【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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2章 球技大会

面倒くさがるな!俺の事好きなんだろ!

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 伊織に抱き締められながら、パニックになる頭を整理しようと苦戦してると、伊織が俺の顔を見てニコッと笑った。
 あ、いつもの伊織だ……


「俺が悪かった。嫌な態度して本当にごめん」

「な、何で……?」

「貴哉に嫌われようとしてわざとああ言ったんだ」

「俺に、嫌われようと?」

「自分の物にならないのが嫌で、辛くて、遠ざけようとしたけど、無理だっ!やっぱり俺は貴哉が好きだ!俺の物にしてぇんだ!」

「っ……」


 それじゃあ、あの食堂での伊織は嘘だったって事か?
 俺を怒らせる為に嫌な奴を演じてたのか……

 あれ、俺安心してる?
 伊織がまだ俺の事を好きだって分かってホッとしてる……


「伊織ぃっ!バカやろー!ぜってー許さねぇからな!」

「頼むよ。許してくれねぇか?もっと殴ってもいいから」

「あ!もしかしてわざと殴られたのか!?」

「うん」

「ほんっとバカだ!ムカつく!」

「好きだ。貴哉。愛してる」

「黙れ!もうお前なんかっお前なんかっ!」

「貴哉っ」


 大嫌いだ。
 そう言えば伊織が望んでた展開になったかもしれないのに、言えなかった。
 だって、俺は伊織を嫌いじゃないから。
 ムカついたけど、それは伊織だからで、好きな奴にいきなり酷い事言われたからなんだ。
 だから俺は伊織の事が……


「大好きだっ」


 俺がそう言った瞬間、伊織に頭を押さえ付けられてキスをされた。
 とても乱暴なキスで、すぐに舌が入って来て、苦しかったけど、嫌がらずにそのまま受け入れていた。
 
 また空を傷付けるのに。ダメなのに。
 どうしてこうなっちまうのかな……
 俺、本当ダメな奴だな……


「ふっ……いおりっ苦し……」

「っ……貴哉、俺と付き合ってよ。誰よりも大事にするから」

「無理だっ俺は空と……んんっ」


 俺の言葉を遮るように口を口で塞がれた。
 なんて強引な奴なんだ!
 でもこんなキスも嫌じゃねぇとか、俺もヤバい奴だな……
 クソ……こんな状況なのに、体が反応してるとか……


「いおり、なぁ、いお、り……」

「貴哉」

「俺の事、好き?」

「ああ!好きだ!」

「誰よりも?」

「そうだ!」

「はは、嬉し……♡」

「っっっ♡!!貴哉ぁ!俺にしてくれよ!」

「…………」

「貴哉っ」


 伊織はずっと俺の名前を呼んでいた。
 俺はそれ以上答える事が出来なかった。
 本当は伊織とヤリたかった。でもそれは付き合ってない伊織を利用するみてぇで出来なかった。
  
 好きなのに付き合えないのがこんなに辛い事なんて思ってもみなかった。
 きっと伊織は俺の何倍も辛いよな。

 ごめんな伊織。
 こんな俺で、ごめん。


「貴哉……」

「もう行かねーと、みんなが心配する」

「付き合うって言うまで離さねぇ」

「脅しかよ」

「脅しだ」

「だからさ、俺は今空と付き合ってるんだって。二人と同時に付き合うなんて無理だろ」

「……いや、無理じゃなくね?」

「はぁ?」


 俺の言った事に少し考えてからそんな事を言い出した。まさか二人と同時に付き合えって言うんじゃねぇだろうな!?


「これだ!」

「どれだ!?」


 伊織が何かを思いついたようにパァッと嬉しそうに笑った。
 何か嫌な予感がする……!


「表面上は早川と付き合えばいい!裏では俺と付き合う!これで行こう!」

「表面上は空と……裏では伊織と……?バカか!んな事出来るかぁ!」

「実際今そんな感じじゃん♪何が何でも付き合いてぇんだよ!じゃねぇと手が出せねぇんだもん!」

「そんなの嫌だ!面倒くせぇ!」

「面倒くさがるな!俺の事好きなんだろ!」

「好きだけど!そんな事したらまたあいつを傷付けるだろ!」

「もう遅えだろ。それと、早川も耐性付いて来たんじゃん?早川ばっかずりーんだよ。俺の方が貴哉の事愛してんのにさ」

「…………」

「俺も貴哉と付き合いたい。今は二番目でもいいから。頼むよ」

「んんんー」

「貴哉ぁ~♡」


 正直俺は迷っていた。
 確かに、今の俺と伊織は裏で付き合ってんのと変わらねぇ気がする。
 てか伊織に何かされたり、伊織と何かしちゃったら空には報告してるから裏のようで裏じゃない気もするけど。

 どうするのが良いんだ。
 とにかく面倒くさくなる事は避けたい。
 そうだ!伊織にいろいろ条件付けちまえばいいんじゃね?


「なぁ、裏で付き合う条件がある!」

「おっ♡どんなのだ?」

「まず、空が嫌がる事とか気にする事とかやったり言ったりすんな。面倒くせぇからな」

「ああ、それなら大丈夫。上手くやりゃいいんだろ?」

「それと、もう二度とさっきみたいな態度取るんじゃねぇ。今回は許してやるけど、またあんな事やりやがったら次は無いと思え!お前ちょくちょく冷たい態度取るよなー!アレ大分面倒くせーからな!」

「やらねぇ♡ずっとくっ付いてる♡」

「それと、二番目とか言うな。空には言えねぇけど、俺にとって二人とも同じぐらい大事なんだ。順位とか付けたくねぇ」

「貴哉ぁ♡大好きだ♡」

「あー待てクソ。他にも条件言っておきてぇのに出て来ねぇ」


 この際だからいろいろ言っておきてぇけど、伊織の嬉しそうな笑顔見てたら吹き飛んじまったよ。
 まぁこれから思い付いたら付け加えていきゃいいか!

 こうして俺は伊織とも恋人になった。
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