上 下
107 / 148
1章 写真ばら撒き事件編

毎日家で元気にダラダラしてたぜ

しおりを挟む

 紘夢の指示でスイーツ勝負の件で気まずくなった空気が一変し、スーツ姿やメイド姿のキチっとした人達がどんどん運んでくる旨そうな料理達にこの場にいたみんなは釘付けになった。

 簡単なデリバリーでも頼んだのかと思っていたが、とんでもない。
 なんと、料理を持って来たのはあの戸塚だったんだ。

 紘夢と戸塚は従兄弟同士で親戚だからか。


「春樹、急だったのに悪かったね。是非春樹も楽しんで行ってよ」

「ああ、大丈夫だ。訳を話したら父さんが張り切ったんだ。心配してるから今度顔を出してくれ」

「叔父さんは優しいな~♪お礼も兼ねて今度ちゃんと伺うね」

「喜ぶよ。それとその頭に驚くな」


 二人がドアの所で立って話をしていた。
 俺は次から次へと並ぶ料理達を見てよだれが出そうだった。

 前に戸塚んちで直登の誕生パーティーやったけど、テーブルの上はそん時みたいなご馳走でいっぱいになった。


「さぁみんなパーティー始めるよ~♪乾杯するから好きな飲み物持って~」


 紘夢が言うとみんなは言う通り各々好きな飲み物が入ったグラスを手に持った。
 俺は生クリームの味を流したかったからお茶にした。
 
 そして紘夢が話し出した。


「みんな、この場を借りて少しだけ話をさせて下さい。俺が住むこの家の掃除に手を貸してくれて、本当にありがとうございました。今まで散々やりたい放題して来た俺なんかに協力してくれた事、心から感謝しています。ささやかですが、お礼の意味も込めて料理を用意しました。この後は自由に楽しんでもらえたら嬉しいです。今まで本当にすいませんでした。そして、ありがとう!」


 紘夢は最後に頭を深々と下げてそう言った。

 もうここにいる奴らで紘夢の過去の事を気にしてる奴なんていないだろうけど、ケジメをつけたかったんだろう。

 後は時間を掛けて分かってもらうしかねぇと思う。

 目が合った紘夢に親指を立てて笑ってやると、照れたように笑っていた。

 そしてパーティーが始まり、すぐに空が近寄って来た。


「よっしゃー!食うぞー♪」

「貴哉ー♪あっちに美味しそうな肉あったぞ」

「まじ?取って来てくれよ」

「それなら持って来たぞ。ほら」


 空の反対側に伊織が旨そうな肉が乗った皿を出して言った。
 気が利くね~。


「マジだ。旨そうじゃん」

「あー!桐原さんズルいです!俺が見つけたのに」

「紳士ならこういうのは皿に取って運んでやるんだよ。覚えとけよな~」

「二人共今ぐらいは喧嘩すんなよなー」


 せっかくの楽しい席を壊したくねぇからな。
 二人に釘をさすと、嫌々返事をしていた。

 そこへ、茜が入って来た。
 

「秋山!元気にしてたか?」

「してたしてた。毎日家で元気にダラダラしてたぜ」

「秋山らしいな!実は演劇部もいろいろあったんだよ。今度ゆっくり話を聞いてくれ」

「別に今でもいいけど?」

「なになに?俺も聞きたい」


 伊織が俺と茜の間に入って来た。
 空は俺の後ろで聞いていた。


「桐原……二人に関わる事だしな。よし、話そう」

「?」

「二人が謹慎や停学になって、演劇部の奴らが二人を外したがっていたんだ。もちろん俺は反対だった。そこへ同じく二人を外すのに反対の薗田さんが……うん、まぁ、ちょっと意地悪して来たんだ」

「詩音さんが?何したんだ?」

「文化祭で公演する予定の脚本を取り上げるって言い出してな。そして新しい脚本なんだが……それが酷い物だったんだ」

「やばいじゃん。どんな話だったんだ?」

「三匹の子豚……って知ってるよな?」

「あはは!詩音やべーな!意地悪過ぎるだろ!」

「で、どうなったんだ?」

「その時はもう演劇部にはまとまりなんてなくて大パニックさ。俺も二人の事もあるし、脚本の事もあるしで正直どうしたらいいのか分からなくなっていたんだ。そこへ一条が助け舟を出してくれたんだ」


 茜は嬉しそうに笑って少し離れた所にいる紘夢を見て言った。
 あの紘夢が人助けだと?
 詩音の新しい脚本もだけど、それは気になるな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アルファポリスでホクホク計画~実録・投稿インセンティブで稼ぐ☆ 初書籍発売中 ☆第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞(22年12月16205)

