【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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2章 球技大会

あ、茜様ありがてぇです

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 俺は伊織と別れて茜がいるであろう演劇部部室に行く。中には茜だけじゃなくて、部員じゃない奴が二名。
 一人は見た目からして危ない奴の桃山だ。今日はマスクをしていた。そしてもう一人は意外な人物、紘夢だった。

 三人は机に向かって何かをしているようで、茜と紘夢が椅子に座り、桃山は机にそのまま座って上から覗き込んでいた。
 俺が中に入ると、一番に桃山が俺に気付いた。


「貴哉じゃん!そういや今日からだっけ?復活おめー♪」

「秋山!?」


 桃山の呑気な声にいち早く反応したのは茜だった。パッと俺に振り返り、嬉しそうな可愛い笑顔を向けた。


「よう。ちょっとみんなに挨拶回りしてて遅くなっちまった」

「秋山!良く来てくれたな!ずっと待ってたんだぞ♪」

「貴ちゃん挨拶回りなんてしたの?偉いねー」

「おう。伊織も一緒にな。演劇部には迷惑かけちまったからな」

「そうか。秋山良くやったな。みんな良い反応してただろ?」

「うん。意外とな。茜が頑張ってくれたんだろ?ありがとな」

「俺は思ってる事をみんなに言っただけだ。それよりも秋山来てくれ!急ぎなんだ」

「なになにー?そんな慌てて」


 茜は俺の手を引いて隣の裏方チームがいる教室へ入って行った。さっき来たばかりだから何となく照れ臭かった。

 そして俺と茜に気付いた裏方リーダーが嬉しそうに近寄って来た。


「茜ちゃん♪どーしたのー?何か必要ー?」

「いや、更衣室を使いたいんだ。今使ってないよな?」

「使ってねぇけど?ああ、秋山の衣装合わせか」

「衣装合わせ?」


 俺は聞き慣れない単語にハテナを浮かべてると、茜がニヤーッと笑って教えてくれた。


「そう!秋山がいない間にデシーノの衣装が仕上がったんだ♪あと桐原にも着てもらってサイズとかを確かめてもらいたいんだが……食堂にいるか?」

「いや、あいつなら一回ボラ部に顔出すって言ってたからまだ戻ってねぇんじゃん?電話して呼ぼうか?」

「それなら犬飼に頼もう。秋山は早く更衣室へ行くんだ」

「分かったって。んな押すなよ~」


 デシーノの衣装かぁ。本番はそれ着て演技するんだよな?かっこいいやつだといいなぁ♪
 茜にぐいぐい押されながら更衣室っていう部屋の一角にあったカーテンで仕切られてるスペースに入れられた。
 そしてそこには二着程服がハンガーに掛けられていた。


「衣装合わせをしてないのは秋山と桐原だけなんだ。直す所があったらデザイン部に言ってやってもらうから急ぎたかったんだ」

「だから慌ててんのか。コレ着りゃいいのか?」


 俺は掛けてあった手前の服を取ろうとした。けど、茜に止められた。


「あ、それは桐原のだ。秋山のはその隣だ」

「あ、こっち?ふーん……え?コレェ!?」


 桐原の衣装だという服は、正に物語の主人公が着る、まるで勇者のようなかっこいいやつだった。そして俺のと言う衣装はどこからどう見ても、女物。そりゃ女役だから当たり前なんだけど、上は白のワイシャツに、胸下丈の紺色のブレザーみたいな上着だった。そこまではいいとしよう。制服とあんま変わらねぇからな。問題は下半身だ。俺の見間違いじゃなけりゃコレは短パンと言う奴だ。ガッツリ太ももが出るぐらい短いやつ……


「思ったよりカッコ良くて良かったなぁ♪」

「ちょ!どこが!?短パンとかダサいだろ!俺いくつだと思ってんだよ!」

「デシーノは永遠の14歳って言う設定だ。別に問題ないだろう?」

「嫌だ!こんなの履きたくねぇ!」

「何駄々こねてるんだ!秋山の為に初期のデザインからこれに変えたんだぞ!」

「初期のデザインがいい!」

「スカートだぞ?ヒラヒラの可愛いやつ。絶対秋山が文句言うだろうって薗田さんが変更して下さったんだ」

「くそー!仕方ねぇからこっち着てやるよ!」


 何なんだよもう!俺はてっきりズボンだと思い込んでたからこんな罰ゲームやらされる何て恥ずかし過ぎるだろぉ!
 でもさっき迷惑かけたとか言ってみんなには謝ったばかりだしよぉ!衣装が嫌だとかワガママ言えねぇよなぁ!

 半ばヤケクソで、着ていた制服を脱ぎ捨てて衣装をハンガーから取って身に付ける。
 上は何とか着れた。でもよぉ、体にピッタリくっ付くサイズで動きにくいし、丈が短過ぎてヘソ見えてるし……ああ、俺泣きそう……
 ふと前に直登の誕生パーティーの時にした女装を思い出して、涙が少し出た。


「ふむ。上は問題無いな。秋山はやっぱり細いなー」

「茜さん、着替えてるとこあんまジロジロ見ないでくれます?一応恥ずかしいんですけど」

「俺と秋山の仲じゃないか。湊と一条も見たがったんだけど、秋山が嫌がると思って止めたんだぞ?」

「あ、茜様ありがてぇです」


 そして履き慣れない短パンに足を通して履いてみる。今時の小学生ですらこんな短いの履かねえだろって言うぐらい短く、俺の晒されたすね毛を見て直登が笑う姿が脳裏をよぎった。
 くそう。こんな姿を本番では晒さなくちゃならないなんて……俺、ちゃんと演技出来るかな?

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