131 / 178
2章 球技大会
面倒くさがるな!俺の事好きなんだろ!
しおりを挟む伊織に抱き締められながら、パニックになる頭を整理しようと苦戦してると、伊織が俺の顔を見てニコッと笑った。
あ、いつもの伊織だ……
「俺が悪かった。嫌な態度して本当にごめん」
「な、何で……?」
「貴哉に嫌われようとしてわざとああ言ったんだ」
「俺に、嫌われようと?」
「自分の物にならないのが嫌で、辛くて、遠ざけようとしたけど、無理だっ!やっぱり俺は貴哉が好きだ!俺の物にしてぇんだ!」
「っ……」
それじゃあ、あの食堂での伊織は嘘だったって事か?
俺を怒らせる為に嫌な奴を演じてたのか……
あれ、俺安心してる?
伊織がまだ俺の事を好きだって分かってホッとしてる……
「伊織ぃっ!バカやろー!ぜってー許さねぇからな!」
「頼むよ。許してくれねぇか?もっと殴ってもいいから」
「あ!もしかしてわざと殴られたのか!?」
「うん」
「ほんっとバカだ!ムカつく!」
「好きだ。貴哉。愛してる」
「黙れ!もうお前なんかっお前なんかっ!」
「貴哉っ」
大嫌いだ。
そう言えば伊織が望んでた展開になったかもしれないのに、言えなかった。
だって、俺は伊織を嫌いじゃないから。
ムカついたけど、それは伊織だからで、好きな奴にいきなり酷い事言われたからなんだ。
だから俺は伊織の事が……
「大好きだっ」
俺がそう言った瞬間、伊織に頭を押さえ付けられてキスをされた。
とても乱暴なキスで、すぐに舌が入って来て、苦しかったけど、嫌がらずにそのまま受け入れていた。
また空を傷付けるのに。ダメなのに。
どうしてこうなっちまうのかな……
俺、本当ダメな奴だな……
「ふっ……いおりっ苦し……」
「っ……貴哉、俺と付き合ってよ。誰よりも大事にするから」
「無理だっ俺は空と……んんっ」
俺の言葉を遮るように口を口で塞がれた。
なんて強引な奴なんだ!
でもこんなキスも嫌じゃねぇとか、俺もヤバい奴だな……
クソ……こんな状況なのに、体が反応してるとか……
「いおり、なぁ、いお、り……」
「貴哉」
「俺の事、好き?」
「ああ!好きだ!」
「誰よりも?」
「そうだ!」
「はは、嬉し……♡」
「っっっ♡!!貴哉ぁ!俺にしてくれよ!」
「…………」
「貴哉っ」
伊織はずっと俺の名前を呼んでいた。
俺はそれ以上答える事が出来なかった。
本当は伊織とヤリたかった。でもそれは付き合ってない伊織を利用するみてぇで出来なかった。
好きなのに付き合えないのがこんなに辛い事なんて思ってもみなかった。
きっと伊織は俺の何倍も辛いよな。
ごめんな伊織。
こんな俺で、ごめん。
「貴哉……」
「もう行かねーと、みんなが心配する」
「付き合うって言うまで離さねぇ」
「脅しかよ」
「脅しだ」
「だからさ、俺は今空と付き合ってるんだって。二人と同時に付き合うなんて無理だろ」
「……いや、無理じゃなくね?」
「はぁ?」
俺の言った事に少し考えてからそんな事を言い出した。まさか二人と同時に付き合えって言うんじゃねぇだろうな!?
「これだ!」
「どれだ!?」
伊織が何かを思いついたようにパァッと嬉しそうに笑った。
何か嫌な予感がする……!
「表面上は早川と付き合えばいい!裏では俺と付き合う!これで行こう!」
「表面上は空と……裏では伊織と……?バカか!んな事出来るかぁ!」
「実際今そんな感じじゃん♪何が何でも付き合いてぇんだよ!じゃねぇと手が出せねぇんだもん!」
「そんなの嫌だ!面倒くせぇ!」
「面倒くさがるな!俺の事好きなんだろ!」
「好きだけど!そんな事したらまたあいつを傷付けるだろ!」
「もう遅えだろ。それと、早川も耐性付いて来たんじゃん?早川ばっかずりーんだよ。俺の方が貴哉の事愛してんのにさ」
「…………」
「俺も貴哉と付き合いたい。今は二番目でもいいから。頼むよ」
「んんんー」
「貴哉ぁ~♡」
正直俺は迷っていた。
確かに、今の俺と伊織は裏で付き合ってんのと変わらねぇ気がする。
てか伊織に何かされたり、伊織と何かしちゃったら空には報告してるから裏のようで裏じゃない気もするけど。
どうするのが良いんだ。
とにかく面倒くさくなる事は避けたい。
そうだ!伊織にいろいろ条件付けちまえばいいんじゃね?
「なぁ、裏で付き合う条件がある!」
「おっ♡どんなのだ?」
「まず、空が嫌がる事とか気にする事とかやったり言ったりすんな。面倒くせぇからな」
「ああ、それなら大丈夫。上手くやりゃいいんだろ?」
「それと、もう二度とさっきみたいな態度取るんじゃねぇ。今回は許してやるけど、またあんな事やりやがったら次は無いと思え!お前ちょくちょく冷たい態度取るよなー!アレ大分面倒くせーからな!」
「やらねぇ♡ずっとくっ付いてる♡」
「それと、二番目とか言うな。空には言えねぇけど、俺にとって二人とも同じぐらい大事なんだ。順位とか付けたくねぇ」
「貴哉ぁ♡大好きだ♡」
「あー待てクソ。他にも条件言っておきてぇのに出て来ねぇ」
この際だからいろいろ言っておきてぇけど、伊織の嬉しそうな笑顔見てたら吹き飛んじまったよ。
まぁこれから思い付いたら付け加えていきゃいいか!
こうして俺は伊織とも恋人になった。
10
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる