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1章 写真ばら撒き事件編

十分だろ!俺なんかいつも最下位だし

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 何とか空に手伝ってもらいながらシャワーして、リビングに行くと、既に朝飯が用意されていて、その食卓には赤い髪の男が座っていた。


「おはよう二人共♪」

「……はよ」

「おはようございます」


 どうやら伊織は空がいる事を知ってたみたいだ。
 玄関にある靴を見たのか、母ちゃんが話したのか。

 でも今はそんな事どうでも良かった。
 起きた時よりはマシになったけど、相変わらず腰が伸ばせない俺はずっと爺さんや婆さんみてぇに腰を曲げて行動していた。

 そんな俺を見て伊織が聞いて来る。


「貴哉、どうしたんだ?」

「さっきベッドから落ちたんだ」

「大丈夫か?」

「ダメだよ。だから今日断ろうとしたんだ。嘘ついて悪かったよ」

「……嘘ついたのは早川が居たからだろ?」

「うっ」


 図星をつかれて俺は更に体を前に曲げた。
 ゆっくり椅子に座ると、空も隣に座った。

 そして母ちゃんが飲み物を持って来てニヤニヤしながら入って来た。


「まったく若いからって調子に乗るんじゃないよ?空も今度からは加減してやってよ~。貴哉は私の大事な一人息子なんだから♪」

「ぶっ!」

「り、凛子さん!」

「…………」


 母ちゃんの言う事に俺は飲んでたお茶を吹き出した。空も慌ててる。伊織は機嫌悪そうに眉間に皺を寄せていた。


「な、何言ってんだよ母ちゃん!ただベッドから落ちただけだって!」

「あんたらももう子供じゃないんだからやる事やってんだろ?私はそれで怒ったりはしないよ。だから隠すんじゃないよ」

「凛子さん!俺、貴哉を幸せにします!」

「いえ凛子さん、弱虫な早川じゃ頼りないので俺が貴哉を幸せにしますよ♪」


 は、始まった!
 二人の俺の取り合いが!
 頭のおかしい母ちゃんはそんな二人を見て機嫌良さそうにしていた。


「息子がモテるのって気分良いね~。しかもどっちもイケメンと来た。こうなったらどっちも物にしな貴哉!」

「いや、どっちも母ちゃんの息子にしただろ」

「桐原さん?お言葉ですが、俺はもう弱虫なんかじゃないですよ。昨日貴哉と話したんですけど、また正式に付き合う事になったんで。これからは俺の貴哉に手を出さないで下さいね」

「あ?そうなのか?貴哉」

「はい。そうです」

「聞いてねぇし。俺にはどっちとも付き合わねぇって言ってた。早川が脅したんだろ」

「脅してなんかないです。貴哉は俺を選んでくれました」

「いーや、何か卑怯な手使ったな。泣いて駄々こねて困らせたんだろ。俺は認めねぇからな」

「何とでも言って下さいよ。貴方が認めなくても貴哉に認められてれば十分なんで」

「あはは!二人共その辺にしときなって♪私はどっちが貴哉と付き合ってもいいけど、貴哉を傷付ける事だけは許さないよ。それ覚えときな?腰はまぁ許すわ」

「「はい!!」」


 もういつもの事だと思ってほっとこ……

 それから母ちゃんは友達と会うとか言って出掛けて行った。

 最後まで風呂掃除と勉強をしろと釘を刺されたから今日はちゃんとやろうと思う。

 せめて腰が良くなってくれりゃあなぁ。
 朝飯食って立とうとした時、また腰に電気が走って俺はテーブルに前のめりに倒れた。


「貴哉っ」

「へ、平気だ。この痛みにも段々慣れて来たぜ」

「ほんと、早川は貴哉の事考えてねぇよな。俺なら腰を痛めるようなやり方しねぇのに」

「いちいち突っかかって来ないで下さいっ」

「貴哉、皿もういいか?」

「ん。サンキュ」


 伊織は食い終わった食器を全員分片付けてくれて、更に皿洗いまで始めてくれた。
 なんて出来る男なんだ!


「伊織ポイントアーップ♪」

「はぁ!?貴哉どういう事だ!?」


 隣にいる空にニヤニヤ笑いながら言うと、慌て始めた。
 ちょっと構ってみただけなんだけど、伊織が相手だから本気になるの面白ぇな。


「貴哉ぁ、片付けたら勉強始めるから少し休んでろー?」

「おう。空、部屋から勉強道具持って来てくれ。あと、俺のスマホも」


 歩くのが面倒だったから空に頼むと素直に聞いてくれた。
 さてと、俺はせめてテーブルは拭こうかね?

 伊織に何か拭くやつを頼むと、持って来てそのまま拭いてくれた。


「貴哉は何もしなくていいよ。貴哉が出来ない事は俺がやるから」

「まじ?助かるわー」

「なぁ、早川と付き合うっての本気なのか?」

「……本気だ。伊織には悪いけど」

「そっか」


 ここで伊織は少し寂しそうな顔をした。
 昨日伊織にはどっちとも付き合わないって言ったばかりだもんな。

 伊織のこの顔を見たら俺の心は痛くなった。
 

「伊織……」

「まっこうなったら奪うつもりで行動するけどな♪」

「へ?」


 落ち込んでるかと思いきや、伊織はニッと笑って楽しそうにしていた。
 あれ、心配しなくて良かった感じ?

 
「貴哉がやっぱり伊織が良いー♡ってなるように頑張るぜ」

「お、おう。頑張れ」


 そんな伊織と話してると、俺の部屋から戻って来た空が困ったように言った。


「貴哉~?勉強道具なんてどこにあるのー?机やクローゼット見たけど無かったぜ?」

「はぁ?シャーペンと消しゴムあっただろ。机にあるはずだ」

「それならあったけど……え?貴哉の勉強道具ってコレだけ?」


 持って来た俺のペンと消しゴムをテーブルに置いて戸惑う空。これで十分だろ。なんか文句あんのか?

 すると伊織が笑って言った。


「はは、早川は教科書とかノートとかあると思ったんじゃね?貴哉に教えようと思ってる範囲は俺が持って来たからペンと消しゴムがあれば大丈夫だよ」

「さっすが伊織~♪だと思ってたぜ~」

「まぁいっか。桐原さん、俺もここで聞いていていいですか?」

「いいよ~。なんなら二人まとめて教えてやろーか?」

「あ、空は学年二位らしいからいらねぇだろ。教えるの下手くそだけどな」

「まじ?早川って勉強出来るんだな」

「家ではやらないですけどね。授業聞いてればテストで出る所は大体出来ます」

「やば。そんなセリフ言ってみて~」

「伊織は何位なんだ?」

「10位以内には入るけど、トップ3には入った事ねぇな」

「十分だろ!俺なんかいつも最下位だし」

「それはやば過ぎ」


 伊織が勉強出来るのは何となくイメージで分かるかな?見た目じゃなくて、何でも出来るスーパー高校生って言うぐらいだからな。

 
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