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2章 球技大会
俺にはカミングアウトしたじゃん
しおりを挟む体育の時間。今日は藤野が持って来てくれたラケットを借りて俺もやってみる事になった。
おー、ラケット持つと何か出来る気がして来たぜー♪
本当は合間を見て空がいる筈のバスケを見に行こうと思ってたけど、休みだから今日は丸々テニス教わろーっと。
「まずはフォームから身に付けるといいよ。ラケットを利き手で握ってこう構えるんだ。そして一度後ろに振り上げて大きくラケットを振る」
「こ、こうか?」
「そうそう。基本的にテニスはこの形でラリーを繰り返すんだ。点を取れそうな球だったらスマッシュしたりもするよ」
「スマッシュやってみたい!昨日の二人かっこ良かった!」
「はは、秋山も出来るようになるよ。一緒に頑張ろう」
その後も藤野は優しく教えてくれた。
俺は何とか形だけは出来るようになったみたいで、藤野にもオーケーを貰った。
普段やらない動作を繰り返したから右腕が疲れたぜ……
「少し休憩しようか。そしたらコート使って打ってみよう」
「おう!それにしてもまだあちーな!汗かいちまった」
「そうだね。テニスは屋外だから熱中症に気を付けないとね。今日は桃山さんは来ないの?」
「呼んでねぇよ。藤野目立つの嫌なんだろ?それに空にもあんま目立つ事するなとか言われたし」
「……早川、今日休んでるよな」
「風邪だとよー。昨日はあんなに元気だったのによー」
「珍しいよな。早川が休むのって」
「だろー?あいつあんなんだけど学校は真面目に来てるもんな~」
「秋山もすっかり真面目に来るようになったよね。あんなに休んだり遅刻してたのが嘘みたい」
「へっへーん♪俺ってやれば出来る男なんだ♪」
「はは、本当面白いね~」
藤野は話しやすい奴だ。基本的に笑顔だし、見た目も悪くない。瑛二もだけど、クラスの奴とは話した事ないだけで、良い奴が結構いるのかもな。
「ところで、早川の話が出たけどさ」
「ん?空がどうかしたか?」
「えっとー、早川ってバイトとかしてる?」
「前はしてたみてぇだけど、夏休み入ってからはしてるって聞いてねぇよ」
「そっか」
「何で空がバイトしてるか気になるんだ?」
「実は前に早川に似てる人を見かけた事があったんだ」
「まじで!?でも空がしてたバイトって夜の仕事だろ?藤野はどこで見たんだ?」
「夜の仕事……確かにそうかもね。その時はハッテン場で見たんだ」
「ハッテン場?どこだよそれ?」
「普通は知らないよね。男性同士が出会い目的で利用する場所の事だよ。その時はここから電車で1時間掛かる町の公園だったよ」
「男性同士が!?出会いって、空の奴何のバイトしてたんだよ!」
「いや、暗かったし早川本人かは自信がないよ。似てたってだけ」
てかアイツ、男は俺が初めてとか言ってなかったか?なのにそんな場所に行くなんて怪しすぎねぇか?まだ本人と決まった訳じゃねぇけど、もしそうだったとしたらヤバくね?
「ん?藤野はそこで何してたんだ?」
「俺はね、純粋に相手を探してたんだよ」
「純粋に、相手を……あ、藤野ってもしかして」
「うん。俺ゲイなの」
「そうだったのか!へー、見た目じゃ分からないもんだな」
「……嫌いになった?」
「んな事でならねぇよ。てか俺だって今男と付き合ってるし、人の事言えねーだろ。空だって、昨日一緒にテニスした桃山だってそうじゃん」
「いや、秋山とか早川はノンケだろ?俺は恋愛対象が男なんだよ。性的対象もね」
「ノンケ?」
「異性愛者の事だよ」
「女かぁ~。空は女としか付き合ったりした事ないらしいけど、俺は女と付き合った事ねぇからな。分かんねぇや」
「秋山って変わってるな」
「いきなり何だよっ!普通だし!」
「俺、自分がゲイだって事は隠してたんだ。気持ち悪がられるからね。でも秋山は普通に聞いてくれたね」
「気持ち悪いって、それ俺もじゃん!てかさー!好きになっちまうんだから仕方なくね?誰だよ気持ち悪いとか言う奴!そんな奴殴ればいいじゃん」
「出来る訳ないだろ」
藤野は引き攣った笑顔を見せた。
暴力とかしなそうだもんな。
でも実際、男が男を好きでも仕方ない事だと思う。確かに一般からしたら異様な光景に見えるだろうけど、本人がそれでいいなら何でもいいと思う。
でも藤野はそれを気にしてるんだろうな。
「ちなみに、俺が空と付き合ってるの母ちゃんも父ちゃんも知ってるぜ。全然反対されねぇけど。うちは逆に隠したりすると怒られるんだ。てかどこんちもそうなんじゃねぇの?話してみたら意外と大丈夫でしたーとかさ」
「それは凄いね……俺はとてもじゃないけど、親には言えないよ。俺、長男だから凄く怒られて泣かれそう」
「はぁ?それじゃあ藤野の気持ちはどうなるんだよ?男が好きなのに、好きでもない女と付き合って結婚すんのか?」
「多分ね。それか結婚しないかも」
「だったら好きな男作って一緒にいりゃいいじゃん。親を大事にしたいってんなら止めねぇけどな!」
「……秋山は強いんだな」
「だから普通だ普通!」
「俺も秋山みたいになれたら良かったのに」
「やめとけ~。俺なんて人に馬鹿にされるわ、進級危ういわで良いもんじゃねぇから。ただ好きに生きるそれだけだ」
「…………」
「一回さ、藤野の好きに生きてみたら?せめて高校生の間ぐらい♪大人になるのは卒業してからでいいじゃん」
「好きに、生きるか……例えば、秋山は俺から告白されたらどう思う?」
「藤野からかー。んー、悪い気はしねぇかな。藤野ってかっこいいし」
「本当に?気持ち悪くない?」
「だーから!俺の恋人知ってんだろ!全然気持ち悪くねぇよ!」
「嬉しい……実はさ、ハッテン場とか使って出会い求めてたりもするんだけど、ああいう所って結構遊び目的の人が多いんだよ。その場限りとかね。中には本気の出会いを探してる人はいるんだけど、やっぱり好みもあるし。ね?」
「ゲイも大変だな。てかこの高校ならゲイなんてうじゃうじゃいるだろ。そんなとこ行かなくてもさ」
「下手にカミングアウトしてもしバレでもしたらヤバいだろ?」
「俺にはカミングアウトしたじゃん」
「秋山は……何となく話せたかな」
「なんだそりゃ?変なのー」
藤野みたいな普通に明るくしてる奴にも悩みはあるんだなぁ。
んー、誰かいい奴いねぇかな?てか俺の周りってそういうのばっかだから誰かいそうなもんだけどな。
あ、七海とかどうだ?あいつがゲイかは知らねぇけど、いつも周りに媚び売ってるし、ちょうど良いんじゃね?でも茜の事好きだとか言ってたな……いや、茜には桃山いるし、諦めて新しい恋どうですかー?てなノリで行くか!
今度紹介してやっか!
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