないのはどっちだよっ!俺を殺す気か!」
ほう、藤野は分かる奴みてぇだな。
このやり取りを見て俺はニコッと笑って貴哉をコートの外に呼び出した。
そしてバスケ側の状況を説明すると、すげぇ驚いてた。
「マジかよ……俺らのクラスすげぇな」
「試合見てたけど、結構いい動きしてたぞ。俺の知らないのが二人いたけど、ありゃ経験者だな。それを三人がサポートして回してるって感じ」
「そんで、伊織となっちのチームと決勝かぁ!面白いじゃん!見に行く!」
「決勝まで30分の休憩で今行ってもやってねぇよ。ちょっと座って話そうぜ」
「あ、伊織も休まなきゃな」
試合したばっかの早川達よりは体力は回復してるけど、汗もたくさんかいたし疲れてるには疲れてる。でもこうして貴哉と会ったらそれも吹き飛んだな。何が何でも勝つぞってなったわ。
人の少ない中庭に来てベンチに座って貴哉との時間を楽しむ。あー、今日も貴哉んち寄ってこー♡
俺は気分が良いところで貴哉に質問を投げる。
「なぁ、貴哉はどっち応援すんだ?」
「はぁ?何だよいきなり」
「俺と早川の勝負だぜ?気になるじゃん」
「正直に言うぞ?怒るなよ?」
「あ?そう言うって事は俺じゃねぇのかよ」
「怒るんじゃねぇよ!」
「聞くんじゃなかったぜ」
せっかく貴哉といるのに俺はつまらない事を……でも、貴哉なら即答で伊織って言ってくれると思ったんだ。
「応援するのは一年A組だ!空だけじゃねぇ!直登も数馬も出てるからな!」
「じゃあ俺と早川だけだったらどっち?」
「お前は何でそんな事聞くんだよっ」
ふるふると震えて怒るのを我慢してるのが分かった。これじゃ貴哉に愛想尽かされちゃうな。
俺が我慢をして「冗談だよ」って笑おうとしたら、貴哉がまだ震えながら言った。
「伊織だよっ!俺は伊織を選ぶ!」
「……貴哉」
「どんなけ信用ねぇんだよ俺。てか信用なくても仕方ねぇか」
ふっと肩の力を抜いたのか、ベンチにもたれ掛かって困ったように笑って言った。そして「ごめんな」って寂しそうに呟いてた。
これに俺は何も言わずに抱き締めていた。
周りの目とかどうでも良かった。ただ俺は目の前にいる貴哉が愛おしくて仕方なかった。
「あ、伊織……さすがにこれはアウトだろ?」
「アウトでも何でもいいっ貴哉、変な事聞いて悪かった。信じてるぜ貴哉の事♡」
「そうかよ。なぁ伊織ー、決勝戦頑張れよ」
「おう!全力でやるわ!」
俺と貴哉は時間も忘れてそのまま二人で過ごしていた。
那智から電話が来るまで……
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