天田れおぽん
エッセイ・ノンフィクション
 ~ これは、投稿インセンティブを稼ぎながら10万文字かける人を目指す戦いの記録である ~ アルファポリスでお小遣いを稼ぐと決めた私がやったこと、感じたことを綴ったエッセイ 文章を書いているんだから、自分の文章で稼いだお金で本が買いたい。 投稿インセンティブを稼ぎたい。 ついでに長編書ける人になりたい。 10万文字が目安なのは分かるけど、なかなか10万文字が書けない。 そんな私がアルファポリスでやったこと、感じたことを綴ったエッセイです。 。o○。o○゚・*:.。. .。.:*・゜○o。○o。゚・*:.。. .。.:*・゜。o○。o○゚・*:.。. 初書籍「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」が、レジーナブックスさまより発売中です。 月戸先生による可愛く美しいイラストと共にお楽しみいただけます。 清楚系イケオジ辺境伯アレクサンドロ(笑)と、頑張り屋さんの悪役令嬢(?)クラウディアの物語。 よろしくお願いいたします。m(_ _)m  。o○。o○゚・*:.。. .。.:*・゜○o。○o。゚・*:.。. .。.:*・゜。o○。o○゚・*:.。.

愛を乞う獣【完】

雪乃
恋愛
「愛してる、ルーシー」 違う誰かの香りをまとって、あなたはわたしに愛をささやく。 わたしではあなたを繋ぎ止めることがどうしてもできなかった。 わかっていたのに。 ただの人間のわたしでは、引き留めることなどできない。 もう、終わりにしましょう。 ※相変わらずゆるゆるです。R18。なんでもあり。

アルファポリス収益報告書 初心者の1ヶ月の収入 お小遣い稼ぎ(投稿インセンティブ)スコアの換金&アクセス数を増やす方法 表紙作成について

黒川蓮
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスさんで素人が投稿を始めて約2ヶ月。書いたらいくら稼げたか?24hポイントと獲得したスコアの換金方法について。アルファポリスを利用しようか迷っている方の参考になればと思い書いてみました。その後1ヶ月経過、実践してみてアクセスが増えたこと、やると増えそうなことの予想も書いています。ついでに、小説家になるためという話や表紙作成方法も書いてみましたm(__)m

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

勇者のママは環の婚礼を魔王様と

蛮野晩
BL
『勇者のママは今日も魔王様と』の3作目です。 1作目『勇者のママは今日も魔王様と』 2作目『勇者のママは海で魔王様と』 上記2作も公開中です。 ブレイラは魔王ハウストと婚約して王妃になる為の準備を進めていた。 儀礼作法や儀式作法などを学びながら、王妃外交の一環としてハウストの視察に同行させてもらったりする。 しかし神格の存在である三界の王に嫁ぐということは簡単なことではない。普通の人間が魔王の妃になるのは有史時代初のことで、魔界は前代未聞の事態をすんなり受け入れた訳ではないのだ。 そして魔王と勇者も親子関係になることに困惑していた。 そんな中、人間界にある砂漠の都が一夜にして消えてしまった。 この奇怪な現象に人間は恐れおののき、勇者イスラに真相解明を嘆願する。モルカナ国の騒動(※『勇者のママは海で魔王様と』参照)で人間界の人々の間に勇者誕生が正式に知れ渡っていたのだ。 消えた都の謎を追って人間界の砂漠へ行くと、そこに冥界の怪物オークが出現していた。 存在してはならない世界・冥界の影がじわじわと人間界に忍び寄る……。 ※タイトルは環(かん)の婚礼と読みます。 ※今後ブレイラがハウスト以外に性的に襲われることが多々あります。しかし私はカプ固定派なので最後まで襲われてしまうことはありません。 表紙イラスト@阿部十四さん

抱かれたいの?

鬼龍院美沙子
恋愛
還暦過ぎた男と女。 それぞれの人生がある中弁護士 上田に友人山下を紹介してくれと依頼が三件くる。 分別がある女達が本気で最後の華を咲かせる。

【R18】15分でNTR完了

あおみなみ
大衆娯楽
乗り込みますか? かわいいカノジョと半同棲中の大学生の「僕」 買い物をして部屋に戻ってきたとき、キッチンの小窓から聞こえた声とは…

Owl's Anima

おくむらなをし
SF
◇戦闘シーン等に残酷な描写が含まれます。閲覧にはご注意ください。 高校生の沙織は、4月の始業式の日に、謎の機体の墜落に遭遇する。 そして、すべての大切な人を失う。 沙織は、地球の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。 ◇この物語はフィクションです。全29話、完結済み。

処理中です...