【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

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2章 球技大会

藤野には悪い事しちまったなぁ~!

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 次の試合は勝者の桐原桃山ペア対一条雉岡ペアだ。負けた俺と藤野は審判をやってる茜の横に座って見ていた。

 紘夢がスポーツしてる所なんて想像もできなかったけど、結構良い動きしてんだ。それにあいつ頭良いから打ち返した後の事も考えてやってんな。見ていて面白ぇよ。
 桃山は相変わらず、どんな球にも追い付いて変な格好でも何でも打ち返しちまう。
 そして伊織だ。伊織は予想通りめちゃくちゃ上手かった。フォームも藤野みてぇで綺麗だし、動きもしっかりしていてめちゃくちゃカッコよかった。
 てか雉岡も初心者だったんだな。こうして見てると分かるもんだ。上手い三人の中に一人だけ違う動きの奴がいるなーって感じ?俺もあんな風に見られてたんかなー?
 だってしょうがねぇじゃん?やった事ねぇもん。


「あーあ、藤野には悪い事しちまったなぁ~!遅刻するわ、俺が足引っ張るから勝てねぇわでさ」

「遅刻ね……秋山らしいなって思うよ。それと、勝てなくても楽しいから気にしてないよ」

「本当に思ってるかー?お前良い奴だから気使ってね?」

「使ってないって。秋山には感謝してるんだ。秋山がテニスやるってなって、たまたま俺が経験者だったからペアになって、じゃなかったら俺テニスやってなかったし。またこうしてテニス出来るのが嬉しいんだ」

「ならいいけどよ。なぁ、何で辞めちまったんだ?すげぇ上手いのに勿体ねぇ」

「それは俺も思うぞ。まさか辞めていたとはな」


 審判をやっていた茜が俺達の話を聞いてたのか藤野に言った。そうか、二人は同中同部だったんだよな。先輩後輩だから、茜が知らなかったって事は辞めたのは茜が卒業した後か。


「ちょっとね。あ、久しぶりに二之宮さんのテニスしてる姿見れて嬉しいです~」

「誤魔化したな」

「ああ誤魔化したな」

「……ごめん。これは話せないな」

「なら無理には聞けないな。秋山、諦めるんだ」

「おう」

「秋山、俺も気になった事聞いてもいいか?」

「何だ?」

「早川との事だけど」


 空の名前が出て俺の耳はピクッと反応した。
 そして俺は藤野を見た。


「何かあったのか?」

「うーん。実はよ、昨日空とは別れたんだ」

「「別れたぁ!?」」


 藤野だけじゃなく、茜まで大きな声で反応した。
 ほらー!こうなるから話しづらいんじゃん!


「秋山、それは本当か!?あんなに仲良かったのに何があったんだ?」

「いやー、もう空を傷付けたくねぇなって思ってよ」

「なるほどな。桐原を選んだって訳か」

「最終的にはそうなるな。別れ話をしたって事で最後に傷付けちまったけど、これからはもう傷付けなくて済むだろ?ほら伊織ならあんな感じでタフだからさー」

「そっか。話してくれてありがとう」

「どういたしまして」


 あー、空の話したら思い出しちまったな。
 あいつどうなったかな。シミズって言うオッサンと鉢合わせてたりしてねぇよな?
 くそ、思い出すんじゃなかった。もう別れたのに、空の心配ばかりしちまう。


「藤野!危ない!」

「!?」


 茜の叫び声と共に藤野が座っていた足元にテニスボールがすごい勢いで飛んで来た。
 俺は何が起こったのか分からずパニクってると、コートで試合をしていた筈の伊織が怒った顔して近付いて来た。
 まさか、伊織がボールを?


「桐原!危ないじゃないか!」

「うるせぇ!貴哉、お前に嫌な事言ったのどっちだ?」

「は?お前なんだよいきなり……」

「貴哉が落ち込んでるのはどっちのせいだって聞いてんだ!」


 あ、伊織のやつ、元気無くしてるの見て二人のどちらかが何かを言ったって思ってるって事か?
 試合は中断され、みんなポカンと見てる中、藤野は立ち上がり、ボソッと言った。
 

「俺です」

「お前か」

「おい伊織やめろよ!」

「貴哉に何言った?」

「……早川とどうなったのか気になったから聞いたんです。ごめんなさい」

「桐原、もういいじゃないか!俺も興味があったから聞いていた。それで秋山が元気をなくしたのなら謝る。だから藤野だけを責めるのはやめろ」

「伊織!お前は何でいつもそんな風になるんだよ!藤野と茜は悪くねぇ!二人に謝れ!」

「あ?何、二人の肩持つのかよ?」

「そうだよ!お前は間違ってるからな。早く二人に謝れ」

「…………」

「伊織!」

「悪かった!いきなり球飛ばしたのと、怒鳴ったの悪かったよ!俺はただ貴哉が嫌な事言われてんのかと思って……」


 何とか伊織を二人に謝らせる事が出来た。
 はぁ、俺の事になるとすぐキレるところなんとかなんねぇかなぁ?


「俺達が秋山の嫌な事を言う筈がないだろ?まぁ秋山の事が好きな桐原の気持ちも分かるが……でも、球をこちらに打って来たのは良くないと思うぞ」

「茜の言う通りだぜ~いーくん。暴力はダメなんだよなぁ茜ぇ♡」

「湊、引っ付くんじゃない!空気読め!」

「でもさー、いーくんの気持ちも分かるんだわ。俺も茜が誰かに嫌な事言われてると思ったら勘違いでもぶっ殺したくなるもんそいつ」

「お前は本当にやりそうで怖いよ」

「伊織」

「貴哉ごめん。せっかくみんなで楽しくテニスしてたのに、ぶち壊しちまった」


 伊織が悔しそうな顔して謝って来た。
 桃山の言う通り、好きな人を気にするのは仕方ないんだよな。だから俺も空の事こうして気にしてるんだし。
 これは俺も悪かったな。
 みんなにもちゃんと話さずに過ごしてたから、だからこんな事になっちまったのかもしれない。

 うし!俺が責任持って空気戻すか!

 俺は立ち上がり、伊織に近付いて隣に立ってみんなに話すことを決めた。


「みんなも気になってると思うけど、俺は昨日空と別れた!理由はもうこれ以上空の事を傷付けたくないからだ。空も……別れるって言って、もうダラダラした付き合いは無くなったんだ。でも俺はまだ空の事が好きだから、あいつが心配でこうしてボーっと考えちまう事があるんだ。伊織はそんな俺を気遣ってみんなには話さなくてもいいって言ってくれた。本当に俺の事が好きなんだなって思う」

「……貴哉」

「俺もそんな伊織が大好きだ!だからみんなの前で言わせてくれ!伊織!俺と付き合って下さい!」

「なっ」


 突然の俺の愛の告白に伊織だけじゃなくて、みんなも驚いていた。
 俺もちょびっと恥ずかしかったけど、前を向く第一歩だと思って勇気を出した。
 伊織とは既にそんな関係だったけど、空と別れてからどちらからも正式に告白とかは無かった。だからちょうど良いかなって思ったんだ。


「へへ♪もちろんノーとは言わせねぇけどな♡伊織愛してる♡」


 伊織の答えを聞く前に俺は隣にいる伊織の頭を引き寄せてキスをしてやった。これは大サービスだ!いや、俺がしたかっただけだ。


「貴哉ぁ♡俺も愛してる♡すげー嬉しい!やっと俺のものになったー!」


 純粋に喜ぶ伊織。俺の好きな伊織の笑顔だ。
 はー、人生二度目の公開告白。
 俺ってすげぇカッコよくね?

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